38 魚人族の島 2
私たちに迫って来たのは、角の生えたサメ型の魔物、ホーンシャークの群れだった。
大きな群れともなると、大型帆船にも被害が出るくらいの危険な魔物らしい。サンドラ王女が叫ぶ。
「カトリーヌさん、クレーテさん!!早く上空に避難して!!」
私とデミドラが上空に避難しようとしたところ、クレーテとカメールは猛然と群れに向かって泳ぎ出した。
「クレーテ!!早く避難しなさい!!」
「カトリーヌ様、それはできないですだ!!漁船が襲われていますだ!!」
よく見ると、小さな漁船がホーンシャークの群れに取り囲まれていた。群れの数は約20匹ほどだ。
「仕方ないわね・・・デミドラ、やるわよ」
『そうね。ホーンシャークの卵は高級食材って聞いたことがあるわ』
「だったら、なるべく奇麗に倒しましょうね。ブレスは禁止ね」
『分かってるわよ』
私とデミドラもクレーテたちの後を追う。
途中、ハルバードで何匹かホーンシャークを切り裂いた。上空にいるスピラに指示をする。
「スピラ!!回収しておいて!!魚人族へのお土産になるわよ」
「そ、そうね・・・」
クレーテはというと、上手く銛を使ってホーンシャークを撃退していたし、クレーテも水流ブレスを吐いて漁船に近づけさせないようにしていた。
漁船には、魚人族の少女が乗っていた。少女に声を掛ける。
「もう大丈夫ですわ。安心してください」
すると少女が泣き崩れた。
「母様が・・・母様が・・・」
落ちつかせて事情を聞くと、少女と少女の母親はここで素潜り漁をしていたようだ。
少女が船に戻り、休憩していたところホーンシャークの群れに襲われたようで、母親は未だに海底から戻って来ないという。
「だったらすぐに助けにいきますだ。カメール!!」
『分かったよ。すぐ行こう』
カメールとクレーテはすぐに潜水を始めた。私とデミドラも後を追う。
30メートル程潜ったところで、少女の母親らしき漁師を発見した。今もホーンシャーク3匹と格闘している。
そこへクレーテとカメールが急接近し、死角からクレーテが銛でホーンシャークを貫いた。
漁師は安堵の表情を浮かべ、何やらハンドサインのようなものを出していた。
カメールが念話で意味を教えてくれる。
『お礼を言っているよ。それと「娘は無事か?」って言っている。クレーテが「無事」とハンドサインで答えているよ』
『ありがとう、カメール。すぐに浮上しましょう』
漁船に戻ると、サンドラ王女とスピラが残りのホーンシャークを片付けてくれていた。
母親がお礼を言ってくる。
「竜騎士様、本当にありがとうございますだ!!オラはマーラ、こっちは娘のマーリですだ。マーリ、お礼は言っただか?」
「あ、ありがとうございますだ」
「ところで、アンタたちはなぜここにいらしただ?」
サンドラ王女が代表して事情を説明する。
「私は第一王女のサンドラです。海の魔物が増えたことで魚人族との交流が途絶え、心配になって視察に来たのです。できれば、以前のように交易をしたいと考えています」
「それは有難いですだ。オラの夫は族長ですだ。すぐに歓迎の宴を開くように言いますだ」
それから私たちは討伐したホーンシャークをできるかぎり集め、血抜きなどの最低限の処理をする。
そして、マーラの案内の元、魚人族の集落に向かうことになった。向かう途中、娘のマーリはクレーテに懐いていた。
「竜騎士様も魚人族ですだ?」
「そうだ。オラは竜王国のカーゴ村の出身だ」
「魚人族も竜騎士になれるなら、オラも竜騎士になりたいだ」
「それにはドラゴンと契約しないと駄目だ。オラは運が良かっただけだ」
「でも凄いですだ」
クレーテも満更ではなく、嬉しそうにしていた。
★★★
魚人族の集落に着くと総出で大歓迎された。
すぐに族長のフィッシャーがお礼を述べてきた。
「サンドラ王女、それに竜騎士様方。本当にありがとうございますだ。お陰で妻と娘が助かりましただ。難しい話は後にして早速、宴を開きますだ」
サンドラ王女も答える。
「突然の訪問ですのに温かく迎えてくれましてお礼を言います。マーラさんとマーリさんを助けたのは、本当に偶然ですから気にしないでください。それと討伐したホーンシャークはそちらにお渡しします。宴の料理に使ってください」
「こ、こんなに大量に!?それは有難いですだ!!」
私も魚人族に教えてもらいながら料理を手伝う。
料理をしている時、クレーテが嬉しそうに話し掛けてきた。
「ホーンシャークは少し臭みがあるので、オレンジの葉っぱを一緒に煮込めば、臭みが消えますだ」
「よく知っているのね?」
「故郷ではよく料理をしていましただ。この島で獲れる魚なんかは故郷と同じ物が多いですだ」
「そうなの?だったら、クレーテの故郷にも行ってみたいわね」
「是非、来てくださいだ」
魚人族は皆が気のいい者たちばかりだった。
すぐに打ち解ける。クレーテはというと、大勢の子供たちに囲まれて、マーラとマーリを救出した話をせがまれていた。
それを遠目に見ながらスピラが言う。
「この島ならクレーテも自信を持って、任務に当たれるわね」
「そうね。その方向で考えてみようと思うわ」
「それがいいわね。彼女も楽しそうだし」
こうして夜は更けていった。
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