野盗から見える情勢
西側諸国に入国し、一夜を明かした花春達。
その翌日次の街を目指して出発する。
次の街に到着したらまずは冒険者クランに向かいクエストを探す。
内容はやはり大陸中央部とは毛色が違うようだ。
「西側の国はクエストの毛色も違うなぁ」
「そうですわね、冒険者に野盗の討伐を依頼するぐらいですもの」
「それだけ野盗も多いんですね」
西側諸国は街の中は治安がそれなりに安定しているが、外に出ればその治安は一変する。
それは国が弱者に対して厳しめの政策を取っているからこそなのか。
「このクエストにしようか、これなら割と簡単そうだし」
「なら私は共に行こう、この国の国内情勢も見ておきたいしな」
「なら私も一緒に行きます、少し気になりますから」
そんなわけでクエストを受理してもらい、クエストに向かう。
ちなみに今回のクエストは失踪人の捜索らしい。
街のパン屋で働いていたがある日突然来なくなったという。
「人探しかぁ、そンな簡単に見つかるかな」
「まあ探してみるしかなかろう、野盗に堕ちたとも思えんしな」
「そうですね、一応真っ当に働けば最低限の生活は保証される国ですし」
「とりあえずその探してる人の家に向かってみようか」
その人の家に向かってみる事にした花春達。
家を覗いてみると中に人が倒れていた。
恐らく持病でも持っていて、それが発症したものと思われる。
すぐに介抱し、様子を見る。
ちなみにマジックユーザーなどの冒険者が使える回復魔法は怪我しか治せない。
回復魔法はあくまでも怪我を治すものであり、病気は治せないのだ。
なお西側諸国は医療費も高めであり、任意保険に加入していないとかなりの金額を取られるという。
「あ、目が覚めましたか」
「あんた達は…俺を助けてくれたのか?」
「ああ、パン屋からの依頼でな、突然仕事に来なくなったから心配していたぞ」
「そうか、すまない、回復したらまた出勤出来るって伝えておいてくれ」
「それはそうとおじさン、持病でも持ってるの?」
そのおじさんはどうやら喘息持ちの様子。
それもあり突然倒れる事がたまにあるという。
医者には通っているものの、お金はやはり厳しいらしい。
「なるほど、喘息持ちかぁ、ならこの薬あげるよ、喘息ぐらいなら改善すると思うよ」
「は?あんた一体…」
「旅の薬師だよ、まあ即興で作った薬だから、同じ薬師の人でもないと再現は無理かな」
「…すまない、完全には治らないという事でいいのか?」
「うン、あくまでも症状を軽くするだけかな」
花春が渡した薬は症状を軽くする薬。
あとは医者にきちんと通えばかなり楽になるとのこと。
そのままパン屋に報告してクエストの報告も済ませる。
その一方でサミヨ達は野盗の討伐クエストを受けていたようで。
「野盗の討伐、なぜ野盗が生まれるのでしょうか」
「そうですわね、言うとするならどんなに仕事を用意しても全員が働くのは不可能なのですわ」
「病によって働けないとか、貧しい人は働きたくても雇ってくれないとかありますからね」
「そうですわね、雇用主の側も雇う人を選ぶ権利ぐらいはあるのですわ」
「その結果あぶれた人達が路頭に迷って野盗になる、ですか」
フリージアの言う事も決して間違いではない。
職を用意する事は出来ても、全ての人を働かせる事は出来ない。
なので西側諸国は公共事業を行い、それに対して職の斡旋をする形で雇用を生んでいる。
日本で言うブルーカラーは稼ぎもよく、仕事さえ長く続けられれば貧しい人もかなり稼げるとか。
その分肉体労働は過酷なので、下手したら二度と働けない怪我をする事もある。
それでも国の公共事業は大金を稼げるものの、大怪我のリスクも相応にあるのだ。
「へへっ、いい女だな、有り金置いていきな」
「…分かりやすい野盗ですわね、お金が欲しいならくれてやりますわ」
「…は?あー、そのなんだ」
