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七辻名無の平凡な日常  作者:
第2章
29/30

そういう関係っすか

この話はほんのりBL表現があります。

苦手な方は次の話まで飛ばしてください。

「花火くんの入り浸っている場所なら知ってるヨ。」


「本当っすか!?」


七辻の言葉に食い付く凜太朗。


「チョット待ってネ。」


白いメモ用紙に簡易的な地図を書き始める七辻。

少し覗いてみると、どうやら隣街の裏らしい。

地図は数分で書かれたのにも関わらず、詳細まで分かりやすく書き込みがされている。


「はい、ドウゾ。」


「あ、ありがとうございます!」


時刻は午後8:35。

さっきまで警察署に居たのが夢のようだ。

百目鬼さんの特製スタミナ丼(早く出来て美味しい)を二階堂さんと食べた後、隣街へ行く電車に間に合わせるように早々と駅に向かった。




────────

電車で約十数分の隣街。


○○街、裏道。


ひっそりとしている様で、何処か恐ろしげな雰囲気が漂う。

そこら辺にヤクザや酔っぱらいが居ても可笑しくない風景だが、意外な事にそんな人達は居ない。


寧ろ紳士淑女などが行き交う大人の世界と言った所だ。


「えーっと……。」


キョロキョロと行き交う人にぶつからないように辺りを見渡し、メモに記された店名を探す。


『有為転変』


なかなか渋いと言うか、何と言うか……。

まあ始めて花火さんに会った時も和服だったし、純和風の店だろう。

そう勝手にイメージする。


「アレじゃないか?」


「……アレっすか?」


レンガ作りの壁、焦げ茶色の風合いがオシャレな木製の扉。

それに寄り添うように置かれた観葉植物。

二つ並んだ窓からはオレンジ色のぼんやりとした柔らかな明かりが道を照らしている。

見方によってはオシャレなカフェだ。


しかし、扉の横にあるプレートにはしっかりと店名が刻まれていた。


BAR『有為転変』


見た目の割に名前が渋い!?

いや、純和風とか勝手に想像してすみませんでした!!


一瞬、本当にここなのか疑ったが、花火さん特有の“あの雰囲気”が微かに店内から滲み出ているのを察知したため、どうやらこのバーらしい。


「……俺はここで待っているから行ってこい。」


「え、で、でも……。」


「店内にあの爺さんがいる限り店の周辺は安全だ。それに、これは俺の事ではなく凜太朗。お前の事だからな。」


「……ウッス。」


緊張しながらも、木製の扉の取っ手を掴む。

深呼吸をして気持ちを落ち着かせ、恐る恐る扉を開いた。



「いらっしゃいませー」


中に入ってすぐにある会計レジにいた青年(少年?)がお決まりの挨拶をしてきた。


カフェのような見た目とは違い、店内はお洒落なバーそのものだった。

左手側には色取りどりの様々な種類のお酒がズラリと並ぶ棚を背景にしたカウンター席。

右手側の会計の後ろにはゆったりとしたボックス席が見える。


花火さんはカウンター席で店の人と話しをしていた。

始めて見た時の黒い和服ではなく、ワイシャツまで黒のダークスーツに白い羽織りを肩にかけていた。

そのファッションが紅い髪に映えていて存在感のある見た目のはずなのに、何故か存在感が薄く感じたのは“あの雰囲気”のせいかもしれない。


花火さんと話しをしている男性はこのバーの店長さんだろうか、他の店員の人と雰囲気が違う。


顔つきからして四十代前半だろうか、オシャレにまとめられた綺麗なブラウン色の髪にダンディーな髭。

高身長でスラッとした体格に店の制服らしきバーテンダー服がよく似合っている。


つまり、世に言うイケメンのおじ様である。



男性が楽しそうに話しているのは分かるが、花火さんの表情は死角で分からない。


ふいに、男性がこちらに気付きにこやかに挨拶をしてきた。


「いらっしゃいませ。」


「あ?」


それに気づいた花火さんがこちらを向く……というより睨む?


