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七辻名無の平凡な日常  作者:
第2章
25/30

元でも不良を怒らせると危険。絶対。

「あー、面白かった。」


「アンタは鬼か!」


「鵺よ。」


「そうだった、チクショー!」



なんやかんやあり、時刻は既に夕食時。

教授の愛用スクーターで(半強制的に)アパートまで送ってもらうことになり、現在スクーターの後ろに乗せてもらいながら弄られている真っ最中だ。


流石、元・不良の頭。

荒い運転だがスピードの速度は心得ているようだ。



「そういえばさー、一真さん帰って来たかしら?」


「か、一真さん?」


「104号室の人。私達、三人の恩人で先代・頭。」


「今、さらっと不吉な単語言ったっすよね!?」


「失礼しちゃうわね~。いい人よ~。惚れちゃうくらい。」


「アンタの基準は宛にならぬぎゃ!?」



急ブレーキをかけられたせいで語尾が可笑しくなってしまった……。



「ちょ、教授ー……急に止まったら危な」


「伏せて!!」


「うぎゃっ!?」



無理矢理頭を押さえつけられて伏せられた。

その瞬間、頭上を一陣の風が横切る。

いや、違う……風というより『閃光』や『斬撃』に近い。

その証拠として、後ろにあった電柱に切り裂いたような傷跡が出来ている。



「チッ……凜太郎、降りなさい。……向こうに何かいる。」


「う、うっす。」



教授はジャケットから赤黒い数珠を取り出す。

それは相手が“人ではない”証。


斬撃が放たれた場所。

正面の暗がりには外灯がほのかな灯りでコンクリートの道路を照らす。

灯り無き暗闇に“その人物”はいた。

否、(かろ)うじて“人”の姿をしていたから“人物”として認識したが、次の瞬間その認識は覆された。



その人物の両腕は鋭い刃物であったからだ。


外灯の灯りが刃物特有の鍛え上げられた金属に反射する。

全身の毛が逆立つ様にかんじた。

俺が生粋の猫妖怪だったなら、猫娘の様に威嚇していただろう。



「凜太郎。私が足止めするから、クソ大家に連絡して頂戴。」


「は、はい。」



そう言い放つと教授は数珠を両手に巻き、複雑な印を結ぶ。

法力、と呼ばれるものだろうか。

微かに、教授の体に神々しい金色のオーラが見える。

見とれている場合じゃない、早く七辻さんに連絡をしないと……!

震える手で無理矢理 登録された七辻さんの携帯の番号をタッチする。


「私も運が悪かったわ。まさか噂の『通り魔』に会うなんてね。」


「あ、あれが通り魔……!?」


「アンタ、ニュースくらい見なさいよ。

被害者は刃物で切られた様な傷が特徴で~って、ニュースや新聞で滅茶苦茶 取り上げられてるわよ。」


「う……。」



残念な事に最近は学業とバイトでテレビを見る暇すらない。

それより早く電話に出てくれ七辻さん!!

次の瞬間。


「!」



斬撃



それを神々しい梵字で防ぐ封江教授。



斬撃は続く。

いや、増えている。



「チッ…………キリがねぇ。凜太郎、アンタだけでも逃げなさい。」


「で、でも!」


「アンタはまだ未熟者。喧嘩初心者に何が出来るっていうの?」



不敵に笑う封江教授。

姉御と呼びたいが、正確にはアニキだ。



そして残念な事に、この余裕の教授をキレさせたのは通り魔だった。



大体の斬撃は教授が法力で防いでいた。

大体は。




大体に入らない、一陣の斬撃が教授愛用スクーターを真っ二つに切断した。

豆腐が切れるようにスッパリと。

真っ二つにされたスクーターは大きな金属音をたてて倒れた。




両者の時間が一瞬止まる。



通り魔は次の斬撃のためか。

はたまた「あ、やっべー。やっちまった。」と思っているのか。



どちらにせよ通り魔の死亡は確定した。











「俺の愛車に………………………………………………………………………………何してくれとんじゃゴルァァァァァァ!!!!」




元・不良の頭、封江黎湘。

その筋での通り名『虎の黎湘』


空気読んで言わないっすけど、近所迷惑っす!家ないけど!

あと、逃げて通り魔の人(?)!!


幸い、住宅街からやや離れた道路のため、人への被害はない。



しかし、ブチギレた教授は止められない。止められる訳がない。



教授が印を結ぶと道路に魔法陣の様な円状の模様が現れたが、よく見ると曼荼羅(まんだら)らしい。

事もあろうか、曼荼羅の中央から金属バットを召喚した。



「エ●スカリバーかよ!?」


しかも禍々しいことに、金属バットには札やら梵字が書き込まれていた。

完全に若い頃の思い出の品をゴーストバスター用に改造してる。



金属バットを確り握り、刀の様に構えて勢い良く通り魔に向かって行く。



「ちょ、教授ー!!!」


「うおりゃぁぁぁ!!!!」



通り魔に勢い良く金属バットが振り下ろされた。

殺人(?)の瞬間は見たくなかったのか、思わず目を閉じた。


聞こえたのは頭蓋骨を粉砕するようなグロテスクな音ではなく。

何かが折れた様な軽い金属音だった。



そっと目を開ける。


見えたのは金属バットを振り下ろした姿勢の教授。


通り魔は教授の影になって見えなかったが、

すぐ側に落ちていた折れた刃物が全てを語っていた。

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