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降臨祭の前夜祭

ウォドリング国に入国してからしばらくして、降臨祭が始まった。

前夜祭は楽しく騒いで飲んで楽しみ、本祭は厳かな祈りの日となる。

つまりは日本で言うクリスマスイブとクリスマスみたいな祭りだ。

本祭は明日なので、今日はみんなで楽しむ事に。


「おぉ~、やってンねぇ」


「ええ、前夜祭は国中でそれを祝うのですわ」


「小さな村でも前夜祭の日は奮発するらしいと聞くからな」


花山曰く降臨祭はそれだけ特別なものなのだという。


それは西側諸国において神の存在は特別なものという事の証明でもある。


「料理美味しいなぁ、こういう料理もいいかも」


「はい、西側諸国の祝いの席の料理はまた違いますね」


「未成年はお酒ではなくぶどうジュースですわよ」


「流石に未成年に酒を飲ませたら何かと言われてしまうからな」


「はい、ですが私はどうすれば?」


サミヨは見た目こそ未成年だが、アンドロイドである。

なので酒を飲んでも当然酔わないし、ただ分解されるだけだ。


なので酒を飲んでいいのかどうか判断は難しくなる。

とはいえ外見年齢で引っ張った方が、何かと言われなさそうではある。


「んー、チーズンマー」


「花春さん、意外とたくさん食べますよね」


「まあ昔からどちらかというと食べる方とは言われる」


「その割にスタイルがいいのはなんなのでしょうか」


花春はどちらかというと食べる方ではあるらしい。

とはいえスタイルは普通にいい方なのは代謝がいいからなのか。


祭りの料理も片っ端から試しているようで、どれも美味しそうに食べている。


「でも降臨祭かぁ、神様って結局は民衆も都合よく解釈してる側面はあるよね」


「それは否定しませんわね、罪を犯した人が神にお許しくださいという事の愚かさですわ」


「でも原理主義者ほどその宗教の教典も教えも知らないっていうイメージがあるよ」


花春が言う原理主義者ほどその宗教の教典も教えも知らないというイメージ。

実際他国に行ってその宗教を押し付けてくる人は、そもそもその宗教について知らない。


結局は母国ですらまともに馴染めないはぐれ者が他国でも迷惑をかけているという事か。

花春は宗教観が日本で生きてた頃と変わらないので、一神教への偏見は割とある。


「結局は本当に敬虔な信徒の方がどこか緩いンだよね、そんなイメージがある」


「まあそれは分かる気はします、本当に経験な信徒は割と緩いんですよ」


「外国でまで自分の神様を押し付けない、それが出来るのが神様への理解でしょ」


「マスターは一神教に何か酷い事でもされたんですかね」


「酷い事はされてないけど、酷い事をしてるのを見た事はあるかな」


それはまあ日本における一神教の活動なんかを見ているからなのか。

それに加えて一神教の信徒だった政治家やカルト宗教が軒並みクソだったのもあるのか。


そうしたものを見てきているのが一神教への偏見に繋がっているのかもしれない。

その一方で割と緩い一神教の信徒との交流もあった事から、そういう考えなのかもしれない。


「しかし花春は一神教に対する考え方が割と独特なようではあるな」


「そうだねぇ、宗教なンてそんなガッチガチに縛られるもンじゃないと思うよ」


「少しぐらいなら緩い方がいいという事ですか?」


「豚肉を食べるのを禁止してる宗教の人が外国で豚肉食べてるのを見た事あるしね」


「まあ外国でまで自分の神様を押し付けるのはいい事ではないですよね」


イーリアも種族的な信仰として精霊信仰をしている。

精霊信仰は人間以外の種族の多くが信仰しているもののようではある。


まあ宗教は結局は他人に押し付けなければそれでいいという話でしかない。


「にしても料理美味しいねぇ、肉もたくさんあるしパンも美味しいし」


「はい、やっぱり降臨祭の料理は特別なんですね」


