警察に関わるのは一回でも嫌なものだ……
まさか…………
通り魔の刃物をへし折りやがったよこの人!!!!
不良以来の伝説更新されるんじゃねぇか!?
「チッ……」
すぐに後退して、距離を置く教授。
いや、惜しかったみたいな雰囲気出さないでくださいよ!?十分凄いからな!?
流石の通り魔も警戒し始めた。
そんな動きを見せた、その時。
派手なエンジン音と共に、両者の間に大型バイクが飛び込んできた。
「うお!?」
「きゃっ!?」
あ、教授がやや落ち着いてきた。
もう声が男らしい野太いのじゃない。
飛び込んできた大型バイクに驚いたのか、通り魔は一目散に逃げて行った。
「チッ…………大丈夫か?」
バイクの運転手の人が声を掛けてくれた。
薄暗いのでよくは見えなかったが、スーツ姿の男性のようだ。
バイクを停めて、ヘルメットを取り降りてくる。
バイクを降りる姿が絵になる人だ。
「ん?……何だ、黎か。」
「そ、その声は……一真さん!」
うお、教授の周りに幸せオーラが漂ってる。
近づいてきた『一真さん』は教授の言うように恰好いい人だった。
スポーツマンの様に短く刈り上げられた髪にパリッとした黒いスーツ。
身長はかなり高く、運動でもやっていたのではないかと錯覚させられる余分な肉がない、細身でがっしりした体格。
目付きがやや鋭いが、これは絶対に女性にモテる人だ。
「大丈夫だったか?」
「は、はい。大丈夫っす。」
腰が抜けてしゃがみこんでいた俺に手を差し伸べて立たせてくれた。
「え~、一真さんズルい~。私の心配は~?」
「さっきまで通り魔と殺りあっていたヤツに掛ける言葉はない。」
「ヤダ、見てたんですか!?」
「見えたんだ。……大家からの連絡でな。」
あ、そういえば……忘れていたが、ちゃんと七辻さんには繋がっていたようだ。
遠くからパトカーの音が近づいてくる。
「取りあえず、通り魔について署で話を聞きたいがいいか?」
「え、署……?」
「一真さんは刑事なのよ。妖怪事件専門の。」
「……紹介というより初めましてだな、新入り。
大家から君の話は聞いている。
104号室在住の二階堂 一真だ。
この通り、刑事だから最近帰れてなくてな。」
「は、はいっす!す、鈴村 凜太郎っす!!」
思わず敬礼してしまった。恥ずかしい。
凜太郎が赤面する中、一台パトカーとミニバスが三人の近くに止まる。
ミニバスから捜査班らしき人達が四、五人出てきて現場検証を始める。
もう一台のパトカーの運転席窓から緩そうな印象のいかにも新人刑事が顔を出す。
「先輩ー、早いっすよー。スピード違反じゃないっすかー?」
「違反はしてない。お前の運転が遅いんだ稲穂」
「へいへい。で、その二人っすか?」
「ああ、署に保護してやってくれ。二人の家には連絡しておく。」
「ういーっす。お二人さーん、乗ってくださいー。」
稲穂と呼ばれた新人刑事の人に呼ばれてパトカーに乗る。
人生でパトカーに乗るのはこれっきりにしたい。絶対に。
教授は若い頃の思い出があるらしく、パトカーは苦手だそうでずっと窓の外の景色を眺めていた。
「いやー、災難でしたねー。通り魔に会うなんて。」
「いやー…………あはは。」
「あ、俺、稲穂っていいます。」
「稲穂さん……も妖怪なんです……よね?」
「一応は。犬神憑きの末裔っすわ。」
「犬神憑き……首だけのあの?」
「変幻すりゃ首と胴体を離せますよ~。鵺の人はともかく、お兄さんは?」
「……火車の孫、です。」
「おお!火車!じゃあ君が噂の子か~。」
お喋りな人だ……噂?
「あの……噂って……」
「ん?里見様宅でのドッキリで那鎖の旦那みて気絶したんでしょ?
一応、境界での出来事はうちの部署は耳が早くてね。」
恥ずかしい………………一生の黒歴史だ……。
再び赤面。
穴があったら深く潜りたい。
そんなこんなでよく喋る稲穂さんと話しているうちに、警察署に到着したらしい。
『花咲警察署』
警察署二階に妖怪専用の部署はあった。
夜だからか相談窓口は異形の人々で賑わっている。
「“妖怪・境界犯罪対策・捜査一課”…………。」
「こちらで待っててくださいね~。」
明らかに接客用に区切られたスペースに通された。
仲良く並んだ二つの一人がけのソファのうちの一つに腰を下ろす。
複眼のお姉さんが緑茶を出してくれたお陰で少し落ち着いた。
教授はスクーターのことでずっと機嫌が悪い。
今にも噛み付かれそうだ。
そんな心配は一真さんが来てからなくなった。
教授の機嫌の変わりようが凄い。
「通り魔について、出会い頭からさっきまでの事を話してくれないか?」




