閑話・セイの企み
「こんなところに呼び出すなんてセフィに何かあったのか?」
学園の一室に呼び出したテウは入ってくるなリそう聞いてくる。
「あった、という訳ではないけど、話したいことは彼女の事だよ」
僕が僕だけの呼び方をフィーネに定めたようにテウは彼女の事をセフィと呼んでいる。フィーネ自身にも僕の事を彼女だけの呼び方で呼んでほしいと思ったけれど彼女は相変わらずセイと呼ぶし、そしてテウの事もテウと呼んでいる。その事からも僕らはどちらも彼女の特別になれていないというのはお互いわかってるはずだ。
「先日フィーネから王宮勤めの魔法使いの収入について相談されたんだけどテウも相談された事あるの?」
「いやないけど、まさかうちにも侯爵家にも身を寄せることなくやってくことに決めたのか?」
「まだ決定はしてないね。どうやら彼女を取り込むために贅沢に慣れさせるのには成功したようなんだけど、彼女はそれを自分で稼いで何とかできないか、なんて方向に頑張ろうとしてるみたいでさ」
「それはまたなんというかセフィらしい」
「このままフィーネに自立されては困ると思わない?」
「確かに。俺たちは学年も違うし、すっかりあか抜けて貴族らしい所作も身について来たのにしっかりとした後ろ盾のない状態でセフィを学園に通わせるのは絶対まずい!」
「今更他の奴に搔っ攫われたりしたら目も当てられないからね」
「だよな」
本来は一番のライバルだけどそれ以外の男を排除するためならテウと手を組むのも致し方ない。
「もういっそくじ引きか何かでどちらかの婚約者に決めてしまう?」
僕の提案にテウは眉間にしわを寄せて軽く睨んでくる。
「ただの冗談で言ってる訳でもなさそうだが、あまりにセフィの気持ちを無視し過ぎだろ?」
「まあそうなんだけど、最近の彼女を見てると誰かが決めてしまえばそれに従っちゃうんじゃないのかなって思えて来て」
一瞬考え込む様子を見せたテウが口を開く。
「確かにその意見は一理あるかもしれないな」
「何か心当たりがあるの?」
「少し前にさ、いっそ誰か決めてくれないかなあって呟いてるのが聞こえて来たんだよ。何をってのは言ってなかったけど多分それかなってさ」
テウの言葉が自分の考えを裏付けてくれる。
「フィーネに、私なんかがセイとテウのどちらかを選ぶなんて恐れ多い、って言われてしまったんだよ。だったらもう僕にしちゃえばいいのにね」
「いやいや、それなら俺がセフィを選んでやるって言えばいいのか?」
「随分上から来たね」
からかってやればムッとした顔で見てくるテウは僕から見ても将来を共にするのになんの問題もない良い男だ。もちろん自分だって彼に負けてるとは思わないけどテウ程真っ直ぐな気性でない事はわかってる。
「いっそ既成事実でも作るかな」
その言葉を言い終えるかどうかのタイミングでグイっとテウに襟元を掴まれる。
「セフィの気持ちを無視してそんな事したら許さないぞ!」
「じゃあ君ならどうするのさ?」
僕の言葉に睨みつけていた瞳を徐々に下げていくテウにも良い案なんてないのはわかってる。あればとっくに実践してるはずなんだから。
「フィーネはこうも言ってたんだよね。まだ結婚とかって全然想像もつかないっていうか身近に考えられない、って。だからもう一度期限を延長するべきだと思うんだけど、さっきも言った通り彼女をただの魔力の強い平民として学園に通わせるのは危険すぎる」
これにはテウも同意したらしく僕を掴んでいた手を離して頷いてくれた。
「ところで君の家の言い伝えではドラゴンとの戦いは彼女と二人ですることになってるの?」
子どもの頃に自分でドラゴンの話をしたのを忘れていたらしいテウが、僕からの質問に最初フィーネが勝手にしゃべったのかと驚いてたが、出会って間もない頃に聞いていたことを伝えると頭を抱えてたが諦めたように話し出した。
「どうなんだろうな。特に他の人が参加するともしないとも聞いたことはないが…そう聞いて来るって事はセイのところはどうなんだ?」
「うちの方では戦いは3人で行う事になってる。その3人目が君なんじゃないかと僕は思ってて、だから無理に既成事実を作ったりしてないんだよ」
一瞬睨んだものの溜息を1つついたテウは、お前の先祖に感謝だな、と呟いた。
「ここまで手の内を明かした上で相談があるんだけど…」
さて、ここからが今日テウを呼び出した本題だ。彼はこの提案に乗ってくれるかな、いや乗ってもらわなくては。




