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七辻名無の平凡な日常  作者:
第2章
30/30

一見弱そうな人程、自分より強かったりするのが世の中なんだぜ

さて、日にちというのは悔しくも早く過ぎるものである。

というのもすなわち、待ちに待ちたくない火曜日がやってきてしまった。


指定された場所は境界の永久トワ古書堂。

そわそわと店の奥で楓さんに出されたお茶とお菓子をいただく。


「はっはっは。まあそう緊張するでない。」


「へ!?あ、はい・・・・」


そうは言っても相手はあの花火さんだ。

しかも凄く嫌そうな顔をしていたから尚更気が引ける。


緊張を解そうとしてくれているのか、それとも素なのかは分からないが里見さんがおじいちゃんのようにいろいろ話しかけてくれた流れで古書堂の人たちとはだいぶ打ち解けられたと思う。


そんなほのぼのした時間が1時間ほど続いた頃だった。


ゾワッと首の毛が逆立つ感覚。


花火さんが来店した。



「よう」


気だるげに店と家屋を区切る暖簾のれんをくぐるその様子は、相変わらず機嫌が悪く見える。


「こ、こんばんは」


「・・・・・・・・・チッ」


睨まれて舌打ちをされた。圧力だけでも怖いのに心が折れそう。


「やあ、花火君」


「水蔵貸せ。アンタの水結界が一番強く効いてんだろ?」


「ああ、名無から話は聞いておるおるぞ。ほれ、鍵じゃ」


里見は着物の懐から古い鍵の束を取り出し花火に渡す。見るからに重量感のある鍵束を受け取ると、ついて来いと言わんばかりに視線で合図をすると花火はスタスタと先を歩いていく。

凛太郎は慌てて里見に一礼し、適度な距離を取りつつ花火の後ろに着いて行く。

店の外見を見ただけでは分からなかったが居住のスペースである家は屋敷と呼ぶのにふさわしい広さで、中庭の木々が季節に合った色合いを醸し出している。中庭の向こう側に蔵が三つ程見えることから三つの蔵のうちどれか一つ、あるいは三つ全てがが”水蔵”と呼ばれていたものだろう。


花火が足を止めたのは真ん中の蔵だった。


蔵というにはやはり立派な錠前がかけられており、170センチの凛太郎よりやや低い身長と着物の袖から除く細い手の花火は鍵を開けるのも一苦労しており、ガキンと鈍い音をたてて錠前を外すころには少し息切れをしていた。


「っ・・・・・・・ほれ、入れ。」


「うっす・・・・」


蔵の中に足を踏み入れると微かな水の匂いと小川の音。

『蔵』と聞くと大抵は骨董品がしまわれている場所、あるいは物置というイメージが強いがこの水蔵にはその様な品物の類が一切なく、薄暗くがらんとしているという表現が適切であろう。

辛うじて高い位置にある窓から指す光が薄暗い蔵をほのかに照らしている。


「コントロールっつーのは慣れだ。」


キョロキョロと蔵の中を見渡す凛太郎の後ろで花火は言う。

その言葉に勢いよく振り向く凛太郎。


「え」


「お前は今、『発火・鎮火』『強弱』を習ってんだろ。だったら話は早い。」


そう言うと花火は床に膝を着き、己の影に触れ立ち上がる。

立ち上がるとともにズルリと音がしたような気がした。


「ひっ!!」


花火の手に握られていたのは刀のようなもの。逆光でよくは見えないが”それ”は漆黒の刀に見えた。

いや、凛太郎の本能が言っている。


『刀に見えるだけで刀の形をした”何か”だ』


よく目を凝らせば刀は時折うねり、波打っているようにも見える。

その刃先が凛太郎に向けられる。


「俺が教えるのは実戦での使い方。それだけだ。」


まあ、と付け加える。


「つまりはどの護身法があってるかのテストでもあるな。単純な炎使いなのか、それとも依代を必要とするのか。」


「よ、依代って・・・・それと刀の関係は・・・」


「あー・・・・・・・面倒だから頑張って攻撃するなり、反撃するなりしろ」


「へ?」


一瞬、たった一瞬瞬きをしたその数秒の隙に、気が付けば刃先が目前に迫っていた。


「っぶ!?」


間一髪の所で頭を横にずらして避ける。


「言っとくが、炎は使用可だ。せいぜい考えて戦え。」


「適当かつアンタ殺す気でしょ!?」


「安心しろ、刃先はすり抜けるだけにしてある。・・・2、3日ほど夢でうなされるくらいだ」


「最悪じゃねえか!!」


失礼なのは分かっているが、刀の扱いは年相応(?)としても一見弱そうに見える花火さんの何処にこんな速さがあるのかが謎だ。

しかし今は炎くらいしかない状況で戦うということはほぼ体術戦となる。

となると炎で花火さんを囲んで足止めするのが一番の戦略となる。

どうやって囲むか、どうやって誘導するか。それが一番の課題となるだろう。

幸い、体力と運動能力には自信がある。


考えを巡らせている間にも攻撃は繰り出される。


要はイメージの問題でもある。

考えろ。考えろ。考えろ。考えろ!

『花火さん』を『円柱状』の『炎』に『閉じ込める』!!


ゴオッ!と花火さんの足元から円柱状の火柱が閉じ込めるように燃え上がる。

は、初めて成功した!・・・・・か●はめ破を除いて。


「まあまあ、だな」


「なっ!」


声の主に反応して反射的に振り向くと同時に間合いを取る。

炎の円柱は燃え続けている。

なのに後には花火さんの姿が見えた。


どうやらこのテストはそう簡単に終わりそうにないみたいだ。

久しぶりの更新となりました。

理由は自動車学校2割、就職8割です。

あとPCを購入したのもあります。

今後は休日にちまちまと書き溜めて更新していく方針で行きたいと思います。

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