53 事後処理
夜も更けたが、宴はまだまだ続いた。何人かは酔いつぶれていたけどね。
私の周りには直轄特務隊のメンバーが自然と集まり、任務の苦労話に花が咲く。
「本当に今回は死ぬかと思ったですだ。でもジョージ王子とリバイネが助けてくれたですだ。カメールもリバイネに懐いているですだ」
「よかったわね。それで水竜隊入りの話は何で断ったの?」
「正確には断ったわけではないですだ。ジョージ王子から『水竜隊に入るより、今の環境でのびのびやったほうが、結果的に国のためになる。それにカトリーヌ嬢の大切な部下を横取りしたくはないからね』と言われたですだ」
「そうなんだ・・・」
ジョージ王子も私に気を遣ってくれたのだろう。
スピラも会話に入る。
「そういえば、マライアも近衛隊を断ったのよね?」
「もちろんですわ。私が近衛隊に入ったら、王族よりも目立ってしまいますわ」
まあ、そうだろう。そうなったら護衛どころではない。
「それはそうと、覆面の竜騎士様が気になりますわ。宴にも参加せず、任務終了後、すぐにいなくなってしまいましたし・・・」
私も覆面の竜騎士は気になる。
「謎が謎を呼ぶ感じで、歌い手としては興味がそそられます。お話がしたかったのに・・・」
「カトリーヌさん、隊長権限で何とかならないの?」
「それがジョージ王子に聞いても、お父様に聞いても、何も教えてくれないのよ」
「そうなのですね・・・残念です。私が作った歌をお聞かせしたかったのに・・・」
「まあ、いつか会えるわよ」
スピラもスピラで大変だったようだ。
「伝令って、思ったよりも大変だったわ。カトリーヌさんのお父様からは『早く出動させろ』って怒鳴られるし、お母様からは『風竜隊も近接攻撃をさせろ』とか言われるし・・・」
「ご、ごめん・・・お父様とお母様が・・・」
スピラには本当に申し訳なく思う。
そんな話をしているところにジョージ王子とグラース王子がやってきた。
ジョージ王子が言う。
「カトリーヌ嬢、本当にありがとう。礼を言うよ。リバイネの両親の仇を取れたのも、君たちのお陰だ。それに国軍の新しい未来が見えたしね」
「いえいえ、皆がそれぞれの任務を全うした結果ですわ」
「それで今後の話なのだが・・・」
明日以降、私たちは水竜隊と合同でキーグ島とカーゴ村の航路確立のための任務に当たることになるみたいだ。グラース王子が言う。
「具体的には商船の護衛だ。クラーケン以外にも強力な魔物がいないともかぎらないからね。商人たちに航路が安全と思ってもらわなければ、交易は進まないからね」
「分かりましたわ」
ジョージ王子が言う。
「それでカトリーヌ嬢、しばらくマライアを借りてもいいかな?有力貴族や有力商会に出資を募る予定なんだけど、今回の英雄譚を夜会で歌ってほしいんだ。報告書を読ませるより、効果は大きいしね」
私はマライアを見る。マライアの目は輝いていた。
「構いませんわ。マライア、しっかりと頑張るのですよ」
「もちろんですわ!!では早速、もう一曲歌いますわ」
そう言うとマライアは歌い出した。
「ドワーフの槍は~♪何物も貫く~♪魔道砲が唸りを上げ・・・」
その歌を聞いたゴレアがやってくる。
「ドワーフを称える歌を作ってくれたの?」
これにグラース王子が反応する。
「これは使えるな。ウチの特産品もピックアップして歌にしてもらおう」
グラース王子も商魂たくましい。
★★★
クラーケン討伐から2週間が経った。我が部隊はバラバラで任務をこなしている。
キーグ島とカーゴ村の航路は安全が確認された。魔物は出るには出るが、大型船で経験のある冒険者か騎士を乗せていれば、撃退は可能と判断された。しばらくは水竜隊が突発事案に備えて周辺をパトロールしている。この任務にクレーテとカメールは当面は当たることになった。
スピラはというと、相変わらず忙しく飛び回っている。
色々な調整で連絡を取ることが多く、重宝がられているようだ。
リリ様はエルフの里に一時帰省をしている。前族長として、討伐任務に参加した者たちの労をねぎらいたいらしい。
マライアは、夜会やお茶会の出演依頼が多数届き、忙しく公演をしている。本人は嬉しそうだけどね。
そして私はというと、相変わらず資材搬送だ。
竜王国はカーゴ村に新たな港を建設することに決定した。ただ、港だけ建設しても、そこにつながる街道がなければ意味はない。なので私たちは主に街道整備の仕事に就かされることが多くなった。
今日も指定された現場に向かう。
そこにはあの覆面の竜騎士がいた。土魔法を使い、土竜と共に作業をしていた。私はその竜騎士に声を掛けた。
「お疲れ様です。資材搬送で参りました」
「・・・そこに置いておいてくれ」
「それにしても貴方の土魔法は凄いですわね」
「そうでもない。次の現場があるので、これで失礼する」
そう言うと、覆面の竜騎士は土竜に乗って飛び去ってしまった。
『愛想がないわね。避けられてるのかしら?』
『多分、かなりシャイなのだと思うわ。こういうことはよくあることよ』
私は絶世の美少女だ。マリアに言われたことがあるのだけど、美少女すぎると緊張して喋れない殿方も多いそうだ。多分、そうなのだろう。
『でも、あの土竜は懐かしい感じがするわ。会ったことはないんだけどね・・・』
デミドラが気になることを言った。
もしかしたら、デミドラの遠い親戚なのかもしれない。
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次回から新章になります。




