3 竜騎士学校へ
私は15歳になった。そして、とうとう竜騎士学校へ入校することとなった。思えばこの2年間は修行に明け暮れる日々だった。結局デミドラは痩せなかったけど、私もデミドラも必要最低限のスキルを身に付けることはできている。
そのスキルというのは、まずデミドラの巨大化の能力だ。成竜のドラゴンでも普通は魔力の消費を抑えるために普段は人間サイズでいることが多い。だが戦闘になれば、体が大きく力が強いほうが有利だ。この巨大化に関しては、デミドラは今回の新入生では一番だと思われる。
次は飛行能力だ。
デミドラは生まれてすぐに飛ぶことができた。しかし、その体型の所為もあって、かなりスピードは遅い。風竜である母親のシュネールに相談したが、取り合ってくれない。
「ちょっと、スピードを速くさせたいんだけど、アドバイスを貰えないかしら?」
『デミドラは飛行姿勢が素晴らしいわ。それに美しい。スピードなんて二の次よ。この美しさをカトリーヌも誇りに思っていいわよ』
多分現実から目を背けているのだろう。ドラゴン最速を誇る風竜がスピードを二の次と言い出したら、もう駄目だろう。
そして、私に求められるスキルは何といってもドラゴンとの意思疎通だ。竜騎士すべてがドラゴンと念話ができるわけではない。念話ができなくても、ジェスチャーや合図で意思疎通ができればいい。ドラゴンは総じて知能が高いので、人間の言葉は理解できる。要はドラゴンの仕草や態度で何を訴えているかが分かればいいそうだ。
まあ、私クラスになると、そんなの最初からできるから関係ないのだけど。
そして入校式の日、私はデミドラに乗って飛び立った。入校式にドラゴンに乗ってやって来るのは結構なレアケースらしい。大体は入校してから訓練で学ぶそうだ。まあ、竜騎士のサラブレッドで絶世の美少女の私なら普通なのだけど、世間一般ではそうではないようだ。
そんな優越感に浸りながら私は竜騎士学校を目指した。当然、過保護な両親も一緒にドラゴンに乗ってついて来ている。
途中、小型のドラゴンに乗った少女を発見した。
あの子も新入生で、騎士学校に向かっているのだろう。しかし、よく見るとかなりふらついている。今にも墜落しそうだ。どうも大荷物を抱えているので、積載オーバーだろう。そして案の上、墜落はしなかったが、付近の草原に着陸した。私も心配になってデミドラに後を追うように指示した。
「ああ・・・どうしよう!!もう間に合わないよ!!荷物が重すぎるんだよね?」
『ごめんよスピラ・・・僕の力じゃ無理だった・・・』
やはり、荷物が重すぎて上手く飛べないようだった。私は颯爽と少女の前に立つ。その少女は私と同じくらいの年齢だが、かなり痩せている。ガリガリって奴だ。それに相棒のドラゴンも小型で力が弱そうだった。
「お困りのようね?私はカトリーヌ・ハワード、竜騎士学校の新入生かしら?」
「はいそうです。私はスピラと言います。こちらが相棒のゲイルです。少しでも旅費を浮かせるために大荷物を抱えて飛ばせていたんですけど、限界のようで・・・」
詳しく聞くとスピラはド田舎の出身で、ここまで頑張って飛んで来たようだった。因みに騎士学校には学生寮もあり、平民の多くは入校と同時に入寮する者が多いそうだ。
「分かったわ。私たちが荷物を運んであげる。貸しなさい」
「そ、そんな・・・ご迷惑じゃ・・・」
「大丈夫よ。デミドラは力持ちだからね。そうよね?デミドラ?」
「キュー!!」(任せて!!)
私はスピラの荷物をデミドラの背中に乗せて飛び立つ。
「デミドラ、どう?」
『軽いわよ。ところで、ゲイルって言ったかしら?男ならこれぐらい何とかしなさいよ』
『ご、ごめんよ・・・でも君は凄いね・・・』
そこから私はスピラと、デミドラはゲイルと話しながら竜騎士学校に向かった。同年代の女子だったこともあり、話は弾む。
ふと後ろを見ると親馬鹿たち、特に父親たちがすすり泣いていた。
「ああ・・・カトリーヌ・・・本当に優しい子に育って・・・」
『デミドラもいい子に育った・・・まさに王の王だ・・・慈悲の心が素晴らしい・・・』
スピラも気づいたようで、質問してくる。
「あの・・・後ろの人たちは?」
「気にしないで。護衛みたいなものだから」
「護衛って・・・カトリーヌさんは、凄い人なんじゃ・・・」
「まあ、凄い美少女であることは間違いないけど、気にしないで」
スピラは顔が引き攣っていた。まあ私が将来を期待されている竜騎士で、更に公爵令嬢とは気づいていないようだけどね。
★★★
学生寮の前でスピラたちと別れた私とデミドラは入校式の会場に向かった。会場で受付を済ませると席に案内された。今期の入校生は50名のようで、第一王女のエリザベート王女も入校するとのことであった。しばらく席で待っているとスピラもやって来た。どうやら同じクラスのようだ。
「改めてお礼を言います。ありがとうございました。できればこれからも友達として・・・」
「もう私たちは友達よ。それに友達ならあれくらいして当然よ。普通に喋ってちょうだい」
「ありがとう。嫌らしい貴族が多いって聞いていたから、いじめられないかと心配してたの・・・貴方みたいな人に会えてよかったわ」
「戦場では貴族も平民も関係ないから、お互いに頑張りましょう」
そんな話をしているうちに入校式が始まった。国王陛下も出席し、スピーチをするくらいこの国は、竜騎士の育成に力を入れている。戦略的な理由から少数精鋭主義だからだ。その辺の徴募兵なんて1000人居ようが竜騎士1騎に敵わない。国軍は侵略戦争ではなく、少ない予算で国土防衛をコンセプトにしているので、竜騎士の育成は国是でもある。
まあ、私には関係ない話だが、竜騎士学校に入校したからといって、絶対に竜騎士に成れるとは限らない。成績が悪かったり、適性がなければ竜騎士に成れないのだ。竜騎士と成れば学費免除なのだが、成れなかった場合は学費を払わなければならない。普通の平民では払えない額なので、そうなれば、軍の輸送隊で荷物運びを長期間行うか、辺境の開拓地で開墾作業を行うことになる。
まあ、命の危険がない分、気楽ではあるのだけど、プライドの高い貴族なんかは、賄賂を贈ってでも竜騎士に成ろうとする。
入校式が終わり、会場を出ようとしたところで、スピラに話し掛けられた。
「もし、竜騎士に成れなかったらどうしよう・・・学費を自己負担なんて聞いてないよ・・・」
「大丈夫よ。そうなったら私が雇ってあげるから。ドラゴンと念話ができる時点で大丈夫だと思うけど。まあ、真面目にやりなさいっていう脅しみたいなものらしいわよ」
実際、過去50年ほどは竜騎士に成れなかった者はいないそうだ。この制度ができたのも真面目に授業や実習を受けない学生を懲らしめるための制度のようだ。
平民にしてみれば、竜騎士の適性がありそうだからと言って、強制的に竜騎士学校に入校させ、やっぱり適正が無かったので、学費を払えなんて無茶苦茶すぎるからね。コネや賄賂で全く適性がない貴族を入校させない措置だと私は思っている。
ただ、この時は私が50年ぶりの落ちこぼれになるなんて夢にも思わなかったけどね・・・
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