16 野外実習 5
初めてポルガ村に来てから6ヶ月が経過した。村はかなり発展した。
私たちの運用だが、全員がポルガ村付近にいる必要はなく、シフトを組んで交替で王都で休暇を取ったり、ポルガ村近辺で自由に過ごしたりしていた。実家から通っている貴族の子弟は帰省していたが、寮生は、ほとんど帰らなかった。事情を聞くとこちらのほうが食べ物が美味しく、風呂も寝床も充実しているからだという。私は食べたことはないのだが、学生寮の食事はあまり美味しくないらしい。
食べ物のことで少し話をすると、ポルガ村の名物はコカトリスとロックバードの料理だ。唐揚げはもちろん様々な料理が売り出されている。特に名物となっているのはコカトリスの尾の蒲焼だ。それに最近では水田づくりも始めたようで、米の上に乗せた通称カトリーヌ丼も名物になっている。
冒険者たちがカトリーヌ丼を食べながら言う。
「カトリーヌ丼ってのはいい名前だな」
「本当だ!!聞くだけで腹が減ってくる。あのお姫様が美味しそうだからな」
どういう意味かは分からないが、人気が出てよかった。
村も大分潤っているようで、タヌーク村長はかなり上機嫌だ。
「本当に感謝してもしきれません。竜騎士様の活躍も大きいですが、ケルやグラスウルフの活躍も凄いですよ。警護から畑や田んぼの見回りまでしてくれますからね。それにケルは交渉も資金管理も完璧ですね。見た目も怖いので、悪徳商人なんかは逃げていきますし・・・」
ついでにケルにも話を聞く。
「頭が三つあるんで、並列思考が得意なんですよ。真ん中の頭で交渉をしながら。右の頭で資金の計算、左の頭は相手の表情や仕草をチェックするってな感じですよ。まあ、大したことのない戦闘力で、魔境と呼ばれる嘆きの森を何百年とハッタリだけで生き抜いてきましたからね」
ある意味凄い。
「村長、ケル、そろそろ私たちも任務が終わりますから、冒険者に引継ぎをしようと思うのですが、準備はよろしいでしょうか?」
「大丈夫ですよ。グラスウルフはそういったやり方は得意ですからね」
★★★
私たち学生と冒険者の集団、グラスウルフたちとケルは普段私たちが狩場としている場所までやって来た。冒険者に対して、私たちが考案した効率的な討伐方法の講習のためだ。私が代表して討伐方法の説明をする。
「まず、囮役が森から魔物をおびき出します。次回からはグラスウルフが行いますが、今回は説明だけなので動きの速い竜騎士が行います」
グラース王子とスピラが森の魔物たちを挑発して回って、魔物をおびき出す。グラース王子の騎乗するグリフォンのグリーもスピラの騎乗するゲイルも小回りが利くし、素早いからね。デミドラには不向きな任務だけど。
「次に罠を設置した場所まで、誘導したら、待機していた者たちで一斉攻撃をします」
今回は学生が行ったが、ドラゴンは使わない。圧倒的に戦力差があるからね。
ほとんど、討伐されたころに私はハルバードと短剣を使って素早く血抜きをしていく。冒険者はかなり引いていたけどね。
「ここでポイントですが、素早く血抜きをしてください。魔物肉はポルガ村の貴重な収入源ですから、鮮度と味を保つのは必須ですよ。討伐したからといって、ホッと一息なんてしないようにしてください」
説明が終わった後は、実際に冒険者にもやらせてみた。最初は上手く行かなかったが、数日すると様になってきた。最後のほうは3騎ほどの竜騎士が突発対策で常駐する程度で何とかなっていた。
★★★
出会いがあれば別れもある。私たちは任務を終えて、ポルガ村を離れることになった。村人総出で見送りをしてくれた。
「カトリーヌ様、それに皆様方、いつでもいらしてください。貴方たちは命の恩人です。ありがとうございました」
村長が代表してお礼を述べてくれた。半年ほどの活動だったが、私を含めたメンバー全員が竜騎士としての在り方とやりがいを学んだ。個人的には、非常にいい研修だったと思っている。
王都の竜騎士学校に帰還してからのほうが忙しかったかもしれない。活動内容の報告書を提出したり、ポルガ村に今後必要な対策などを議論して、それもレポートにまとめたりした。なぜこのようなこともさせられるかというと、竜騎士の就職先は国軍だけではなく、片田舎の代官的なポジションもあるみたいで、戦闘だけしていればいいというわけにはいかないらしく、書類仕事などの文官的な役割もさせられるそうだ。
そんなことを思いながら、私は隣でお菓子をむしゃむしゃと食べているデミドラの横で、リーダーとして課された報告書を作成している。
「個人の討伐数を記載する項目があるんだけど・・・どうしようかなあ・・・」
『どうしたのよ?』
「個人の討伐数を記載しているんだけど、私とスピラが極端に少ないのよ。私は初日にホーンブルとグレートボアを討伐しただけだからね。そして、スピラなんだけど連絡業務や魔物を追い立てがメインだから、10体しか討伐してないのよ」
『そうなの?でも、あれだけ活躍したんだからいいんじゃないの?』
「それはそうだけど・・・・ちょっと寂しいなって思っただけよ」
このことが後々大きな問題になることは、このとき私たちは気付かなかった。
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