おまけ・建国祭にて
このお話の為に登場したといっても過言ではないジャン君でした。
話の流れ的に上手く本編に入らなかったんで、おまけとして掲載しておきます。
「本当に良かったの?」
いつもと違ってそれなりに平民ぽい服を着こんだセイとテウにもう何度目になるかわからない確認をする。
「こんな風に建国祭を過ごすのは初めてだ!」
「少しでもフィーのご家族の手伝いが出来れば本望だよ」
わかり易いテウもすましたセイもどちらも楽しそうなのが感じられるからもうこれ以上心配したり確認したいするのは止めることにする。
今日はこの国の建国祭。食堂を営む我が家では毎年この日はお店の前にも屋台を出したりして、1年で1番の稼ぎ時だ。だから一家総出、だけでは手が足りなくて祖父母の他にもアルバイトを雇ったりしてるんだけど今年からは私は参加するのムリかもなって思ってたんだけど、ダメもとでテウに相談してみた。
その結果がなんと私の参加オッケーのみならず、なぜか相談したテウの他にセイまでも手伝いをかってでてくれるという予想外の事態になっってる。
「じゃあそこにある台をここに並べてくれる?」
もうこうなったら立ってるものは貴族でも使えってな訳でセイとテウにどんどん労働を要求する事にした。意外な事に二人とも体を動かすことに抵抗もないみたいだし、私のぞんざいな指示に従ってる様子を見て段々マリーやミリーも遠慮が抜けて来て重いものを運ぶのを頼んだりしてた。
お昼少し前には、店頭で前世でいう所のかき氷とドリンクの販売準備が整った。
氷の魔法が使えるミリーのかき氷は絶品だから毎年結構な売れ行きなんだけど、今年は看板娘ならぬ看板子息がいるから女の子の行列は必至だとは思ったけど予想以上だった。
「フィー、お会計変わるから君も少し休憩してお昼を食べておいで」
テウと交代してお昼を食べに行ってたセイに声をかけられて休憩に入ろうと後ろを向いたら久しぶりの顔がそこにいた。
「ジャン、いつから居たの?」
「さっき、厨房にミルクと卵届けに来たとこ。それにしてもジョーは今年はいないのかと思ってた」
「ジョー?」
「ああ、ジャンだけ私の事をそう呼ぶのよ。ご近所の運送屋さんの息子で、まあ幼なじみって奴かな」
不審げにこちらを見るセイとテウにジャンを紹介する。
「ひょっとしてその二人ってお貴族様?」
不躾な視線を向けるジャンの頭を軽くひっぱたく。
「そうだよ。だからもうちょっとお行儀良くしなさいよ!」
「辛い目にあったりしてないんだよな?」
「大丈夫。二人ともあんたと違って紳士だし」
ふーんと言いながらも不満げなジャンにじゃあねと声をかけてお昼を食べに奥へと向かう。
「なあ後で一緒に屋台回らないか?」
背後からのジャンのお誘いには、今日は無理とだけ答えておいた。
結局売れすぎてミリーの魔力が持たなくなり予定よりもかなり早めにかき氷は店じまいになった。
飲み物を冷やす氷はまだ残ってるのでドリンク販売のみに移行したんだけど、なんと護衛に来ていた騎士の一人を留守番に置いてセイとテウにお祭りの案内をする事になった。
元々彼らを1日中働かせるわけにはいかないと思ってたけど、家族から二人にお祭りを案内するようにといって追い出されたのだ。ドリンク販売はお祖父ちゃんとお祖母ちゃんが交代で手伝うと言ってくれてたんだけど力仕事があるといけないからとセイが護衛騎士に手伝いを命じてくれてた。
いやそもそも護衛に来てるのに街歩きの時に別行動はダメでしょうと言ったんだけど、二人とも剣も魔法もそれなりに使えるしテウの方の護衛もいるから大丈夫と言われてしまった。
バイト代、両親は貴族の子息にバイト代はどうかと思ってたみたいだけど、逆に屋台で使うような小銭とか持ってないから、祭り巡りの軍資金として貰って来た、を使ってまずは屋台で興味を示したものを色々買食いする。
前世だったらたこ焼きとか買いたいところなんだけどそれはないから代わりにイカ焼きとか串焼きとかを彼らに勧める。
「これ美味いな」
「こんな風に食べながら歩くのは初めてだよ」
テウもセイも喜んで食べてるのが嬉しい。
「そう言えば立ちっぱなしだったし、あそこのカフェで座って何かのみましょうか」
今日だけのオープンカフェでフレッシュジュースを飲んでひと息つくと徐々に疲労感を感じ始めた。
「そう言えばさっき君の幼なじみの彼がジョーって呼んでたけど、他にも違う呼び方されたりするの?」
「いえ、他の人はみんなフィーって呼ぶかな」
「じゃあ、僕はこれから君の事をフィーネって呼んでもいいかな?こちらの方が君の雰囲気にあうと思うんだけど」
微笑むセイを見ながら心の中で「呼び名変更イベ来たーー!」って叫んでた。いや、前世プレイした乙女ゲー(エリュストではない)で一番萌えたのがこの名前の呼び方変更のイベだったんだよね。これをボイス付きで聴けた時にデフォルトネームでプレイしてて良かったって思ったもの。
そんな事を心の中で考えながらセイに向かってコクコクと頷いていたらテウがずいっと身を乗り出してきた。
「だったら俺はセフィにする。こっちの方が可愛いだろ?いいよな、セフィ」
やっぱり攻略対象者はニックネームのつけ方のセンスもいいよね。
「フィーなんて可愛いあだな似合わないとかいうジャンに今の二人の言葉聞かせてあげたいよ」
そう言った私の言葉に二人は満足そうに笑ってた。




