30 ドワーフの里 2
商人のタヌーカさんと外交能力の高いサンドラ王女の頑張りで、多少はドワーフたちと打ち解けることができた。
私はというと、相変わらず子供たちに大人気だった。しかし、ここではあからさまに求婚してくる者もいた。
「お嬢さんは婚約者はいるのか?」
「いませんわ。私のお父様もお母様も心配性ですので、急に言われても・・・困りますわ」
「それは残念だな。お嬢さんだけでもこの里に残ってほしいくらいだ」
まあ、美少女の私には日常茶飯事の出来事だ。
お父様からも「絶対に変な男とは関わるな」と言われているしね。
そんな中、族長が宴を開くと言い出した。
「流石にここまでしてくれたのだから、宴を開いても罰は当たらんだろう。客人としてもてなそうと思う」
これにはドワーフの大半が従った。でも一部は私たちに不快感を示しているのが分かる。
★★★
宴が始まると、不快感を示していた者たちも次第に打ち解けていく。
これには理由があった。ドワーフが酒好きということを考慮して、こちらで色々と食材や料理を準備していたからだ。主な物を挙げると、先日討伐したグレートボアの燻製肉やドワーフ名産の火酒に獣人たちが作ったフルーツを漬け込んだ果実酒だ。ドワーフたちには好評だった。
「この肉は酒に合うな」
「火酒が果実酒になるのか・・・」
「それだけでも取引きする価値はあるかもしれんな・・・」
そこにタヌーカさんやサンドラ王女がそれとなく交易するメリットを説明するから、大半のドワーフたちは、私たちと取引きしてもいいと言い出した。
そんな時、ゴレアが声を上げた。
「みんな、騙されてはいけないわ!!人間は狡猾な奴ばかりよ」
ゴムラズ族長が諫める。
「ゴレア!!楽しい宴の雰囲気を壊すな。ここまで接してきて、サンドラ王女やタヌーカ殿は信頼がおけると分かるだろう?いきなり大々的に交易しようとは思わんが、それでも少しくらいなら取引きしてもいいと儂は思うぞ」
「だったら父上、私と勝負をさせてください。私に勝てば、少額の取引きは認めます」
勝負か・・・
この中では、私が一番戦闘力が高い。勝負するとなると私だろう。問題は今後の友好を考えて、ゴレアに怪我をさせないことが重要だ。多分、勝つだけならスピラでも勝てそうだけど、相手に怪我をさせないことを考えると、私以外にいない。
「分かりました。その勝負、受けて立ちますわ!!」
早速、勝負のための会場づくりが始まった。
聞いてみてびっくりだったのだけど、勝負というのは、飲み比べだった。てっきり、力比べか何かだと思っていたのに・・・
でも受けたからには、プライドに懸けて勝たなければならない。私は気合いを入れる。
しばらくして、開始の合図とともに大量のお酒が運ばれてきた。
ルールは簡単で、先行と後攻に分かれて先行が飲んだ酒を後攻が飲み干す。続いて同じことを先行と後攻を入れ替えて行う。どちらかが飲めなくなったら、そこで勝負が決まる方式だった。
火酒を手に取ったゴレアが飲み干す。
「まずは火酒からよ」
私も火酒を飲み干す。喉が焼ける・・・
思っていたよりも3倍はきつかった。
私はお酒は弱くはないが、ここまで酒精のきついお酒をストレートで飲んだことはない。私はなるべく酒精の弱いお酒を選んで飲む。
そこからはいくら飲んだが分からない。私は主にワインやエールを飲み干し、ゴレアは火酒を中心に選んで飲んでいく。
しばらくして、ゴレアが苦しそうにし始めた。
「まだまだ酔いは回っていないけど、お腹が・・・」
なるほど・・・
ゴレアはアルコールには強いが、お腹が限界のようだった。これをチャンスと見た私は、連続でエールのジョッキ3杯を飲み干した。
これに続き、ゴレアがエールのジョッキを飲むが、2杯目の途中で手が止まった。
「む、無理・・・私の負けよ・・・」
会場が大盛り上がりになる。
私は多くのドワーフに囲まれ、胴上げまでされてしまう。
ゴムラズ族長が言う。
「ゴレア、最初の約束に相違はないな?」
「もちろんです・・・負けた以上、これには従います」
そこからは私もあまり記憶がない。
次の日、二日酔いの残る中、帰還する準備をしていると、ケルから念話で話し掛けられた。
『商談は上手くいきましたよ。カトリーヌ様のお陰です。こちらで少し調べたところ、飲み比べの勝敗に関わらず交易をすることは決めていたようです。ゴレアもそうですが、人間を憎んでいるドワーフたちが一定数いるので、溜飲を下げるために勝負を挑んだようです。ゴレアがもし勝っていれば、「頑張ったから少しは交易を認めてもいい」というつもりだったようですね』
『そうなのね・・・』
『でも予想外にカトリーヌ様が奮闘したので、大半のドワーフたちはカトリーヌ様に尊敬の念を抱いております。カトリーヌ様が交易の担当者になれば、フルスペックの交易をするとも言っていますしね』
色々あったけど、何とか上手くいったようだ。
帰り道、サンドラ王女とタヌーカさんにお礼を言われた。
「今のところ、計画は上手くいっているわ。本当にありがとう」
「本当にありがとう。これからもよろしくね」
本来の竜騎士のあるべき姿とは違う気がするが、それでも人から感謝されるのは嬉しいものだ。
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