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残念令嬢と渾名の公爵令嬢は出奔して冒険者となる  作者: 有栖 多于佳


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サリエル家を買う、そして旅立ちへ

お金を寝ながら稼いでいたサリエルは、家を買うことにした。


「ガブ、家を買いに行くわ。」

意気揚々とサリエルが宣言した。


「そうですか、どこら辺に買うのですか?」

それをガブがサラリと往なす。


「どこら辺って?」

「住む場所ですよ。ラスコーなのかジンバラなのか、それ以外なのか。都会に住むのか、田舎に住むのか、湖や川の近くに住むのか、山の上に住むのか、それは集合住宅なのか、一軒家か。レンガの家か木の家か藁の家か、とか。決まってますか?」


「ぐぬぬぬぬ。」

ガブの正論連続パンチに思わずサリエルは唸り声をあげた。



そして、またしばらく考え、魔法の絨毯に乗ってあちらこちらを見て回り、これだ!という自分の求める家を決意し即、買った。


そこは領都の東の外れ、ぐるりと周囲を森に囲まれた真ん中に広く拓けた敷地。


森の先はトーホー王国の最東端で海が広がっているが、高く険しい崖の上であった。



家は平屋で横に広いそこそこ大きな家屋、広い敷地には、さまざまな種類の果樹が植えられており大きく繁っていた。その他に納屋もあり畑もありと、こんなに広いのにこの価格というのはとてもお得だと不動産屋に言われて決めたのである。


「サリー様が畑仕事をするとは思えませんけど。」

ガブはそんなことを言ったが、


「いいえ、食べ物を買うにもお金が要るのでしょ?作ればただですわ。季節毎の果樹も取れると聞きましたし、お得ですわ。」

フンスと鼻息荒く、力強く答えた。


家財道具も残っていたので、気に入ったリネンやら調理道具やらを揃え、今日からでもすぐに生活出来るようにサリエルの家が一通り出来上がった。



「では、一度領館に戻ってお祖父様とお祖母様にご挨拶をして今日からわたくしはこちらで生活致します。」

サリエルがガブにそう宣言した。


「じゃあ、俺もこっちに移りますよ。」

当たり前のようにガブが言う。


「な、何を言ってますの!いくらガブがわたくしの専属侍従と言えども男女二人で住める訳無いでしょ!」

サリエルがあたふたと慌ててそう喚いた。


「いや、奥様に聞いてみてください。ここに住むの、一応お許しが出てますから。」

「え?え?お祖母様が!?なぜ?」

いつも理性的なサリエルの慌てる姿が物珍しくもあり、自分を意識して赤くなっているのを見るのも、なんともこそばゆい気分でガブはその情景を眺めていた。



領館へと戻り、応接室で祖父母へと引っ越しの挨拶をする。


すると、そこにノックの音がした。


「まあ!エラ!どうして公爵領に?」

王都から公爵領へと馬車で1週間かけてやって来たエラが応接室に入ってきた。


「私はお嬢様の専属侍女ですから、今度からこちらの領地でご厄介になったのです。」

「そう、折角遠くまで来てくれたのに、申し訳ないわ。わたくし、これから一人暮らしをするためにここを出るの。」

サリエルが申し訳なさそうに、眉を下げてエラに告げる。


「ええ、ですからそちらへも私も移ります。ガブと2人きりいう訳にはいきませんでしょうし。」

そう言いきった。


「え?でもそれじゃあ、一人暮らしじゃないわ。3人暮らしになっちゃう。」


「それを言うなら4人暮らしだね、僕もそこに住むから。まあ、ルームシェアっていうのかな?」

今度はクリスが現れて、また可笑しなことを言い出した。


「なぜクリス先生まで!先生は身の振り方を考えていらっしゃったのでは?」

「それはもう少し猶予を貰ったんだ。叔母上の言いつけで、ガブのパーティに入ったからね。」

「ぱ、ぱぱぱ、パーティ?ガブのパーティって何ですの?」


知らない話が進んでいるようで、サリエルは要領を得ない。

祖父母を見やるとイタズラに成功したような顔をして笑いが我慢できずに吹き出していた。


「ブフフ、サリエルそんな情報収拾能力が低いと戦場じゃ殺られちまうぞ!」

「そうよ、1つの事にのめり込みすぎて、全体を見るのを忘れているのは頂けないわ。下手したらパーティ全滅よ。」

そう言って、サリエルをからかう。


「何ですの、お祖父様お祖母様、はっきりおっしゃってくださいな。」

サリエルが焦れて祖父母に説明を求めた。


「ガブにね、暫くサリエルと冒険に行ってきなさいって命じたの。でも二人きりって訳にいかないから、エラとクリスも入れたパーティを組みなさいって。サリエルは冒険に出たくないの?」


