35 新たな任務
私が指導する学生の一人は、魚人族の少女クレーテ。魚人族はヒレがあり、手と足には水かきがある。水中活動が得意な種族だが、竜騎士となった魚人族はここ100年で存在しない。また、彼女の相棒のドラゴンも特徴的だ。ドラゴンというか・・・でっかい亀だ。
バラック教官が紹介する。
「ほれ、クレーテ。ちゃんと隊長殿に挨拶をせんか」
「は、はい・・・オラはクレーテ、こっちは相棒のカメール。よろしくおねがいしますだ。それでオラは何をやっても駄目で・・・ご迷惑をお掛けしますだ」
「私は隊長のカトリーヌですわ。よろしくお願いしますね」
挨拶を終えた後、バラック教官が留学に至った経緯を説明してくれた。
「見て分かる通り、クレーテは魚人族で陸上での活動は苦手だ。それはドラゴンのカメールにも言えることだがな。例年のカリキュラムなら何とか卒業はできたんだが、お前たちの代からカリキュラムが大幅に変更になっただろ?その煽りをもろにくらったというわけだ」
グラース王子が引き継ぐ。
「彼女たちを担当している助教の立場から言うと、水中活動は優秀なんだ。水軍も卒業さえさせてくれたら、是非とも入隊してもらいたいとの意向なんだけどね。でも・・・」
クレーテとカメールは地上走はダントツの最下位、飛ぶのも苦手なため、飛行レースは完走すらできず、アクロバット飛行はもちろん棄権したようだった。
そんなことが重なり、クレーテとカメールは自信を完全に失ってしまったようだ。
「このまま竜騎士になれなかったら、オラたちはどうしたらいいか・・・高額の授業料なんて払えないですだ・・・」
『ごめんね・・・僕がしっかりしていれば・・・』
二人の出会いは、クレーテが浜に打ち上げられているカメールを保護したことがきっかけだ。当初クレーテは、カメールがドラゴンとは思わずに亀だと思って育てていたようだ。まあ、見た目は完全に亀だからね。
『みんなとはぐれて、困っている僕を助けてくれたのがクレーテなんだ。何とかしてあげたいけど、僕には無理そうだ』
「それは違うだ。オラがちゃんとした竜騎士なら、カメールも立派なドラゴンになれただ」
二人の信頼関係は強そうだった。
「ナウール王国には魚人族の集落もあるし、そこでの任務が中心になると思う。カトリーヌ嬢には二人に自信をつけさせてもらいたいんだ」
「できることはさせていただきますわ」
続いてもう一人は、青髪の美少女で国民的歌姫のマライア・ヒューストンだ。
私とほぼ同年代で、幼少からその歌声と美貌は有名だったし、代々儀礼大臣を務めるヒューストン伯爵家のご令嬢でもある。彼女とエリザベート王女、そして私の三人が竜王国三大美少女と呼ばれるているから、それなりに意識はしていたし、彼女の公演をお忍びで見に行ったこともある。
「お初にお目にかかりますカトリーヌ様。マライア・ヒューストンでございますわ。カトリーヌ様は・・・少しイメージと違っていまして、少し驚いておりますわ」
「こちらこそ、よろしくお願いしますね」
多分、噂よりも私が美少女だと思ったに違いない。
「多くの方が集まっておられますので、挨拶代わりに一曲歌わせていただきますわね。ダイアナ、準備をして」
『任せなさい』
そう言うとマライアは会場の中心に移動した。
彼女の相棒のドラゴンは光竜だった。光竜はドラゴン随一の美しさを誇るドラゴンで、エリザベート王女のクーニゲンと同族ということになる。
「皆様!!マライア・ヒューストンでございます。この素晴らしき日に一曲プレゼントして差し上げますわ!!」
会場がざわめく。
「歌姫だ!!」
「マライアがなぜここに?」
「流石はカトリーヌ様だ。歌姫マライアをホームパーティーに呼ばれるなんて・・・」
マライアの美声が響く。
「ララララ~♪美しく強い少女~♪カトリーヌは餓狼族を~♪ラララ~グレートボアを・・・」
歌詞はなんと私の武勇伝だった。
相棒のダイアナはというと、光魔法で花火のような演出をしていた。巨大なグレートボアを出現させたり、デミドラのようなドラゴンを光で形作ったりしていた。
曲が終ると拍手喝采だった。
お父様とお母様も大満足だった。
「いい歌だった。歌も素晴らしいが、カトリーヌの歌を歌ってくれるとは感激だ」
「そうですわね。ダイアナの光魔法も曲に合って素晴らしいですわ」
「お褒めいただきありがとうございます。他にも曲を用意していますわよ」
『お客様をリサーチすることは基本中の基本だわ』
「是非聞かせてくれ」
「ええ、聞きたいわ」
「分かりました。それでは・・・
小さきドラゴン~♪でもそのスピードは風のよう~♪スピラとゲイルは今日も行く~♪」
なんとスピラとゲイルの歌まで用意していた。
スピラはというと、感激していた。
私は気になったことをグラース王子に尋ねた。
「ところでなぜ、彼女は留学になったのですか?」
「それは・・・一言で言えば、やる気が全くないからだ・・・」
やる気がない?
一体、どういうことだろうか?
気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!




