50 作戦会議
会議が再開された。
ここに招集された部隊長で退出する者は誰もいなかった。ジョージ王子が話を進める。
「まずここで、貴殿らに紹介したい者たちがいる」
ジョージ王子の合図で会議室に入ってきたのは、なんとグラース王子とケルだった。
「今回にかぎり、外部からこの者たちを特別に招集した。グラース王子が参謀、ケル殿が参謀補佐だ。異論はないな?」
まあ、この状況で異論は唱えられない。
グラース王子は隣の席に、ケルは私の膝に座った。
「今回の作戦はナウール王国にも関係が深いから志願したんだ。航路が確立されれば、こちらも大きな利益になるし、クラーケンがナウール王国に来ないともかぎらないからね。ナウール王国としても全面的に協力するよ」
「私も今回はお役に立てると思いましてね。クラーケンについては多少なりとも知識がありますからね。こう見えて、海沿いに住んでいたこともあるのですよ。まあ、クラーケンや強そうな魔物がいっぱいいたので、すぐに逃げたんですがね」
ジョージ王子が話を進める。
「では今回の部隊の編制について発表する。総大将は直轄特務隊隊長カトリーヌ・ハワードとする」
会場はざわめいた。
だってそうでしょう?発足間もない隊の隊長の私が総大将なんて・・・
会場が静まるのを待って、ジョージ王子が閉会を宣言する。
「以上で会議は終了だ。直轄特務隊のメンバーはここに残ってくれ」
一体、どういうことだろうか?
★★★
会議室に残された私たちにジョージ王子が詳しく説明してくれる。
ジョージ王子がこの討伐作戦に踏み切ったのも、キーグ島でのシーサーペントの討伐作戦を視察したからだという。
「竜騎士に成り立ての二人がいるから、詳しい説明の前に国軍の組織構成を説明しておこう」
国軍には多くの部隊がある。
お父様が隊長を務める暴竜隊、お母様の古巣の風竜隊、ジョージ王子が隊長を務める水竜隊、私たち直轄特務隊などだ。
その中でも暴竜隊、水竜隊、風竜隊の三つの部隊は基幹部隊と呼ばれ、その隊長は将軍を兼務している。将軍とは有事の際に他の部隊を指揮する権限を有する将のことで、お父様を例に挙げると暴竜隊の隊長でもあり、将軍でもあるのだ。
しかし、将軍として他の部隊を指揮することは本当に稀だ。
各部隊とも独立心が強く、部隊ごとで行動したがるからね。それに部隊も竜種ごとで構成しているので、他部隊と連携しようという考えがそもそもない。
なので基幹部隊といえど、副隊長が副官と呼ばれる以外は、あまり大きな違いがない。それで言うと、様々な竜種が混在する私たちの部隊が如何に特殊か分かるだろう。
「だが、クラーケンはかなり強力だ。恥ずかしい話、我ら水竜隊だけでは討伐は難しい。そこで各部隊が協力して、討伐に当たれば何とかなると考えた。もちろん直轄特務隊の活躍を目の当たりにしたことが大きい」
ジョージ王子は私たちを評価してくださっている。
それは嬉しいのだけど・・・
「話は分かりました。それでなぜ、私が総大将なのでしょうか?」
「それには事情があるんだ。まあ、これも恥ずかしい話だが・・・」
部隊を編成するに当たって、もめ事が起きたそうだ。
特に風竜隊の隊長が反発したそうだ。「暴竜隊との合同任務など考えられない」と言い、「どうしてもと言うなら自分を総大将にしろ」と言ってきたらしい。これにはお父様もキレた。「なぜ、我らが風竜隊の下に就かなければならんのだ」と言って収集がつかなくなったそうだ。風竜隊の隊長は、お母様の弟で私の叔父に当たる。レナード叔父様はかなりのシスコンで、未だに「お姉様をボガードの馬鹿に盗られた」と常々言っているしね。
因みに私を巡って暴竜隊と風竜隊が激しい抗争を繰り広げたのも、レナード叔父様が大きく関係している。
「王子である私が総大将をすればいいと思うかもしれないが、作戦上、私は総大将には向かない役割を担うし、それにそんな状況で将軍でもある私が名乗りを上げると・・・想像したくない事態になってしまう」
そういった事情なので、今回風竜隊は任務には不参加だ。代わりにお母様とお母様の元部下たちが有志として集い、あくまでもお母様の実家であるウインドミッド家の私兵として参加することになったようだ。現在、この任務に参加する部隊は、暴竜隊、水竜隊、風竜で構成されたウインドミッド家の私兵部隊、土竜の竜騎士が単騎で参加、そして私たちということになる。
「それでも私が総大将を務めるのは・・・」
「他にも理由があるんだ。直轄特務隊の位置づけが大きく影響している」
直轄特務隊の「直轄」は国王陛下の直属部隊と言う意味だ。
「王族は近衛隊を持っているが、それは王族の護衛を専門にしているから、このような任務にはそぐわない。となると、王命を受けている部隊であるカトリーヌ嬢が総大将を務めることは筋が通っている」
「分かりました。謹んで拝命致します」
ここまで言われたら、断れない。
「詳しい作戦はグラース王子とケル殿に説明をしてもらう」
「分かりました、ジョージ王子。それで大まかな作戦ですが・・・」
これは責任重大だ。
ケルが言う。
「カトリーヌ様、作戦失敗の際はすぐに退避できるように準備しております。逃げるのは大の得意ですからね。ですが、この作戦は成功すると思いますよ。今回はエルフ、魚人族に加えてドワーフが全面協力してくれます。ナウール王国の経費で任務参加者には高性能の武器防具を支給しますしね」
「ありがとう。ジョージ王子、総大将として必ずや任務を完遂してみせますわ」
「期待しているよ。現場では私のことは、一部隊の隊長として扱ってくれていい。気遣いは不要だ」
そうは言ってみたものの、いきなり総大将なんて・・・
少し不安になる。
でもこれは美少女である私に与えられた試練かもしれない。
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