「ペリスさんもたくさん食べていますわね、微笑ましいですわ」


「…フリージアさんが姉の目になっていますね」


「フリージアと花山はこのメンバーのお姉さンだしねぇ」


年齢的にもフリージアと花山はメンバーの年長者である。

なので姉のような目で見るのもまあ仕方ないというか。


決して姉を名乗る不審者ではないので、メンバーのよきお姉さんだ。


特にペリスはメンバーの中では最年少なので、フリージアの視線も分かる。

貴族同士話なんかも通ずるのだろうとは思う。


ペリスはメンバーのマスコット的な存在なのかもしれない。


「それにしてもペリスさん、可愛いですわね」


「そうですか?なんか照れますね」


「フリージアもすっかりお姉さンだなぁ」


そんな微笑ましい視線を向けつつ料理をたくさん食べていく。

降臨祭の前夜祭はそんな騒いで飲んでの日だ。


神様についての偏見はあれども、それを否定するまでは行かないのは花春らしさか。

なんにせよ降臨祭の前夜祭で楽しそうにしている民衆を見ていると、祭りはいいものだと思う。


日本でも神社の祭りなんかは楽しみにしていた過去はある。


祭りの食べ物は味よりも雰囲気や情報を食べている感じはあるものではある。


「そういえば西側諸国って豚肉が主に食べられてる肉なのかな」


「そうですわね、平民は豚肉が多いですが貴族は牛肉が多いみたいですわ」


「だから降臨祭の肉料理は豚肉が多いのか、納得」


「そもそも牛はミルクを搾るのがメインの乳牛が多いみたいですよ?」


西側諸国では牛は乳牛が多く、牧場でも食肉用の牛より乳牛を多く育てているとか。

なので食肉用の牛を育てているのは貴族御用達だったりする。


平民は豚肉をよく食べ、貴族は牛肉を愛しているという事のようだ。


降臨祭の前夜祭の料理に豚肉が多い理由はそういう事なのか。


「でも牛乳も美味しいね、濃厚なンだけどあっさりしてて飲みやすいよ」


「花春さん、牛乳がお好きなんですね」


「うン、牛乳は好きかな、牛乳は昔からよく飲ンでたし」


花春は牛乳が好きなのだという。

転生前から牛乳は好きだったようで、家には常に牛乳のストックがあったらしい。


牛乳は花春にとっては毎日飲む飲み物でもある。


朝はもちろん牛乳だし、学校でも昼食に合わせる飲み物は牛乳だったのだとか。


「でも西側諸国の牛乳って美味しいね、こンな美味しい牛乳はじめて飲ンだよ」


「牛乳は鮮度が命ですからね、このお祭りのために搾りたてを持ってきたのかと」


「なるほど、でもこれならごくごく飲めるよ」


「でも飲み物も葡萄酒とぶどうジュース以外にも用意されてるんですね」


「子供も参加するからな、多少は種類を用意した方がいいのはあるだろう」


花春は西側諸国の牛乳の美味しさに感動しているようだ。

そんな降臨祭の前夜祭は夜通し通して行われた。


日が昇り始める頃には騒ぎも落ち着いてきたのか、みんなも本祭の日という意識に変わる。


たくさん食べた料理の皿なんかはどんどん片付けられていき、街の空気も一変する。


それは前夜祭が終わり、厳かな祈りの本祭の日になるということ。


花春達も信徒ではないものの、祈りは捧げておく事にした。


ちなみに本祭の日は前夜祭とは違い質素な食事になるのだという。

神への考え方とはそういうものなのだろう。


「本祭が終わったら次の街を目指そうか」


「ですわね、まずは首都を目指しますわよ」


「首都は次の街から荒野を進んだ先みたいですね」


「では明日にでも出発するか」


「はい、降臨祭も楽しかったですしね」


そうして次の目的地の街へは明日出発する事に決まる。

降臨祭の前夜祭はそれだけ楽しかったようだ。


神様への考え方は国が変われば変わるもの。


敬虔な信徒ほど寧ろ緩いというものなのかもしれない。

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