「え?冒険?出たい、出たいです。でも一人暮らしは?」


「私はこの領館を出て、身の回りのことが一人で出来るように準備しなさいと言ったのよ。


一人で暮らせと言った訳ではないわ、一緒に暮らしても、エラもガブももうあなたのお世話係じゃないのよ。

パーティのメンバーはみな出自に関わらず平等なの。

だからあなたは必然的に身の回りのことを一人でしなければならないわ。


どう、やれそう?冒険なんて怖くなったかしら?」


そう言ってサリエルにウィンクをした。


「やります。冒険に出ます。パーティで冒険しますわ!」

サリエルの目がまた炎をあげて燃え出したのだった。




そしてその後、サリエルの森の家にそれぞれが荷物を運び込み暮らし始めた初日の夜


「なにも、今夜くらい公爵家に居れば良かったのに。」

ガブがぶつくさと文句を言った。


「なぜ?荷物を運んでしまえば今晩から生活した方が良いじゃない。」

ガブの発言に、サリエルが不思議そうに首を傾げる。


「あのねえ、そりゃ、クリス様とサリー様で俺とエラさんの荷物もまとめて持ってきてくれたよ。でもね、運んだ荷物を棚に片付けたり、これから夕食の支度もしなければならないし、風呂だって沸かさなければ入れないんだよ?」

ガブはこれだから物を知らない貴族のご令嬢は!と、溜め息交じりに言った。


「ああ、お片付け要員?お手伝い形代の家政婦レイ子さんに任せてあるから大丈夫よ。各部屋の片付けを命じてあるわ。お風呂も魔道具給湯器があるから、蛇口を捻ればお湯が出るし、私たちがこっちに来るまでに魔石のコンロでレイ子さんがシチューを煮てくれているし、パンも魔石オーブンで焼いてくれているわ。あとは各々ワインかエールを飲めば良いでしょ?」

サリエルが事も無げに答えた。


「「え?」」

これを聞いて、ガブだけでなくエラまでも驚きの声をあげた。


「ああ、僕もお手伝い形代を出してあるよ。レイ子さんの後輩のミタさんね。力仕事が必要ならフットマンのゾノさんも出そうか!?」

そう言ってクリスがローブから古い形代の基に魔法をかけた。


すると、眼鏡をかけた、長髪の男、、中性な容姿のフットマンが現れた。


「ゾノさん、ここに今日引っ越してきたから片付けをお願いしますね。」

「はい、マスター」

クリスが慣れた調子で声をかけると、ゾノさんはレイ子さんの元へと向かった。連携を取って片付けをするらしい。


「これだから、魔法使いは!」

ガブが頭を抱えた。


「なぜ?便利じゃない。」

「ああそうだね、魔法が使える人は便利でいいさ。だからやっかまれるんだよ、他から。」

ガブがうぅーっと唸りながら言い返す。


「そうね、だから魔力が少ない人でも同じように便利に暮らせるように魔道具の開発と販売を頑張って行くわよ!お金を稼ぎつつ、みなを楽に幸せに出来るのだもの。一石二鳥ね!」

サリエルはそれにも満面の笑顔で、完璧な回答をするのだった。


「ねえ、サリー。君の商会に僕も入れておくれよ。魔道具の開発ってやってみたい。」

クリスが興味深げに顔を輝かせながら言った。


「良いけれど、今は当面の生活に必要なお金が手に入ったから魔力量を半分にして、生産調整しているの。今は魔工場8時間しか稼働させてないわ。」


「でも、商人とのやり取りや集金なんかの業務に必要な人材があるだろう?」

そう言うと、またクリスがローブから形代の基を出した。


そして魔法をかけて、髭を蓄えた恰幅のいい裕福そうな姿の商人が現れた。


「生産管理形代の調 整(ちょう せい)さんだよ。ちょうさんに商会とのやり取りや工場のラインとのやり取りを任せたら良いよ。この魔力は僕から出ているからサリーに負担はないし、より効率的になると思うよ。そうしたら新商品とかバンバン考えられるじゃん!」


