優柔不断でダメな奴
あれから両家を行き来し気づけば半年近く経過していた。
各講師の先生たちからは今すぐ学園に入学しても問題ないレベルに達していると太鼓判を押してもらえるくらいには頑張って勉強して来ただけあってぱっと見には貴族のご令嬢に見えるはず。
苦手だったダンスや魔法のコントロールも平均レベルには達してるらしい。らしいというのは何しろ比較対象のセイとテウがトップクラスのレベルだから、自分では自信が持てるレベルじゃないんだけどそこは先生の言葉を信じるしかない。
そうなってくると問題は婚約者選びなんだけど、これについては相変わらず答えが出せないでいた。
貴族の屋敷での贅沢な暮らしに体が馴染むほど元の平民の生活に戻れるのかは不安になるけど、だからと言って適当にどちらかを選ぶのも間違ってるって思うし。
「何を悩んでるの?フィーネ」
他の人とは違う呼び方をしたいと言って、セイが私の事をフィーネと呼ぶようになたのも数か月前だっけ。そんな事を思いながら見上げた先には初めて会った頃より少し男らしい顔つきになったセイがこちらをじっと見てた。
「もしわかれば教えて欲しいんだけど、王宮勤めの魔法使いになったらお給金が毎月貰えたりするのかな?それってどの位貰えるんだろう。もちろん侯爵家や伯爵家のような暮らしは無理だろうけど、平民暮らしよりはもう少し贅沢しても平気なのかなぁ?」
そんな私の質問にセイが不穏な顔をしてきて一瞬で後悔する。
「さあどうだろう。僕の身近にはそういう人がいないからね。次兄のクヴァルは王宮勤めとは言っても騎士だしね」
「そっか。ごめんなさい、変な事聞いて」
自分の勘に従ってさっさと質問を終わりにする。これ食い下がったら絶対ダメな奴。
「ところでそろそろ僕との婚約を承諾してくれる気にはなったのかな?」
軽いノリで冗談めかして聞いて来るけど獲物を狙う狩人のような目つきは冗談で返すのをためらうのには十分だ。
「真面目な話ね、あなたたちのどちらか一人と先に出会ってたらきっとその人を好きになってたと思う。でも、二人一緒に出会って、しかも私に選択権を委ねられるのは本当に困る。だってどっちもいい男で優しいし私でもいいって、私の事好きって言ってくれるんだよ?そんな簡単に一人選べないよ!」
ずっと考えていた事をとうとうぶつけてしまった。
「僕とテウはタイプも全然違うと思うし、条件だって結構違うと思うんだけどな」
「条件と言っても私からしたらどちらも貴族のご子息で能力も高くて見た目も最高の部類だしそんなに違いなんてあるようには思えないけどな」
「僕は侯爵家、テウは伯爵家の子息で家格でいったら僕の方が上だけど、テウは嫡男、僕は三男で領地も継げる跡取りのテウの方を配偶者に望む人も多いと思う。そのかわり名家の切り盛りが求められるテウの妻より家を出る僕の方が気楽には過ごせると思うし、魔法使いとしての仕事も続けられるんじゃないかな。まあ領地もいずれは分けて貰えるはずだけどね」
「随分具体的な説明ありがとう。でも、そもそもまだ結婚とかって全然想像もつかないっていうか身近に考えられないの。恋愛と違って結婚ってそんな簡単に止めたり出来ない訳だし」
「じゃあ婚約じゃなくて恋人ってだけなら選べるの?」
「それも結局最初に言った通りよ。私なんかがセイとテウのどちらかを選ぶなんて恐れ多いって思っちゃう」
両手を上げてお手上げポーズをする私に何か言いたげにしながらもその日セイはそれ以上追及することはしないでおいてくれた。こういう優しさにつけこんで優柔不断な態度で逃げ回ってる自覚はあって益々私なんかじゃ釣り合わないと思ってしまうのは止められなかった。




