52 クラーケン 2
「思った以上に凄いわね・・・」
『そうね・・・土竜の加護を持っている私でも、ここまでのことはできないわ』
覆面の竜騎士と土竜は凄まじかった。
土魔法で巨大な土壁を出現させ、クラーケンを土壁で囲い込む。いくら浅瀬でも、一瞬でここまでの壁を一瞬で出現させるなんて、凄すぎる。
クラーケンも異変に気づいたようで、土壁によじ登ろうとするが、そこを風竜隊とエルフ隊で何とか阻止している。
そこに水中からリバイネに騎乗したジョージ王子が姿を現す。
「よくやった!!カトリーヌ嬢」
「ありがとうございます。でも作戦はこれからですわ」
「うむ。水竜隊!!もうひと踏ん張りだ。訓練通りにやるぞ!!」
ジョージ王子が指示を出すと、水竜隊が懸命に海水を操って、壁の外に中の海水を放出している。
遠目でクレーテとカメールも頑張って海水を放出しているのを確認できた。しばらくして、海水の大半が 壁の外に放出され、水位は膝丈くらいになった。
スピラが高速で私たちに近づいてきた。
「カトリーヌさんのお父様が・・・」
「どうしたの?」
「もう待ちきれないって・・・」
「分かったわ。少し早いけど、出動命令を出して」
「ありがとう」
すぐにお父様が率いる暴竜隊10騎がやってきた。
「カトリーヌ!!父の雄姿を見ておけ」
「は、はい・・・」
「突撃だ!!我に続け!!」
暴竜隊が物凄い勢いで、クラーケンに向かっていく。
この海域までクラーケンを無理やり引っ張てきたのは、暴竜隊得意の陸戦で勝負を決するためだ。水中での戦闘ではクラーケンに分があるだろうけど、陸戦では暴竜隊には敵わない。
勇猛果敢にクラーケンに挑む暴竜隊を見守っていたところ、バラック教官改めバラック副官に声を掛けられる。
「流石はカトリーヌだ。本当に規格外だな」
「ありがとうございます。それにしても副官は突撃しなくていいのですか?」
「ああ・・・実は前任者からの引継ぎでな。我が部隊の副官は少し特殊なんだ。まあ、将軍からしてアレだからな・・・」
バラック副官の視線の先にはお父様がいた。
「副官に求められるのは、戦闘力よりも後方支援と戦術眼だそうだ。俺も戦いたいんだがな」
「お父様がすみません・・・」
「気にするな。ボガード将軍あっての暴竜隊だからな」
戦況はというと、暴竜隊が押しに押していた。
クラーケンの回復力は目に見えて落ちてきた。もう何本かの触手は、再生していない。討伐は間近だろう。この海域まで引っ張って来て、土の壁で閉じ込めた時点で勝負は決していたのだと思う。
そんな時、ゴレアが言う。
「秘密兵器は使わずじまいか・・・カトリーヌ隊長、試しに使ってみない?」
「そうね・・・」
『使っちゃいなよ。出し惜しみしてもアレだし。今後のためだと思ってさ』
少し悩んだ私は秘密兵器を使うことにした。
マライアに一旦暴竜隊を下がらせるように指示を出す。
「分かりましたわ!!」
すぐにシュワーフから念話が来た。
『カトリーヌどういうことだ?もう少しで倒せるのだが?』
『ちょっと使いたい武器があってね』
『そうか。なら一旦下がるとしよう。デミドラもカトリーヌも我らに活躍する姿を見せたいだろうしな』
私はデミドラに搭載している特大の砲台に移動する。
「今回はフルパワーで行くわよ」
『分かったわ』
秘密兵器というのは、魔力をミスリル製の弾丸に込めて発射する魔道砲だ。
私もデミドラも魔力は多いほうだから、打って付けの武器ではある。訓練では5割程度の魔力を込めて撃ってみたが、それでもかなりの威力だった。
私とデミドラが協力して魔道砲に魔力を込めていく。
ゴレアが叫ぶ。
「ちょっと!!これ以上は無理よ。砲身がもたないわ」
「そうなの?まだフルパワーじゃないけど・・・」
「相変わらず規格外ね・・・」
仕方なく7割の魔力を込めて撃つことになった。
「行くわよ。魔道砲、発射!!」
ミスリルの弾丸が唸りを上げて飛んでいく。クラーケンの頭部が吹き飛んだ。
クラーケンはその場に崩れ落ち、動かなくなった。歓声が上がる。
「どうやら終わったようね・・・」
バラック副官が言う。
「流石にこれは・・・それはそうと、確認を指示しろ」
「そうですわね」
スピラに確認を指示する。
確認の結果、間違いなくクラーケンは息絶えていた。
『ところでさあ・・・食べられるのかしら?』
『デミドラ・・・』
★★★
その後の話をする。
デミドラの父親のシュワーフが試しに食べてみたところ、かなり美味しかったらしい。
『大味かと思ったが、意外に繊細な味がする。旨いぞ』
なので、クラーケンの死体を持って帰り、討伐部隊で食べることになった。流石に任務に参加した全員でも食べきれないので、クレーテの故郷カーゴ村に移動して、村人にも振る舞うことになった。巨大なクラーケンの死体に村人たちは腰を抜かすほど驚いていたけどね。
カーゴ村では熱烈な歓迎を受けた。特にクレーテとカメールはオラが村の英雄でもあり、胴上げまでされている。村長に事情を話すと、村を上げて宴を開いてくれることになった。なので急遽、風竜隊が実家まで行って、料理長以下スタッフを連れて来ることになった。
宴の準備が整ったところで、マライアが気合いを入れる。
「戦闘ではあまり活躍できませんでしたが、ここからは私にお任せください」
マライアとダイアナが部隊員や村人の前に立ち、早速、今日の討伐作戦を英雄譚にしていた。
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