空の旅のち西側諸国
砂漠の国から西側諸国に向かう事にした花春達。
まずは航空チケット代をクエストや換金で確保した。
それにより人数分のチケットは購入出来た。
しばらくは空の旅となり西側諸国の国境ターミナルへと向かう。
「空の旅たーのしー、見ろ!ゴミが人のようだ!」
「花春さん、気分が高揚していますわね」
「海路の船はまともに話せないぐらい酔うのに、空路の飛空艇は元気そのものですね」
花春は恐らく揺れに弱い、つまり三半規管が弱いのだろう。
海の船ではぐったりと酔うのに、空の飛空艇ではそんな様子は全くない。
「飛空艇の中には長い旅に合わせて軽食や飲み物なんかも売っているぞ」
「あたしの世界の飛行機とはまたずいぶン違うなぁ、なンか新鮮だわ」
花山に誘われて軽食や飲み物の店を見に行く。
空の旅になるのでそうしたものは出発前に仕入れてから飛び立つらしい。
なお空の旅は魔の国に行く貴重な手段の一つでもあるらしい。
「こういうドーナツとかも美味しいよね、空の旅だとちょうどいいかも」
「マスター、意外と食べますよね、それなのに太らないのはなぜなのか」
「代謝がいいとは言われた事はある、だから結構たくさン食べるんだよね」
「しかし海と空でこうも体調が違うというのは、花春さんの体質なんでしょうか」
花春は恐らく三半規管が弱いという事で確定だと思われる。
船に限らず揺れる乗り物全般で酔っていたという話らしい。
なのでタクシーや長距離移動の鉄道などでも見事に酔っていた。
転生前はそれもあり旅行に行くとまず吐いていたという事のようで。
空の旅はそうした揺れがないため、酔わないのだと思われる。
「それにしても花春さん、空だと全然酔わないですね」
「不思議だよねぇ、体質なのかな、まあ三半規管が弱いと言われた事はあるけど」
「それにしてもイーリアは自前の翼があるのに、乗り物を使うよね」
「自前の翼があるとはいっても長距離を飛ぶのは体力を使うんですからね?」
「だから人間の乗り物をきちんと使っていると」
イーリア曰く長距離飛行は体力が必要になるという。
なので人間の乗り物はありがたく使わせてもらっているという。
また砂嵐などがある環境を飛ぶのはリスクもあるので、使えるものは使うという事らしい。
有翼人は鳥に比べると人間に近い感じなのだとか。
「それにしても空の旅も楽しいね、海と違って酔わないから気が楽だよ」
「マスター、揺れる乗り物全般に弱いのでは?」
「海の船であれだけ酔ってたって事は、恐らく揺れに対して凄く弱いんだと思いますし」
「ペリスの言う通りだろうな、花春は恐らくは揺れに弱いのだろう」
花春は三半規管が貧弱!貧弱ゥ!なので海の船なんかはそれこそ天敵なのだろう。
空の旅で酔わずに元気なのは揺れがないから。
そんな空の旅も砂漠の国を出発してからしばらく時間が経つ。
そんなこんなしているうちに西側諸国への国境ターミナルに到着する。
そこから西側諸国の玄関口となるメスドラーマ国へ入国する事となる。
そこからは徒歩や馬車などを乗り継ぎ他の国に移動していく事になる。
また西側の国は治安が意外と悪いようで、大陸中央部に比べると野盗なども多く出るとか。
中央部はそもそも過酷な環境が多いからなのか、野盗が少なかったのかもしれない。
「ここが西側諸国のターミナルか」
「ああ、ここから玄関口になる国であるメスドラーマ国に入国する事になる」
「そこからまた徒歩や馬車で他の国に行く事も出来ますわ」
「なるほど、ならまずはその国を見て回ろうか」
「ええ、ではまずメスドラーマ国の首都を目指しますか」
メスドラーマ国の首都の名前はラアンベリという名前らしい。
大陸中央部は国に名前はなく、環境がそのまま国の名前になっていた。
西側諸国の国の名前は国の建国の祖の名前がつけられている事が多いという。
首都はそんな建国の祖が最初に築城した土地がそのまま首都になっている感じらしい。
