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「おかえりなさい!」
「ただいま」
伯爵家のエントランスでベルがにこやかに迎えてくれるのに合わせてうっかり返事をしちゃったけれど、ただいまは違うんじゃないの?と思ったのが顔に出てたらしい。
「もうここはフィーの家みたいなものだから!」
きっぱりと言うベルの横でレオナが頷いてた。
因みにレオナは今回から正式に私付きメイドになったらしい。切れ物で痒いところに手が届くお姉さんだから私としては助かるけど、こんな仕事出来そうな人を私専属にしちゃって勿体なくないのかな?そんな私の疑問にはテウが答えてくれた。
「レオナは母上の処で鍛えられてたんだけど、今回の君の専属業務が卒業試験みたいなものなんだ」
「え?それって何か私がやらかすとレオナに迷惑かかったりするって事?」
「いや、むしろフィーが何かしそうになったのをどれくらいフォロー出来るかでポイント上がるんだから迷惑じゃあないだろ」
「はい。むしろ色々やらかして頂く方がポイント稼ぐチャンスになります」
特に表情を変えることなくそんな事をさらっと行ってくるレオナを頼もしく思えばいいのか、呆れたらいいのか。まあ私が気にしないように言ってくれてる部分もあるんだと思うんで笑って聞き流しておくことにする。
「それではジョセフィーヌ様、まずはお部屋でお着替えをなさってその後はサロンでお坊ちゃまやお嬢様とお茶の時間になります」
レオナに促されて部屋へと向かう背に、ベルが後ほどサロンでと声をかけてくれた。背を向けたまま手をひらひらと上げて答えたら、咎めるようなレオナの視線にはっと気づく。仮にも伯爵令嬢に対してこれはダメなヤツ。慌てて振り返ったらビックリした顔のテウとベルが私の顔を見て笑い出した。
「俺たちしかいない場所なら別に構わないが他所では気を付けろ」
「あんな短期間ですっかり令嬢らしさが板についたと思ってたけど、そうでもなかったってわかって安心したわ。出来過ぎる義姉のせいで肩身が狭くなりそうって心配してましたの」
「そんな事あるはずないし!以後気を付けます!失礼しました」
「慌てなくても大丈夫だから。サロンで待ってる」
本当に気にしてなさそうな二人に安心したけど、これが貴族らしい駆け引きで表情に出さないようにしてるだけ、なんて事になったら多分貴族社会で生きてくのは私には無理だと思う。
案内された部屋は前回と同じだけどなんとなく雰囲気が変わってた。そう思って周りを見回すと壁に絵がかけてあったり、カーテンがグリーンを基調とした甘すぎない小花模様になってたり少しだけ女の子らしい部屋にしてあって、なんだか心が弾んだ。
「ジョセフィーヌ様、お衣装はどんな感じにいたしましょうか?」
「えっと、どんなのあったっけ?」
そう言いながらクローゼットの方へ向かうと、ドアを開けてレオナが案内してくれる。
前回購入した10着ほどのドレスから選ぶつもりで入った私の目に飛び込んできたのは数十着のドレスだった。
「え?なんかめちゃくちゃ増えてるんだけど、どうして?」
「前回採寸を行いましたのでそれに合わせて何着かこれからの季節のものもオーダーしましたので」
さらっと告げるレオナを見つめてしまったけど、貴族の方々にとっては普通の事なのかしら?そんな私の気持ちにはお構いなしでどれを着るかの選択を迫ってくるレオナに及び腰になる。
結局このタイミングで着るのに向いてるドレスを3着ほどレオナに選んでもらって、その中からオリーブカラーのおとなしめのドレスを着用する事にしてサロンへと向かった。




