13 野外実習 2
次の日、バラック教官に呼ばれた。
「カトリーヌ、悪いがしばらくお前は別行動だ。お前の戦闘力が高すぎて、他のメンバーの訓練にならん。流石はボガード将軍の娘だと思う。そこでだ。お前には採取した素材を売って、資金の調達をしてほしい。これも訓練だからな。ポルガ村の村長を訪ねろ。話はしてあるからな」
「分かりました」
それはそうよね。スピラなんかは今回が魔物討伐は初めてだし、私がすぐに倒したら訓練にならないしね。
ということで、私とデミドラは1台の馬車に採取した素材を積み込み、ポルガ村に出発する。村に着くと村長を訪ねた。こちらの村長はタヌークという恰幅のよい狸獣人の男性で、タヌタヌ商会の会長もしている。タヌークは王都で細々と商売をしていたのだが、意を決して開拓村の経営に乗り出すことにした。しかし、現実は甘くなく、開発計画が頓挫しかかっているところを国に相談し、学生の私たちが派遣されたというわけだ。
「分かりました。少し査定をさせてもらいますね」
しばらくして金額が提示された。思っていたよりもかなり安い。私も相場については勉強しているからね。
「かなり安いですね。何か理由でも?」
「まずはポルガ村の場所的な問題があります。王都とかなり距離があるので、肉類は塩漬けや燻製にするしかなく、新鮮な肉を提供している王都近隣の業者に競争で勝てません。わざわざここまで塩漬け肉を買いに来る者なんかはいませんからね」
「だったら私が王都まで素材を運んでもいいのですが・・・」
「それだと一過性のものになってしまいます。貴方たちがいなくなれば、商売として成り立たなくなります」
言っていることは真っ当だ。
私たちの儲けだけを考えれば、ここではなく、もう少し王都に近い町で素材を売ればいいのだが、それは違う感じがする。
バラック教官が「これも訓練」と言った意味を考えてみた。
バラック教官は、この村の現状を何とかしてみろと言っているのだろう。それなら、話は変わってくる。
「とりあえず、村の抱えている問題を教えてください」
タヌーク村長が言うには、この村は国の肝入りで開拓村として開発が始まったそうだ。しかし、森からだけでなく、この村から付近の町に向かう街道沿いもそこそこ強力な魔物が出没するようで、村から都市への移動には冒険者の護衛が必要だという。この村で小麦などを大々的に作るにも魔物が多くて難しく、食料を買い込むだけで赤字になっているそうだ。
「今のところ、国から補助金が出ていますから何とかやっていけてます。しかし、来年からは補助金が打ち切られ、3年後からは税も納めないといけません。そうなればこの村は破綻です。学生の皆さんが頑張って魔物を討伐してくれるのは嬉しいのですが、焼け石に水でしょうね」
しばらく対策を考えていると急にお腹がグーっと鳴った。そういえば準備に手間取って朝食を食べてなかった。
「これは失礼しました。今日は採算度外視で、村の皆さんに料理を振舞いますわ!!」
私は早速料理に取り掛かる。塩漬けにしていないホーンブルとグレートボアの肉をカツレツにし、コカトリスとロックバードの肉を唐揚げにした。どうせ余っても捨てるだけだからね。そして、これが我が家に代々伝わる料理なのだが、コカトリスの尾のかば焼きだ。
コカトリスの尾は蛇で、毒がある。しかし、これを丁寧に取り除けば、油が乗って非常に美味しいのだ。これを白いご飯の上に乗せて食べたら言うことがない。
「こ、これは・・・凄い・・・王都で出したら金貨10枚は取れます!!」
タヌーク村長も絶賛していた。そして私はというと村の獣人、特に狸獣人の子供に懐かれていた。それにその子たちは、お腹をしきりに触って来る。
「わーい!!お母さんみたいだ」
「気持ちいいなあ・・・」
「料理上手なお母さんだ!!」
タヌーク村長が止めに来る。
「申し訳ありません。この子たちは早くに母親を亡くしていまして・・・カトリーヌ様に母親の面影を感じたのでしょう。それとお腹を触り合うのは狸獣人の間では親愛の情を示す行為で、親しい身内にしかしません。よっぽどカトリーヌ様を気に入られているのでしょうね・・・」
私が母親って?少し早い気もするけど・・・まあ、懐かれているのは正直嬉しい。
「そうなのね・・・私はこの子たちのためにもこの村の問題を解決してみせます!!じゃあ、元気が出るようにデザートを作りますわね」
それから食事を終えた私は、この村で素材を売ったことにして、その素材をタヌーク村長とともに近くの町まで持って行き、そこで村の商品として売却した。
「その場しのぎの対策ですが、当面はそれで何とかしましょう。後は・・・考えてみます」
「ありがとうございます。ただ、無理はしないでくださいね」
★★★
任務を終えて帰還した私は、メンバーを集めてポルガ村の現状を訴えた。そして、どうしても村を救いたいとも伝えた。
メンバーの一人が言う。
「カトリーヌ様のお気持ちは十分分かりますが、学生の身分で扱うには大きすぎる問題のように思うのです」
「それはそうでしょうが、目の前で困っている人を見捨てるなんて、私たち竜騎士にあるまじき行為です」
ここでバラック教官が口を出す。
「とりあえずやってみろ。お前がリーダーだから好きにすればいい。まあ、一人じゃ無理だからグラース王子とスピラをそちらに行かせる。自由に使え」
「ありがたいのですが、実習のほうは・・・」
「今回は基本的な戦闘訓練だから大丈夫だ。グラース王子は相棒がグリフォンでそこそこ戦えるから、俺が指導することはない。それとスピラだが・・・少し個人指導が必要だな・・・」
スピラは少し落ち込んでいたが、私としては仲間が増えたことを素直に嬉しく思った。
就寝前にスピラが私を訪ねてきた。
「実は戦闘では全く役に立たなかったの。ゲイルは臆病で力も弱いし・・・それで自信を無くしちゃって・・・」
「大丈夫よ。力が弱くても、貴方たちには誰にも負けないスピードがあるじゃない」
「ありがとう・・・」
村の窮地を救うのはもちろんだが、スピラとゲイルにも自信をつけさせたいと思った。
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