クリスは楽しそうなサリーの事業に加わってやっていきたいようだ。


「わかりましたわ、では採用します。ちょうさん、お願いしますね。」

「お任せくださいオーナー。」


そう言うと、サリーが肩からかけているポシェット型のマジックバッグに入っていった。


「はあ、魔法使いってわからない」

ガブが、一部始終を目にして頭を振った。


「違いますよガブ。この二人が規格外の天才魔法使いだからです。発想が神デス、尊い」

エラがなぜか二人を見て祈っていた。



食堂に移動して、レイ子さんお手製のシチューとパンを食べ、魔冷蔵庫から冷えたエールを出して乾杯して遅めの夕食となった。


「ねえ、ガブ。このパーティの名前を決めてよ。ガブのパーティなんだから、ガブが決めたら良いわ。」

サリエルが大事なことを思い出したと言って、ガブに振ってきた。


「え?俺は良いよ。」

とりあえずガブは拒否したが、


拒否るガブの声に被せてエラが

「いや、ガブがきめなさいよ。そうじゃないと、クリス様が」


そのエラの声に被せてクリスが

「なんなら僕が決めようか?今はちょうど八時だな、では八時だよ、全員しゅうご・・・」


ごほごごごほごふ、突然エラがスゴく噎せ出した。


一連のやり取りを聞いて、このままだとチームドリ●ターズとされかねないと、ガブが急いでチーム名を口にした。

「クリス様はネーミングセンスが比較的古風ですので俺が決めますね。アズール、碧とか紺とか海の色を表す言葉です。海も越えて冒険に行きますし、チームアズールにします。」


「良いじゃない!ガブの髪と瞳の色ね。アズール、決定ね。」

サリエルがすぐに良い返事を返して、エラとクリスも頷いた。


これから、サリエルたちは(やっと)冒険へと旅立つのであった。


「じゃあ、明日は旅の準備だな。」

そうガブが言えば


「準備ってなあに?」

サリエルが聞く。


「ねえ、旅に何で出るの?馬車って事は無いのでしょ?船?それともクリス様考案の魔法の絨毯?」

エラがガブに大事なことの確認をした。


「魔法の絨毯じゃ、荷物が乗せきれないでしょ?4人分なのだもの。このまま行くわよ。」

サリエルが事も無げに言う。


「ええ、このままって?」

また変なことをいうサリエルにガブが聞き返す。


「このまま、この敷地ごと行くわよ。そうじゃないと、畑の管理ができないじゃない。」

「畑の管理はゾノさんにでも頼めば良いんだけれど、このままの方が確かに快適だね。」

クリスも同調して返事をした。


「だから、みな今日はゆっくりと休んでね。明日目覚めたら、もうロンデール伯爵領よ。」

サリエルが気楽に寝台列車かフェリーでのようなことを言う。


「夜、家ごと飛ぶ気か!」

ガブが驚いて聞き返した。


「もちろん、明るい中だと観られて騒ぎになると困るじゃない。まあ闇のローブはかけるけれど、念には念を入れてね。」

サリエルがそう胸を張って答えた。


「ところで、ロンデール伯爵領で何をするんだい?」

クリスが根本的なことを聞いてきた。そこは公爵夫人に聞いてなかったようだ、のんきなものである。


「今回、奥様から言われた冒険は、俺の父親探しです。


それを知る鍵になる人物が俺の母が勤めていた南の娼館のオーナーであるレディ アイラ。

どうやら奥様と昔パーティを組まれていた方だとか。


俺の個人的な冒険に付き合わせてしまってスミマセン。」


「いいや、かまわないよ。ガブは自分の過去と向き合うことを決めたんだね。

叔母上に無理矢理背中を押されたのかもしれないけれど、それでも良いことだと思うよ。


僕も可愛い弟子の為だ、尽力する。」


「ええ、私も成り行きとはいえ、諦めていた冒険の旅へ出れるとか嬉しい事しかないです。

しかもお嬢様やクリス様と言った天才魔法使いと同行なんて、鼻血出そう、いえ光栄です。」


「わたくしも、何れ出たいと考えていたことが、こんなに早く実現するとは。


ガブのお父様もわたくしが探して差し上げますから大船に乗ったつもりで居てね。」


三者三様の感想であるが、みな冒険に出たい者ばかりだった。


そして、みながベッドで休む頃、ゾノさんの運転(木の上から指定された方へと指差しているだけ)でゆっくりとロンデール伯爵領へと屋敷の敷地が飛び立ったのである。


お読みくださいましてありがとうございました。


誤字誤謬があるかもしれません。


わかり次第訂正いたします。


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