2 ドラゴンとの対面
私の前に姿を現したドラゴン、デミドラは少し・・・いや・・・かなり太い。はっきり言ってデブだ。持っているだけで重くて、腕がもげそうだ。
私の想像としては、シュッとした母竜のシュネールと凛々しい父竜のシュワーフが合わさったような姿をイメージしていたのだが、似ても似つかない。
鱗はシュワーフの黒とシュネールの緑が合わさったダークグリーンで、綺麗だとは思うのだが、触った感じがぷよぷよしている。幼竜は比較的柔らかいのが特徴だけど、これは絶対に太りすぎだ。会場の出席者もそう思っているようで、静まり返っている。
ただドラゴンとはいえ、デミドラも女子は女子だ。デブだなんて言えない。言葉を濁しながら、念話で会話する。
『デミドラ、少しイメージと違うけど・・・可愛いわ』
『私も少しカトリーヌに対して持っていたイメージと違うけど、結構可愛いわね』
『じゃあ、私を貴方の竜騎士として認めてくれる?』
『もちろんよ、これからもよろしくね!!』
これで、正式に契約が為された。私は会場に向かって叫ぶ。
「今ここに、私はデミドラの竜騎士として認められました!!そしてここに宣言します。私は竜騎士となり、竜王国ドラーゴの為にこの身を捧げることを誓います!!」
普通はここで割れんばかりの拍手が起こるのだが、拍手しているのはお父様たちとその周辺に居る出席者たちだけだった。
まあ、デミドラがあんなデブドラゴンだったから、微妙な感じなんだろうけど・・・それにしても姿形だけで判断するなんて、酷いわ!!
そんなことを思っていたら、予定通りに国王陛下の御言葉が始まった。
「ここに新たな竜騎士と竜騎士のドラゴンが誕生したことは、国王として大変嬉しく思う。其方たちの活躍を期待しているぞ!!」
「はい!!」
「キュー!!」
私とデミドラは揃って返事をする。
これで、選定の儀は終了だ。安心したら凄くお腹が空いてきた。
★★★
選定の儀の後は、晩餐会が開かれた。
会場に姿を現すと、閑散としていた。理由を聞くと国王陛下が急用で出席をキャンセルしたからだという。戦争とか国家の一大事でないことを祈ろう。まあ、そうなればお父様は招集が掛かるのだろうけど。
晩餐会は立食形式だったがお父様からきつく、近寄ってくる殿方には気をつけろと言われていた。
「カトリーヌの美しさに惹かれて、寄ってくるような連中が後を絶たんだろう。とにかく、愛想笑いだけして、絶対に誘いには乗るなよ。何かあれば、側に居るマリアに言え。対処してくれるからな」
私は身構えていたのだけど、私に近寄って来る殿方はいなかった。多分、心配性のお父様が、殿方を事前に脅したのかもしれないわね。ロマンスに憧れる乙女としては、少し寂しい気もするけど・・・・
私に近寄ってくるのはお祖父様やお祖母様、それにマリアを含めた使用人たちだった。皆が心からのお祝いをしてくれる。マリアが言う。
「国王陛下がお帰りになり、多くの貴族が一緒に帰ってしまいました。もっと盛大にお祝いしたかったのに・・・」
「マリア、貴方たちが心からお祝いしてくれることが何より嬉しくてよ!!物は考えようだわ。多くの出席者が帰ったということは、その分、いっぱい料理が食べられるってことじゃなくて?出席している貴族たちも、すぐに帰るだろうから、身内だけになったら、貴方たちも一緒に食べましょうよ」
「カトリーヌ様・・・なんとお労しや・・・」
出席者は案の上、すぐに帰って行った。私はすぐに大声で言う。
「さあ!!ここからが本番よ!!しっかり食べるわよ!!」
「はい!!カトリーヌ様!!」
みんながワイワイと飲み食いしている。デミドラを見ると、シュワーフとシュネールに料理を取り分けてもらい、パクパク食べている。基本的にドラゴンは食事を必要としない。魔素を空気中から取り込んで栄養に変えているからだ。ただ、趣味として食事をするドラゴンは多いし、怪我や出産などで、多くの魔力が必要な場合は、より多くのエネルギーを取り込むため、食事をすることもあるという。
産まれたばかりだから、デミドラもエネルギーが必要なんだろう。
『パパ、ママ、カトリーヌが美味しそうな食べ物の話ばかりするから、私も食べたくなっちゃったんだよね。魔力も十分足りてるけど、今日はいっぱい食べるわよ』
『そうか!!しっかりお食べ!!このグレートボアはパパが狩って来たんだよ。それをここの料理人に言って、ドラゴン好みのレアステーキにしてもらったんだぞ』
『そうよ!!そしてこのソースの元になるレモーネの実はママが「嘆きの森」から採って来たのよ。塩味とは違った味が広がるのを楽しんでね』
『ああ・・・幸せだ。みんな帰ったから、全部食べていいんだよね?』
『もちろんさ!!』
『しっかり食べなさい!!』
ちょっと!!シュワーフもシュネールも親馬鹿なんだから!!これ以上デミドラが太ったらどうするのよ!!
私はお父様とお母様に言う。
「ちょっとデミドラは食べ過ぎじゃないかしら?」
「まあ、今日くらいはいいんじゃないか?生まれたばっかりだしな」
「貴方!!気が利かないわね。カトリーヌが「私も食べたい」って暗に言っているのよ。いくら身内しかいないからって、恥ずかしいでしょ?カトリーヌの為に料理を取って来て下さい」
「そ、それはすまなかった。気の利かない父を許してくれ」
結局、私もたらふく料理を食べることになってしまった。
★★★
それから2年が経った。
私もデミドラも修行に明け暮れる日々だった。というのもドラゴンと契約したら、竜騎士学校に入校しないといけないからだ。法律では、契約後2年以内ということになっている。普通の竜騎士であれば、すぐに入校するのだが、私の場合はデミドラが生まれたばかりということもあり、2年間丸々修行に当てることになった。まあ、お父様たちも、シュワーフとシュネールも過保護というのが大きかった。
修行はというとそれなりに厳しかったが、デミドラが痩せることはなかった。基本的な飛行訓練や戦闘訓練を除いては魔物の討伐訓練がメインだった。
弱く、動きの遅い魔物は私たちが討伐するのだが、少しでも私たちが苦戦するとお父様とお母様もシュワーフとシュネールもすぐに出てきて、魔物を討伐してしまう。これでは訓練にならないのでは?と思ってしまうが、言うに言えない。このまま、竜騎士学校に入校して大丈夫なのだろうかと少し心配になってしまう。
しかし、討伐した魔物を美味しくいただいているうちに、そんなことはすぐに忘れてしまう。今では討伐がメインというよりも食事のほうがメインになっている。私もかなり、料理や解体の腕は上がった。竜騎士としての技能はあまり身に付いていないように思うんだけどね。
最近ではすっかり、キャンプのような気分になってしまう。先にメニューを決めて、それに見合った魔物を狩るようになってもいる。
少し心配ではあるが、何とかなるだろう。何たって私は竜騎士のサラブレッドで、絶世の美少女。相棒のドラゴンに多少問題はあっても、きっと大丈夫だ!!
この時はそれが甘い考えだとは気づかなかった。
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プロローグは終了です。次回から本格的に物語がスタートします。




