これは里帰りっていうやつですね! 2
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「ちょっとスカーレット、元気にしてたの⁉」
「やっだ、この子ったらお姫様みたいなドレスを着ているわ!」
「あらあら、ちょっと痩せたんじゃないの? あんた、ちゃんと食べているんでしょうね?」
「聞いたわよ! あんたすんごいお金持ちでイケメンと結婚するんですって⁉ なんでそんなことになったのかそのあたり詳しく説明しなさいよ!」
「そうよ抜け駆けよ! あたしたちにもいい男紹介しなさいよね!」
カンナベル枢機卿の推測取り、行く先々で薬を提供して回りながら、わたしたちは六日かけてようやく中央神殿に到着した。
そして、中央神殿の玄関をくぐり、奥の居住区に向けて廊下を歩いているところへ、ばたばたと大勢の足音が聞こえてきて――わたしは、あっという間に懐かしい顔ぶれに取り囲まれた。
べたべたとほっぺたや頭を触られて、きゃいきゃいと騒ぐ聖女仲間に、とっても懐かしい気持ちになる。
「えっとえっと、元気です! ドレスはリヒャルト様が買ってくれました! ご飯、たくさん食べてます! この前もケーキを四十個食べました! あとあと、リヒャルト様が結婚しようって言ってくれたから結婚します! それからそれから、イケメンさん……あ! 今日は騎士さんたちがいっぱいいますよ! 騎士さんたちはイケメンさんです!」
四方八方からいろいろ言われて、わたしはあわあわしながら全部に答えて回る。
わたしが聖女仲間に取り囲まれたことで少し離れたところに取り残されたリヒャルト様が、目をまん丸くしているのがわかった。
カンナベル枢機卿は微苦笑を浮かべている。
「なんですって⁉ ケーキ四十個⁉ 逆になんでそれで太らないの⁉ あんた、今日こそはその細さの秘密を暴露させるわよ。いらっしゃい!」
「アデーレ、待ちなさいよ! その前にイケメンよ! 騎士って言ったら貴族でしょ! イケメンのお金持ちをゲットしてここからおさらばするチャンスよ!」
「ベアタこそ待ちなさいよ! その前にドレスよドレス! こんな野暮ったい聖女服よりドレスが着たいわ! ちょっとスカーレット、あんた、里帰りに手土産も持たずに来たなんて言わないでしょうね。ドレスよドレス! 出しなさい!」
「どこの世界にドレスを手土産に持ってくる人がいるのよ! でも手土産は気になるわね。スカーレット、何を持って来たの?」
……しまった! 手土産なんて持って来てない!
だけどそんなことを言えば、髪の毛がぐちゃぐちゃになりまで頭をぐりぐりされる未来しか見えなかった。
どうしようどうしようと慌てていると、リヒャルト様と同じく少し離れたところで茫然としていたベティーナ様がすっと近づいてくる。
「スカーレット様、お土産ですが馬車に積んでございます。こちらに運ばせましょう」
……手土産あった! 参謀ベティーナさん、さすがすぎる!
これで頭をぐりぐりされなくてすむと、わたしはホッと胸をなでおろす。
ベティーナさんの言葉に聖女たちはきゃーきゃー歓声を上げて、それから今気づいたようにリヒャルト様に視線を向けた。
「……イケメンがいる‼」
「リヒャルト様です! リヒャルト様はイケメンさんだけどダメですよ!」
聖女仲間にロックオンされそうな危険を感じてわたしが両手を広げてリヒャルト様を守ろうとすると、みんなが大きく口を開けた。
「なんですって⁉ このイケメンがあんたの旦那⁉」
……あの、アデーレ。このイケメンって、リヒャルト様に失礼ですからね。リヒャルト様は、とってもとっても偉い人なんですよ?
聖女仲間はしばらく呆けたようにリヒャルト様を見つめた後で、怖い顔をしてわたしに向き直った。
「……出会いから今日まで、全部話してもらうわよ」
「そうよ、来なさい! 今日は寝かせないわ」
「あんたの部屋はそのまま残してあるから、そこに行くわよ」
「え? お部屋、残ってるんですか?」
「ベアタが神殿長……ああ、前神殿長ね。そいつをぶん殴って残させたのよ。あんたがいつ帰って来てもいいように掃除もちゃんとしてるわよ」
……ベアタ、神殿長殴ったんですか⁉ なんて怖いもの知らずな……。
わたしが聖女たちにずるずると引きずられて行きそうになると、聖女仲間の勢いに唖然としていたリヒャルト様が慌てて止めに入った。
「ま、待ってくれ。積もる話もあるだろうが……」
「アデーレ、ベアタ、エルヴィラ、ザスキア、手紙にも書いたように、今日は話し合いに来たんだよ。スカーレットを構いたい気持ちもわかるが、先にそちらをお願いしてもいいかな?」
リヒャルト様に続いてカンナベル枢機卿が声をかけると、聖女仲間はつまらなそうに口を尖らせた。
「カンナベル様が言うなら仕方ないわね」
「まさかスカーレットを連れて来るとは思わなかったけど」
「でも、いくらカンナベル様の頼みでも、わたしたちは退かないわよ」
「そうよ。いくら何でも、あいつはやりすぎたのよ」
「ま、約束だから席は用意するけどね。会議室を開けて置いたわ」
「行きましょう。……スカーレットもね」
「そういえばあんた、その手に持ってるバスケットは何なのよ」
「なんか甘い匂いがするわよ」
聖女仲間たちに囲まれて、わたしは会議室に向かって歩き出す。
「これはお菓子です! お腹がすいたときにいつでも食べられるようにリヒャルト様が買ってくれました!」
「あんた、甘やかされているわね」
「羨ましいったらないわ」
「何のお菓子が入ってるの?」
「えっと、フロランタンにクッキーのマドレーヌに……あ! クロワッサンもあります! 美味しいですよ! 食べますか?」
「そうねえ、会議室についたらいただくわ」
アデーレとベアタ、エルヴィラ、ザスキアの四人が会議室に向かうことから推測するに、この四人が聖女のストライキの代表者なんだろう。
わたしと特に仲のよかった聖女仲間たちである。
年はみんなわたしより少し上だけど、とっても優しくしてくれた。
わたしが神殿を追い出された時に、お菓子をかき集めて持たせてくれた人たちである。
六歳から去年まで生活していた懐かしい神殿の中を歩いて会議室へ向かう。
ここを追い出された時は、もう一度ここに帰ることがあるとは思いもしなかった。
「さ、ここの会議室よ」
アデーレが第二会議室の扉を押し開ける。
……わあ~、ここも、変わってな~い!
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