49 新たな任務
マライアとクレーテの留学から、早1年半が経った。
二人は監査の結果も良好と判断され、無事に卒業が認められた。そして今日、私とスピラは竜騎士学校の卒業式に来賓として出席している。もちろんマライアとクレーテの指導者としての出席だ。
「スピラ、私たちも同期のみんなと一緒に卒業したかったわね?」
「そうね・・・でも、私はかけがえない体験ができたから、留学したことはよかったと思うわ」
「それもそうね」
壇上では誇らしげに国王陛下から卒業証書を受け取る二人がいた。
今回は特例で、竜騎士学校の首席と二人が個別に卒業証書を授与されることになった。それほど、二人の功績が大きかったということだ。
式典が終わり、マライアとクレーテ、そして二人と仲が良かった同期生を集めてパーティーを行うことになった。会場は我がハワード公爵家で行う。マライアとクレーテの希望で、同期生のみんなに美味しい料理を食べてほしいとのことだったので、私が企画した。まあ、私は彼女たちの上官だからね。
因みにマライアとクレーテはそのまま直轄特務隊に正式入隊した。
これは本人の希望も大きかったらしい。マライアは近衛隊から、クレーテは水竜隊からスカウトが来ていたらしいけどね。
同期生と楽しそうに話をしている二人を見ながら料理を食べていたところへ、バラック教官とグラース王子が声を掛けてきた。キーグ島での求婚騒動があってから、グラース王子と話すのは少し気まずい。
「カトリーヌ嬢、直轄特務隊は引き続きナウール王国での任務になる。これからもよろしく頼むよ」
「こちらこそですわ」
「それでバラック教官からも報告がある。もう教官ではないけどね」
教官ではない?
「俺も今日で教官は卒業だ。明日から暴竜隊の副官を拝命する。よろしく頼むぜ、カトリーヌ隊長」
「おめでとうございます!!昇進されたのですね?」
「まあな。だが、いきなり隊長になったり副隊長になったりする奴がいるからな」
「それはまあ・・・私たちは特別ですからね」
因みにグラース王子も助教から教官に昇進したらしい。
みんながお祝いムードの中、バラック教官改めバラック副官が言った。
「早速任務が入った。合同の討伐任務だ。明日の朝、国軍本部に来てくれ」
「合同任務ですか?」
「そうだ。詳しいことはそこで話す。飲み過ぎて遅刻をするなよ」
「は、はい・・・」
一体どんな任務だろうか?
それに合同任務というのが気になる。基本的に竜騎士部隊は部隊ごとで任務が割り振られるからだ。
スピラが不安げに聞いてくる。
「合同任務って、一体何のかしら?」
「まあ、明日のことは明日考えましょう。それよりもしっかり食べましょう」
「そ、そうね・・・」
まあ、発足間もない直轄特務隊に危険な任務は与えられないだろうしね。
★★★
二日酔いの残るクレーテとマライアを連れて、私とスピラは本部に向かった。リリ様は本部で合流予定だ。
「飲み過ぎてしまっただ・・・気持ち悪いだ・・・」
「不覚にも、私も二日酔いですわ」
「二人ともしっかりしなさい!!本部にはお偉いさんが大勢いるんだからね」
スピラが二人を注意する。スピラも頼もしくなったものだ。
本部の指定された会議室に入ると、そうそうたるメンバーが勢揃いしていた。
ジョージ王子がいらっしゃるだけでも凄いのだが、なぜかお父様とお母様までいる。ジョージ王子が私たちが着席したのを見計らって、会議の開会を告げた。
「揃ったようだね。では会議を始める。その前にこれはかなり危険な任務になる。作戦内容を聞いて、嫌なら断ってもらっても構わない。普通は軍法会議にかけられるが、今回は特別だ。それくらい危険な任務ということだ」
一同に緊張が走る。
「それで任務というのは、クラーケンの討伐だ。詳しくは・・・」
クラーケンは超大型のタコのような魔物で、キーグ島とクレーテの故郷であるカーゴ村との丁度中間辺りの海域に生息している危険な魔物らしい。これまで何度も討伐を試みたが失敗に終わっているようだ。
「後顧の憂いを絶つためにも、いつかは討伐しなければならない魔物だ。しかし、これは私の私情を挟むことになるのだが・・・」
ジョージ王子のパートナーである水竜のリバイネの両親が戦闘で亡き者にされたらしい。ジョージ王子としては、どうしても仇を取りたいようだ。
「クラーケンを討伐できれば、キーグ島とカーゴ村との航路が確立でき、大きな利益を上げられるという建て前にしている。しかし、命を懸けた任務となるため、私も嘘はつきたくはない。だから一度部隊内で話し合ってもらい、この任務に参加するかどうかを決めてもらいたい」
早速、私たちは部隊内で話をすることになった。
みんなに意見を求めたところ、スピラが最初に口を開いた。
「私は隊長に従うわ」
続いてリリ様とマライアも続く。
「右に同じだ」
「私もですわ。隊長にお任せします」
少し間を置いて、クレーテが言った。
「オラは是非とも、この討伐作戦に参加したいですだ!!クラーケンはカメールの親の仇でもあるのですだ!!」
詳しく事情を聞く。
クラーケンは水竜などの大型の魔物を好んで食べる習性があるそうだ。ある日、野生の水竜や亀竜が生息する海域に突如クラーケンが現れ、戦闘になった。その際、水竜と亀竜は協力して子供たちを必死で逃がしたそうだ。逃がされた子供たちというのが、リバイネとカメールのようだった。カメールも朧気ながら当時の記憶があるらしい。
「オラもジョージ王子と同じく、カメールの両親の仇を取ってやりたいだ」
私は少し考えて決断した。
「クレーテ、分かったわ。直轄特務隊として、この任務を受けます」
こうして、我が直轄特務隊は命を懸けた危険な任務に臨むことになった。