「そのお金は差し上げますわ、その代わりあなたが野盗になった理由でも聞かせなさいな」
「その、なんだ…こっちは働こうとしたんだけどどこも雇ってくれなくて…」
野盗になった理由は真っ当に働こうとしたけど、どこも雇ってくれなかったかららしい。
公共事業も常に募集しているわけでもなく、定員もある。
その結果貧しくなり野盗になったのだと。
「…お金が全てとは言いませんが、お金は生きていくのには絶対必要ですものね」
「それなのに税金でたんまり取られるんだ、貧しくもなるさ」
「その気持ちは理解は出来ますけどね、結局は国が取り過ぎという話はあります」
「この金は本当にもらっていいのか?」
「その代わりと言ってはなんですが、仕事は選ばなければあるものですわよ」
フリージアも仕事は選り好みしなければあるものだという。
貴族としての言葉なのだろうが、人は汚い仕事はどうしても避けたくなるもの。
とはいえフリージアも中央部において野盗堕ちした奴隷などを見ているのである。
西側諸国は奴隷は近年違法になった。
その結果職にあぶれた者達もかなり生まれたという。
奴隷というのは働けない者達に衣食住を提供していた側面もあるのだ。
「仕事は選り好みしなければあるってのは分かる、でもそれは大体やばい仕事なんだよ」
「そうですわね、分かりやすく報酬が高い仕事は大体犯罪ですわよ」
「でも一日を生きていけるぐらいしか金をもらえない仕事は働けなくなったら終わりだろ」
「賃金の形態もだいぶ異なりますものね、人を募集しても定員はありますもの」
「一攫千金なんて夢だって分かってるけど、まとまった金が欲しいんだ、それは嘘じゃない」
野盗曰く分かりやすい高額報酬の仕事は犯罪だと分かっているらしい。
その一方でまとまった金が欲しいのもまた事実らしい。
働くにしても解雇されたらその時点で収入がなくなる。
仕事を複数掛け持ちするぐらいしないと貯蓄出来るぐらいのお金は得られないのだ。
「とりあえず素直に仕事を探せとは言いませんが、労働は体が資本ですものね」
「何かいい仕事とかないのか?」
「あなたのぎこちなさからして、まだ野盗になったばかりなのでは?」
「…あんた、貴族なのになんでそんな親身になってくれるんだ」
「一応冒険者をやっていますのよ、仕事を選べるほど高尚な身でもありませんもの」
とりあえず本当に困っているのなら冒険者になるのも選択肢だとだけ伝える。
命懸けの仕事ならブルーカラーでも冒険者でもリスクは変わらない。
ただ冒険者は成り上がりも狙えると言うだけの話だ。
「なら冒険者になるよ、いつかあんた達にお礼がしたいからさ」
「そうですか、ならその覚悟を尊重いたしますわよ」
「あともっとやばい野盗がこの近くの洞穴にいる、クエストならそいつらを討伐しておけ」
「分かりましたわ、ではさっさとお行きなさいな」
「じゃあな、変わり者の貴族様」
そのまま野盗は街に行き冒険者になったという。
クエストの内容である野盗討伐は近くの洞穴にいる集団をボコっておいた。
野盗から西側諸国の国内情勢も見えてくるものはある。
その日の夜はテントを張り次の街に行く準備をする事に。
「この国はお金稼ぎがまず大変なンだなぁ」
「公共事業における職の斡旋は積極的にされていますけどね」
「でも税金が高く、どうしてもお金が貯まりにくい感じではあるんですね」
「病気や怪我をしたら人生詰む、そんな感じのようですし」
「国が公共事業で職を斡旋しているだけマシなのかもしれないな」
そのまま話を続け明日はまた次の街に行く事で決まる。
西側諸国は基本的に税金が高く、病気や怪我をしたら人生詰む感じらしい。
その一方で職こそあれどもまとまった大金は手に入れにくい構造になっているようだ。
野盗はそんな国の構造が生んでいるのかもしれない。