「…………………………………………………………チッ。」


何故か不機嫌だった。この上なく不機嫌だった。

それでもめげずに花火に近づく凜太朗。


「は、花火さん。その……お話しがあって……。」


雑草のように逞しく生きろとばーちゃんは言ったけど、これは危うい。


「ん?花火の知り合いか?」


「…………顔見知り。」


「す、鈴村凜太朗っす。花火さんに用事があって…………それで、よくここにいるって聞いて来ました。」


「店長の齋藤(さいとう) (はじめ)と申します。」


「……面野郎か。」


「はい……。それで、修行の約束をしに来ました……いつが空いてます、か……?」


「断る。」



ここまでの間、約数秒。


「で、でも!」


「まあまあ、取り敢えず何か飲みますか?」


「……。」



店長さんの柔らかな物腰に乗せられて花火さんから一つ空けた隣に座る。


だって怖いから!


「そういえば、いい日本酒が入ったが飲むか?」


「!……飲む。」


心なしか店長さんと話している時の花火さんは嬉しそうだ。



「それで……自分の力はまだまだ未熟で……上手くコントロールを習得して、周りに迷惑をかけたくありません。

なので修行に付き合ってください。お願いします。」


花火さんの方に向き合って深々と礼をする。


「………………来週火曜日。」


「へ?」


「来週火曜日、15時に里見爺の所に来い。一分でも遅れたら帰るぞ。」


「あ、ありがとうございます!」


よっしゃ!!第一関門クリアだぜ!


「当店からのサービスです。」


笑顔の店長さんの対応がタイミング良すぎて拝みたくなるぜ。

差し出されたのは淹れたてのコーヒー。

ミルクと砂糖を入れて混ぜてから、猫舌なのでじっくり冷ましてから飲む。


「…………余りコイツに優しくすんな。」


「なんだよ花火、妬いてるのか?」


「……悪いかよ。」


不貞腐(ふてくさ)れたような表情の花火さんに対して、店長さんは意地悪そうな余裕の笑み。


うんー?何か雰囲気が周りと違って、幸せそうな惚気(のろけ)のような気配が……。


「若くして頑張っている子には特に優しくしたくなる性分なんだよ。俺は。」


にこやかな笑顔でそう告げた後、花火さんの耳元で何か小声で耳打ちする。


「っ!おまっ」


何を言われたのかは分からない……というより分かりたくないが、店長さんが小声で言った事に酷く反応して真っ赤になった。


…………これは世の中の一部の女性が喜ぶ関係か否か。


「あの…………お二人はどういった関係ですか……?」


意を決して聞いてみた。

するとさっきとは変わって怪しげな笑顔を浮かべる店長さん。


「世の中には大人が作った秘密の関係があるでしょう?

その一つ。」



あ、ダメだ……殺られる。これ以上聞いたら危ない。


言われたのは俺なのに、何故か花火さんは顔を手で隠しているが、耳まで真っ赤なのが分かる。


でも……まあ…………そういう関係って事っすか。


コーヒーのお礼を告げて、そそくさとオシャレなバーを後にした。

ネタバレをしますと、店長さんは花火さんの旦那様です。

同性夫婦ということになりますね。

そして今回限りの登場です。

店長さんは私と仲の良い個性ある後輩(絵が上手い)が作ったキャラクターなのですが、この小説を書く予定もなかった頃に、一創作キャラの花火さんと店長さんをくっつけたのでこのような関係に至ります。


無論、後輩には店長さんを出していいという許可を得ています。

むしろ店長さんを出すに当たり、嬉嬉として様々なアドバイスを頂けたため、今回の話が書けました。


いつも更新を楽しみにしてくれているという感想に励まされてここまで書く事が出来ました。

深い感謝をこの場を借りて申し上げます。

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