44 監査 3
今日はいよいよ国王陛下以下の竜王国の監査員がやってくる。準備は万端だ。
ここまで来るには、それなりに苦労はしたけどね。
意外なことに、魔物討伐よりも記念式典の関係の準備に時間を取られた。というのもマライアのレッスンが厳しすぎた。
「もっと、調和を意識して!!カトリーヌ様の声に合わせて!!」
しかも私は、トリの演目でメインコーラスを担当になってしまった。というのも、私の歌声を聞いて、マライアがどうしてもと言ってきたからだ。
「カトリーヌ様の声量は凄いですわ。体型的に・・・ではなく、天性の才能がありますわ」
どうやら私は絶世の美少女なだけでなく、歌の才能もあるようだ。
式典関係で苦労したのはスピラとクレーテ、それに彼女たちのパートーナーであるゲイルとカメールだった。王族と共に出席する式典では、それなりの礼儀作法が求められる。なので、忙しい任務の合間を縫って、必死で礼儀作法を学んでいた。因みに竜王国の正式なパーティーではドラゴン同席のものが多く、ドラゴンにも礼儀作法が求められる。
「竜騎士学校で基本は習ったけど、ここまで大規模な催しは初めてだわ」
「オラはそれを習う前に留学に来てしまっただ・・・習ってもできる気がしないだ」
それでも二人と二匹は頑張っていた。
続いて料理の関係だが、私の要望どおり、実家の料理長とスタッフを派遣してくれることになった。
グラース王子が言う。
「二つ返事で了承してくれたんだけど・・・条件をつけられてね・・・」
その条件というのは、お父様とお母様も監査員に加えることだったという。
「調整が大変だったよ。結局、カトリーヌ嬢のご両親はアドバイザーという急遽の役職になったけどね」
多分、過保護なお父様とお母様が無理やりねじ込んだのだろう。
「その節はご迷惑をお掛けしました」
「気にしないでくれ。来賓が一人二人増えたところで問題ないし、逆にこちらの要望よりも多くスタッフを派遣してくれることになったからね」
まあ、準備は整った。後は本番を待つばかりだ。
★★★
記念式典の最初は歓迎のパレードだ。
竜王国では5年に一度、王都で大規模な部隊観閲式を行っているので、その簡易バージョンで行った。観衆は初めて見る竜騎士のパレードに歓声を上げていた。
続いては、一般市民も入れる屋外ステージに移動しての公演だ。
グラース王子が話し掛けてくる。
「それにしても竜王国にはびっくりだよ。警護計画を聞いて、ナウール王国の警備担当者も腰を抜かすほど驚いていたよ」
「そうなのですね。竜王国ではこれが普通なのですわ」
竜王国では国王陛下も代々竜騎士で、王族も竜騎士、それを守る近衛隊も竜騎士だ。
この状況で暗殺なんて成功するはずはない。仮に成功したとしても、それで新たな王として認められることもないしね。
だから必然的に遠距離からの攻撃以外は、そこまでガチガチに警備をしない。
「帝国の警護担当者も驚いていたよ。それはそれで滑稽だったけどね」
竜王国と帝国、ナウール王国の警護担当者の会合で、異を唱える帝国の警護担当者にルシル教官が言い放ったそうだ。
「帝国人は臆病者だな」
これで渋々帝国側も納得したそうだけどね。
ステージ上ではマライアがソロで歌を歌っている。
そのサポート役として、パートナーのダイアナが様々な光を出して盛り上げている。選曲も良く、会場は大盛り上がりだ。
「続いては、獣人歌劇団による歌劇ですわ!!お楽しみください」
孤児院の子供たちも愛くるしく、観客の心を掴んでいた。
次の演目は急遽、エリザベート王女のピアノ演奏になった。エリザベート王女のピアノ演奏もなかなかのもので、美少女の異国の王女様の演奏に観客が酔いしれていた。
そしていよいよ、トリの私たちの出番だ。
緊張しながらもステージに立った。
結果はもちろん拍手喝采だった。最後は出演者全員がステージに出て挨拶をする。
多くの観衆が歓声を上げる。マライアはこの国でも人気歌手となっているので当然だが、エリザベート王女にも多くの声援が寄せられた。
「奇麗だな。王女様は」
「ああ・・・王女様も竜騎士らしいぞ」
「何でも今日は竜王国三大美少女が総出演らしいからな」
「歌姫マライアと王女様、後一人は誰だろうか?」
その中でも私への声援は一際大きかった。
ケルに率いられた餓狼族、狸人族やドワーフが特に大声を張り上げていた。もちろんお父様やお母様、実家のスタッフが大声援を送ってくれたけどね。
私は心の中で、できればエリザベート王女が一番声援を受けてほしいと思ってしまう。だって、国王陛下の御前だし、いい所を見せたいだろうしね。まあ、竜王国一の美少女である私と一緒のステージに立てば、それは仕方のないことだろう。
★★★
晩餐会が始まる。
私は部隊長として、国王陛下にご挨拶をする。
「お久しぶりでございます、国王陛下」
「うむ。息災のようだな。なかなかのステージであったぞ。久しぶりにエリザのピアノが聞けて嬉しく思う。礼を言うぞ」
「ありがとうございます」
これはマライアのお陰だ。やはり国王陛下といっても、親は親だ。娘の晴れ姿を見るのは嬉しいものだという提案があり、急遽プログラムを変更した経緯があった。
「料理についても申し分ない。それにしても我が国と味付けが似ておるな」
「今夜は竜王国への歓迎の意味を込めて、竜王国に近い味付けにしていただきました。魔物討伐後の食事会は、ナウール王国独自の料理を楽しめますよ」
「それは楽しみだな」
国王陛下もご満悦のようだった。
続いて帝国の来賓にも挨拶をする。主賓はパウル皇子だ。茶髪で30歳くらいの男性で、少し不機嫌な印象を受けた。社交辞令だろうが、お褒めの言葉をいただいた。
しかし、私が辞した後に側近たちとの会話が聞こえてきた。
「これでは馬鹿にして、挑発することができんではないか?」
「殿下、まだ魔物討伐の視察があります。その際に・・・」
「野蛮な魔物と同席する晩餐会などあってはならん・・・しかし、それを言うのは・・・」
どうやら、何か粗探しをしているようだった。
でも、その粗も見つからないくらい、ここまでは完璧だったということだろう。