ちなみにその首都の名前も建国の祖がつけた名前らしい。
西側諸国は王政の国が多く、王族はその血統を何よりも重んじる傾向にあるのだとか。
「ここがメスドラーマ国の玄関口か」
「隣の街までは徒歩でも馬車でもいいですけど、治安が悪い傾向にあって野盗も出ますわよ」
「野盗、政治が安定してないとかなのかな」
「政治自体は割と安定しているらしい、ただ弱者には厳しい傾向にあるらしいな」
「それが結果として野盗が多い理由になってるのか」
「犯罪者になる理由も理解は出来ます、でも無関係の人を苦しめるなら惨たらしく死ぬべきです」
ペリスも犯罪者、野盗が生まれる理由にも理解は示す。
だが貴族としてそうした人達に慈悲をかけてはいけないのもまた事実。
それでも貴族は民の暮らしを守りそれを維持する役目がある。
ペリスはこの西側諸国の歪さを早々に感じ取っているようだ。
弱き者を守るのは貴族の務め、だが罪を犯したのならそれはしっかりと裁かねばならない。
ペリスが思う貴族とは民を守る一方で弱者を特権階級扱いしてはいけないという事。
これからこの国で清貧という言葉がどれだけの虚言なのかを知る事になるのか。
「それにしても街はきちンと整備されてるね」
「現実を知りたいなら路地裏に行ってみればいいですわ、命の保証はしませんけど」
「フリージアは西側諸国にも来た事があるンだろうね」
「酷なようだが物乞いには決して何も与えるな、仲間を呼ばれるからな」
「政治自体は安定してる、でもそこには歪さがあるって事なんですね」
政治は弱者には厳しい傾向にあるという西側諸国。
実際過去の歴史において農民による一揆や軍部によるクーデターが起きた事もある。
それらを鎮圧した際に多くの血が流れてきた事も珍しくない。
この国の歴史は多くの屍の上に築かれているのだと。
「それにしても人の見る目もどこか刺々しさを感じるな」
「西側諸国は東方の人間や亜人種への差別が根強いからな」
「花山やイーリアがいるからなのか」
「ただ建前ぐらいは流石に弁えていますわよ、そうでないとやっていけませんもの」
「まああまりいい旅にはならなさそうかなぁ、一応覚悟はしておくか」
花山曰く西側諸国は東方の人間や亜人種への差別が根強いという。
花春が女神を名乗る声に対して注文した内容があるのは世界の一部という事か。
世界は広いので、花春の注文通りにならない国もまああるのだろう。
「…思ってるより扱いは悪くないな、少しは価値観が変わったのか」
「まあ時代は変わりますものね、今は東方の文化が流行のようですわ」
「なんと、ただ染み付いたものは簡単には消せないと思うが」
「でも文化に触れる事で価値観が変わるならそれはいい事だと思いますよ」
ペリスもその辺はいい事だとは思っている様子。
人は変わろうと思えば変われる生き物。
西側諸国は今は東方の文化ブームが巻き起こっている様子。
それもあり昔に比べたら差別感情はマシになっているようだ。
「他の街に行くのは明日にして、今日はここで休もうか」
「そうだな、適当な広場でテントを張るか」
とりあえず街の適当な広場でテントを張って今日は休む事に。
冒険者クランには次の街に移動してから行く事にした。
「そういえば西側諸国にも冒険者クランはあるンだよね?」
「ああ、あるな、ただ依頼の内容や毛色は中央部に比べるとかなり変わるだろう」
「まあ国の仕組みそのものが中央部の国とは違うわけですからね」
「ならまた違うタイプのクエストも楽しませてもらおうかな」
「西側諸国の現実も見ないわけにはいかないでしょうしね」
西側諸国の現実はこの先嫌でも見る事になる。
差別感情は昔に比べればマシになっているのは確か。
とはいえ西側諸国は思っているほど綺麗な国ではない。
そして先日聞いた一つの国が財政破綻したという話もまた思い出していた。




