55 学生の指導
その日は歓迎会を行った。
マライアの歌もあり、大いに盛り上がった。また、平民の竜騎士は豪華な料理に大喜びだった。でも一部の者は露骨に嫌そうな顔をしている。その中心人物は光竜に騎乗するロジャー・クーズマン、もう一人は風竜に騎乗するセリーナ・ウインドミッドだ。
ロジャーはクーズマン伯爵家の次男で、代々近衛隊員を輩出してきた家系だ。そしてセリーナは私のお母様の実家ウインドミッド家の分家の出身だ。
二人の会話が聞こえてくる。
「なぜ俺が、資材搬送なんてしなければならないんだ?」
「私だって、手紙を運ぶだけよ。それに私たちの指導者は平民で、風竜でもないしね」
「そうか・・・俺は流石に逆らえないよ。カトリーヌ様というよりは、実家のハワード家がな」
「私だってそうよ。カトリーヌ様のお母様であるアンヌ様は伝説の存在だからね。だから、ちょっと考えがあるのよ。実は・・・」
そこからは小声で話始めたため、聞こえなかった。
次の日、早速指導が始まった。
私は指導する学生の前に立ち、説明を始める。
「まずはパートーナーのドラゴンを最大限巨大化させてください。そして、資材や商品を積み込みます。落とさないように気をつけてください。また人を搬送する場合は十分に注意して・・・」
学生たちも「そんなの当たり前だろ?」という顔をしている。
私だってそう思う。ロジャーなんかは、露骨に嫌そうにしている。でも仕方がない。そんな空気を無視して、手順通りにデミドラに巨大化するように指示を出した。
デミドラはまたまた巨大化の能力が高くなっている。全長50メートルくらいになった。
これには学生たちが騒ぎだす。
「な、何だ・・・あの大きさは」
「や、ヤバいぞ・・・」
「逆らったらダメなやつだ・・・」
これだけで場は引き締まった。
「それでは順次積み込みをしてください。余った分は私が運びますわ。長距離の移動となりますから、くれぐれも無理をしないようにお願いしますね」
「「「ハイ!!」」」
私は学生たちを倉庫に案内し、指示をする。
「ここにある資材と商品をすべて積み込んでもらいます。では作業を始めてください」
「こんな量を?」
「この人数じゃ無理だろ?」
「そうだな。でも無理はするなって言ってたし・・・」
私とデミドラなら難なく運べるのだけど、学生はそうではないようだった。
半分ほど荷物が残ったので、すべてデミドラに積み込んだ。
「あの量を一人で運ぶのか?」
「ああ・・・化け物だ」
「絶対に逆らうなよ」
デミドラはちょっと太めのドラゴンだけど、化け物は酷すぎると思う。
今回、私たちが向かうのはナウール王国最南端の都市サイシレドスだ。
最近はサイシレドスへの搬送任務が多い。というのも王都と獣人の里の街道が整備され、多くの行商人たちが行き交うようになったからだ。急ぎの搬送任務はあるけど、行商人の仕事を奪ってもいけないからね。
サイシレドスは協商連合とモダリア帝国との国境に近い町だ。
交易だけを考えると、街道を整備したほうがいいのだが、帝国が攻めて来た時のことを考えて、これまで積極的に街道を整備してこなかったようだ。だから私たちの出番というわけだ。因みに協商連合とは、ナウール王国よりも小さな国や都市国家の集合体だ。ナウール王国と協商連合との関係は比較的良好だ。協商連合も帝国の侵略に怯えている。関係が良好なのも、帝国という共通の敵がいることが大きい。
「では、出発しますわ!!」
王都からサイシレドスまでは約2時間。のんびりと空の旅を楽しむ予定だ。
学生たちと会話を楽しみながらね。
でも、そんな余裕は彼らにはなかったようだ。みんなフラフラになっている。
「これだから、最近の学生は・・・」
思わず、つぶやいてしまった。「最近の○○は・・・」と言い出したら、年を取った証拠だと聞いたことがある。気をつけよう。
私のつぶやきに反応したデミドラが念話で返してくる。
『本当にねえ・・・竜騎士学校で、何を学んで来たのかしら?』
『まあ、入校してまだ半年だからね。大目に見てあげようよ』
『分かったわ』
そんな話をしているところへ、学生のまとめ役であるロジャーがやってきた。
「隊長、申し訳ありません・・・もう限界を迎えている者たちがいるのですが・・・」
「仕方ありません。近くにドワーフの里がありますから、そこで休憩を取りますわ」
「ありがとうございます」
私たちはドワーフの里に着陸した。
私たちが着陸すると、ドワーフたちが群がってきた。
「いい所に来てくれた。実はこちらの行商人の馬車が壊れてしまってな。運が悪いことに部品の在庫がないんだ。こちらの行商人もサイシレドスに向かうようだから、送って行ってもらえないか?報酬は弾んでくれるようだぞ」
「困っている方を見捨てられませんからね。デミドラで運びますわ」
その行商人には、馬車ごとデミドラに乗ってもらうことになった。
学生たちから驚きの声が上がる。
「馬車ごと!?」
「凄すぎるな・・・」
「自分たちが如何に無力か、思い知らされる」
休憩の後、ドワーフの里を出発した私たちだが、予定より大幅に遅れてサイシレドスに到着した。
倉庫街に降り立ち、担当のスタッフに受け取り確認をしてもらう。
「カトリーヌ様には珍しく、遅かったですね」
「学生たちを連れていますので・・・」
「そうですか。では王都への荷物はこちらになっております。宜しくお願い致します」
スタッフに案内された場所に行くと荷物が山積みになっていた。
その荷物を見た学生は絶望の表情を浮かべていた。
「これをまた持って帰るのですか?」
「そうですよ。お昼を食べたらすぐに出発しますわよ」
「は、はい・・・」
学生たちは素直に従ってくれた。
グラース王子の話だと、今年の学生は反抗的な学生が多いとのことだったが、実力はまだまだだけど、私が担当する学生には、素直な学生ばかりのようだった。
スピラやクレーテが担当する学生の中に問題児がいるのかしら?
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