逃げられない
その日は伯爵夫人プロデュースのオーダードレスに身を包み本気メイクで武装決めこみ両家の方々と対峙した。
まず口火を切ったのはウェルドリッジ伯爵。
「我が家での2週間はいかがだったかな。満足できたならこのまま我が家で教育を受けて貰いたいものだが」
「すっかりドレスが似合うようになって、もう立派な淑女ですね。あなたが我が家へ戻って来てくれるのを講師陣も使用人たちも心待ちにしていますよ。もちろん我が家族もね」
侯爵様のソフトな話しぶりに思わず笑顔が浮かぶけど、優しいだけじゃなくて手のひらで転がされてる様な侮れない感あるんだよね。
「どちらの講師陣も素晴らしかったのでどちらか一方を選ぶなんて出来ません。王立学園への入学に必要な知識を学ぶだけならお屋敷に定期的に通うのではダメでしょうか?出来ることならこれからも色々師事したいと思ってまして両家もしくは先生のお宅に通いますから教えて頂くことは出来ませんか」
昨晩寝落ちるまでうんうん考えた結果出した答えがこれだ。どちらも選ばない。そしてセイとテウについては選択条件から除外する。だって二人とも良い子だからこんな偽物掴ませられないよ。
「我が息子はお眼鏡にかないませんでしたか?」
侯爵様が珍しくすばり聞いてくるので慌てて手を振る。
「いえ、お二人とも私にはもったいないというか恐れ多いというか…。それに私にはお二人と一緒に戦うような力もありませんしそういうのは怖くて無理です」
両家の話はお互いには知らないみたいなのでドラゴンとかのキーワードは濁しておく。ゲームの中ならともかく実際にドラゴンと対峙するのなんてご遠慮したい。多分このままいけばその可能性は薄いんだろうけど、彼らから期待外れの視線を浴びるのは耐えられない。期待を裏切られてがっかりしたあげく仕方なく結婚なんてされても全然うれしくないどころかむしろ辛い、針の筵ってやつだと思う。
こんな事になったのはひとえにあなたたちに曖昧な予言を残した方々のせいだから!と言ってやりたいけど、どちらの家もその方の事は大事にしているのをひしひしと感じるから下手に貶せないんだよね。
そう考えながら集まった方々の顔を見回すと何故か皆さんが面白そうな顔をしてるように見えるんだけどなぜ?予想外の反応に何かおかしなことを言ったのかと急に不安になる。
今までの会話を思い出してるとセイが声をあげた。
「やはり人生の重大事をこんな短いお試し期間で決めろと言うのが乱暴だったのではないでしょうか」
それにテウまで同調する。
「確かに。期間が短すぎたのはこちらの落ち度ですし、このまま見極められるまでまずは我が家での滞在を延ばすのはいかがですか?」
「いや、期間を延ばすにしてもまずはご両親へ話を通す必要もあるでしょうし、一旦は自宅へお返しする約束ですよ」
続く侯爵様の言葉に思わずうんうんと頷く。
「では、今日はフィーネ嬢は一旦家に送り届けるとして今後の予定なのですが」
と伯爵様が続けるのを、まるでここまでのやり取りが決まってたかの様に感じるんだけど、私以外の人は誰も違和感を感じてないようで、いやむしろ私だけが蚊帳の外でドッキリしかけられてるみたい。
知らず頬がひくついている間に、学園への入学前まで私が両家に交互にご厄介になる事が決まってしまった。貴族の面々に決定と言われて平民の小娘に反対など出来るはずがないのだから…。
えーー、短編で書いてた辺りまでやっと到達したんですが、まさかの32話?!
見切り発車怖い 汗
ここをオチにしようかとも思ったけどテウ視点も書きたい気になって来たのでもう少し続けるつもりです。よろしければお付き合いください。




