決着の先送り
セイとテウと3人で話すのは随分久しぶりだ。
学園から帰宅したセイに呼ばれてサロンに来てみればテウもいた訳だけど、二人の様子を見るにちょっとしたおしゃべりをしようって感じではなさそうだ。背筋が伸びるような心持で令嬢らしく椅子に腰かける。
「セフィ、侯爵家の講師からも入学問題なしのお墨付きをもらったそうだな、おめでとう」
「ありがとう、テウ」
「ねえフィーネ、やっぱり僕の婚約者になる決心はつかない?」
「俺の婚約者に選んでやるからうちに帰ろう!」
「ええと、ごめんなさい」
セイの言葉にかぶせるようにテウが言った言葉がいやにオレ様っぽくてちょっとビックリして謝ってしまった。
それに手を挙げてやれやれって顔をするセイも、深いため息をつくテウも本気で言ってた訳ではなくて、勢い任せに頷いてくれたらラッキーって感じだったのかもしれない。
上げた手をおろしたセイが穏やかな笑みを見せて改めて話しかける。
「フィーネに提案があるんだけど聞いてくれる?」
「提案?」
「学園入学までもうあまり時間がないけど、まだセフィの中でどちらを婚約者にするか結論が出てないって事であってるよな?」
「うん、あってる」
「以前にも話したと思うけど王立学園へ入学するのはほとんどが貴族なんだけど、平民にも関わらず入学が許される子は色々な意味で注目を集めるんだ。そのせいでフィーネが危険な目に遭ったりするのはなんとしても防ぎたいって言うのが僕とテウの一致した意見なんだよ」
「だから、婚約はともかくとしてどちらかの家の養子になる事でセフィの安全が図れるならそうすべきじゃないかってセイと相談したんだ」
「元々、婚約者候補から漏れた家の養子に入るという取り決めだったんだけど、婚約者に確定してしまうのは止めて婚約者候補位にとどめておくなら君も許容できるんじゃないかって思ったんだけどどうかな?」
交互に語り掛けるセイとテウの顔を見比べながら今の話を頭の中で必死に検証する。
「でもそれって結局どちらかを選ばないといけないんだよね?」
「そうだな。それでセフィが自分で選べないというなら俺たちで勝手に決めてしまうのもありなんじゃないか?」
もう本当に自分じゃあ決められないと思ってたから決めてくれるならそれでもいいか、とは思うけど流されちゃってもいいのかなぁ。そんな気持ちでつい二人の顔を交互に見る。
「婚約者候補になった方は公式な場所でのエスコートを担当。候補から外れた方は養子として迎え入れて同じ家に暮らすけど義兄妹として他の人から疑問を抱かれないよう接する。そういう条件でどちらになるかは運に任せて文句は言わないという約束をテウと交わしたんだ」
「その提案に乗るならセフィはこの紙に好きなように線を引いてくれ」
そう言ってテウが差し出したのは片側にセイとテウの名前が、反対側には婚約者候補と義兄弟と書いてあるあみだくじだった。
確かにこれは完全に運任せだ。どちらになっても恨みっこなしっていう約束は守ってくれる二人だと信頼も出来る。これで決めてしまえばここの所の胃が痛くなるような、逃げ出したくなるような気持ちでいた事に決着がつく。そう思ったらもうあみだに線を引くためにペンを握っていた。




