元でも不良を怒らせると危険。絶対。
「あー、面白かった。」
「アンタは鬼か!」
「鵺よ。」
「そうだった、チクショー!」
なんやかんやあり、時刻は既に夕食時。
教授の愛用スクーターで(半強制的に)アパートまで送ってもらうことになり、現在スクーターの後ろに乗せてもらいながら弄られている真っ最中だ。
流石、元・不良の頭。
荒い運転だがスピードの速度は心得ているようだ。
「そういえばさー、一真さん帰って来たかしら?」
「か、一真さん?」
「104号室の人。私達、三人の恩人で先代・頭。」
「今、さらっと不吉な単語言ったっすよね!?」
「失礼しちゃうわね~。いい人よ~。惚れちゃうくらい。」
「アンタの基準は宛にならぬぎゃ!?」
急ブレーキをかけられたせいで語尾が可笑しくなってしまった……。
「ちょ、教授ー……急に止まったら危な」
「伏せて!!」
「うぎゃっ!?」
無理矢理頭を押さえつけられて伏せられた。
その瞬間、頭上を一陣の風が横切る。
いや、違う……風というより『閃光』や『斬撃』に近い。
その証拠として、後ろにあった電柱に切り裂いたような傷跡が出来ている。
「チッ……凜太郎、降りなさい。……向こうに何かいる。」
「う、うっす。」
教授はジャケットから赤黒い数珠を取り出す。
それは相手が“人ではない”証。
斬撃が放たれた場所。
正面の暗がりには外灯がほのかな灯りでコンクリートの道路を照らす。
灯り無き暗闇に“その人物”はいた。
否、辛うじて“人”の姿をしていたから“人物”として認識したが、次の瞬間その認識は覆された。
その人物の両腕は鋭い刃物であったからだ。
外灯の灯りが刃物特有の鍛え上げられた金属に反射する。
全身の毛が逆立つ様にかんじた。
俺が生粋の猫妖怪だったなら、猫娘の様に威嚇していただろう。
「凜太郎。私が足止めするから、クソ大家に連絡して頂戴。」
「は、はい。」
そう言い放つと教授は数珠を両手に巻き、複雑な印を結ぶ。
法力、と呼ばれるものだろうか。
微かに、教授の体に神々しい金色のオーラが見える。
見とれている場合じゃない、早く七辻さんに連絡をしないと……!
震える手で無理矢理 登録された七辻さんの携帯の番号をタッチする。
「私も運が悪かったわ。まさか噂の『通り魔』に会うなんてね。」
「あ、あれが通り魔……!?」
「アンタ、ニュースくらい見なさいよ。
被害者は刃物で切られた様な傷が特徴で~って、ニュースや新聞で滅茶苦茶 取り上げられてるわよ。」
「う……。」
残念な事に最近は学業とバイトでテレビを見る暇すらない。
それより早く電話に出てくれ七辻さん!!
次の瞬間。
「!」
斬撃
それを神々しい梵字で防ぐ封江教授。
斬撃は続く。
いや、増えている。
「チッ…………キリがねぇ。凜太郎、アンタだけでも逃げなさい。」
「で、でも!」
「アンタはまだ未熟者。喧嘩初心者に何が出来るっていうの?」
不敵に笑う封江教授。
姉御と呼びたいが、正確にはアニキだ。
そして残念な事に、この余裕の教授をキレさせたのは通り魔だった。
大体の斬撃は教授が法力で防いでいた。
大体は。
大体に入らない、一陣の斬撃が教授愛用スクーターを真っ二つに切断した。
豆腐が切れるようにスッパリと。
真っ二つにされたスクーターは大きな金属音をたてて倒れた。
両者の時間が一瞬止まる。
通り魔は次の斬撃のためか。
はたまた「あ、やっべー。やっちまった。」と思っているのか。
どちらにせよ通り魔の死亡は確定した。
「俺の愛車に………………………………………………………………………………何してくれとんじゃゴルァァァァァァ!!!!」
元・不良の頭、封江黎湘。
その筋での通り名『虎の黎湘』
空気読んで言わないっすけど、近所迷惑っす!家ないけど!
あと、逃げて通り魔の人(?)!!
幸い、住宅街からやや離れた道路のため、人への被害はない。
しかし、ブチギレた教授は止められない。止められる訳がない。
教授が印を結ぶと道路に魔法陣の様な円状の模様が現れたが、よく見ると曼荼羅らしい。
事もあろうか、曼荼羅の中央から金属バットを召喚した。
「エ●スカリバーかよ!?」
しかも禍々しいことに、金属バットには札やら梵字が書き込まれていた。
完全に若い頃の思い出の品をゴーストバスター用に改造してる。
金属バットを確り握り、刀の様に構えて勢い良く通り魔に向かって行く。
「ちょ、教授ー!!!」
「うおりゃぁぁぁ!!!!」
通り魔に勢い良く金属バットが振り下ろされた。
殺人(?)の瞬間は見たくなかったのか、思わず目を閉じた。
聞こえたのは頭蓋骨を粉砕するようなグロテスクな音ではなく。
何かが折れた様な軽い金属音だった。
そっと目を開ける。
見えたのは金属バットを振り下ろした姿勢の教授。
通り魔は教授の影になって見えなかったが、
すぐ側に落ちていた折れた刃物が全てを語っていた。




