1 プロローグ
私はカトリーヌ・ハワード、花よ蝶よと育てられた13歳の美少女。歴とした竜王国ドラーゴの名門ハワード公爵家のご令嬢だ。今日、私は人生で最も緊張する瞬間を迎えている。というのも私が竜騎士としてドラゴンに認められるかどうかの選定の儀が行われているからだ。
ハワード公爵家は代々続く竜騎士の家系で、お父様もお母様も竜王国で屈指の竜騎士だ。お父様は暴竜のシュワーフに騎乗して「暴虐のボガード」という二つ名を持っているし、お母様も名門ウインドミッド家から嫁いで来たのだけど、結婚前は風竜のシュネールに騎乗して多くの戦果を上げて、「疾風のアンネ」の二つの名を持っている。
つまり私は竜騎士界のサラブレッドということになる。
さぞ厳しく育てられたのではと思うだろうけど、そんなことはない。最近気づいたのだけど、我が両親は、かなり過保護な親馬鹿だった。お父様の部下やお母様の元部下たちが、「将軍のあんな姿は見たくなかった」というくらい、私にデレデレだ。お母様はなかなか子供ができず、30歳を過ぎて、私を出産したのが大きいのかもしれない。
話を儀式に戻すと選定の儀というのは、相棒となるドラゴンと契約を交わす儀式だ。ドラゴンは長命であるため、竜騎士の引退に合わせて次の竜騎士に引き継ぐことが一般的だが、今回はドラゴンの卵の孵化に合わせて行う。祖言った場合、普通は竜舎などで行うのだが、今回は屋敷の大ホールで行うことになった。
ここで、竜騎士に選ばれなかったらかなり恥ずかしいし、年頃の乙女には生きていけないくらいのトラウマになってしまう。なのになぜ、こんなことをするかというと、卵の中のドラゴンと念話で会話ができたからだ。これには、お父様やお母様だけでなく、それぞれの相棒のドラゴンもかなり驚いていた。暴竜のシュワーフなんて、感動で声が震えていたからね。
『我が娘は天才だ!!卵の中から人間と念話ができるなんて・・・』
「それを言うならカトリーヌのほうが凄いぞ!!この年齢で念話ができるんだからな!!」
『いや!!我が娘のほうが凄い!!』
「違う!!カトリーヌだ!!」
お父様とシュワーフが喧嘩を始めてしまったので、お母様とシュネールが止めに入る。
「貴方!!どちらも凄いで、いいではないですか?そうよね、シュネール?」
『そうよ!!最高のドラゴンと最高の竜騎士が誕生することを素直に喜びましょうよ!!』
「まあ、そういうことにしておこう。でもちょっとだけカトリーヌが・・・」
「貴方!!」
「すまん・・・・」
そんなほのぼのとした喧嘩を見ながら、私は卵のドラゴンに念話で話しかける。会話の中から、名前もデミドラに決まっている。
「デミドラ、早く会いたいわ。いつ頃、孵化できそう?」
『うーん・・・1ヶ月位かな?いろんなドラゴンに加護をいっぱいもらったから、大変なんだよね。直前になれば、微調整はできるけど・・・』
そんな会話をしていたら、お父様たちが騒ぎ出し、大々的に選定の儀が行われることになったのだった。
私のパートナーとなるデミドラもかなりのサラブレッドだ。何たって暴竜の中でも暴虐王と呼ばれるシュワーフと風竜王の娘でもあるシュネールの娘だからだ。
普通、ドラゴンは風竜は風竜という風に同種で番うんだけどね。当時はウィンドミッド公爵家の当主である私のお祖父様は「娘と娘のドラゴンが盗られた・・・」と嘆いていた。私が生まれてからは、週に1回は必ず家にやって来るけどね。
★★★
そしていよいよ、選定の儀が始まる。
私は別室で待機し、卵は既にホールのステージの上に設置されている。私は最後の念話をデミドラとする。
「打ち合わせどおりにお願いね。私が「出でよ!!デミドラ!!」って合図してからだからね」
『分かっているわ。ちょっとリハーサルしておく?』
「駄目よ!!一発勝負って言ったじゃない!!それに一回卵から出てきたら、その後どうするのよ?」
『冗談よ!!』
まあ、私と違ってデミドラは緊張していないようだった。
ステージの袖に立って、出席者を見渡す。恥ずかしいことにお父様は、騎士団の部下や同僚に私のことを自慢して回っている。
私がいくら美少女だからって、恥ずかしいから止めてよ・・・
「カトリーヌは絶世の美少女だ。アンネの美しさに我の凛々しさが加わっているからな!!」
「ボガード将軍、是非ご紹介ください。飛竜騎士隊のエースのこの私が必ずや幸せに・・・」
「娘に結婚はまだ早い!!そんな嫌らしい目で見るなら、即刻摘まみ出すぞ!!」
「そ、そんな・・・・」
お母様はというと、なんと国王陛下のエスコートをしていた。
「夫がすみません。娘のことになると・・・」
「気にするでない。あの「暴虐のボガード」があんなことになるとは、本当に絶世の美少女なのだろうな・・・何なら、この場で我が長男か二男との婚約を決めてもよいぞ」
「いくら王子殿下であらせられても、カトリーヌに相応しくないようであればお断りしますよ。まずは、騎乗技術から見ましょうか?」
「お前も親馬鹿だな・・・」
そんな喧騒をよそに準備が整ったようで、専属メイドのマリアの案内で私はステージの上に立った。お父様やお母様、シュワーフとシュネールは大きく手を叩いているが、他の出席者は微妙な表情を浮かべ、困惑しているようだった。
あれ?私って何かやらかしたのかしら?
「いいぞ!!カトリーヌ!!今日も綺麗だ!!」
「貴方!!恥ずかしいので止めてください。綺麗なのは認めますが・・・」
お父様とお母様はいつも通りだけど・・・・
まあ、気を取り直して、私は打ち合わせ通りの行動に移る。卵に近づき、手を触れて言う。
「偉大なる暴竜シュワーフと偉大なる風竜シュネールの娘デミドラよ!!その美しく気高い姿を皆に見せてあげなさい!!出でよ、デミドラ!!」
「キュー!!」
卵から叫び声が聞こえた。
すぐに卵がひび割れ、中からドラゴンの幼竜が現れ、私の胸に飛び込んで来た。
私のイメージでは、ここで大歓声が上がるはずなのだが、会場は静まり返っている。私はデミドラに目をやる。
あれ?このドラゴンって・・・・・
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