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スコーンを満喫してる間にテウが舟遊びするための準備に少し席を外してくれたから、これ幸いとセイにも侯爵家側の事情を聞いてみる。
「なんで私の事を婚約者候補にしようなんて侯爵様が思ったのか知ってるの?」
少し考えるような顔をしたセイが徐に話し始めた。
「大叔母さま、祖父の妹はうちの父と5つ位しか年が違わないんだけど、僕の名付け親なんだよ。彼女が、僕の名前を決めたのは実は僕が生まれるより前の事で、一種の予言みたいなものだったんだけどね。その時に生まれた子がドラゴンキラーになったらどうする?って楽しそうに言ったそうなんだ。でもそれには可愛い女の子の手助けが必要だから、家格が合わなくても気にしちゃダメとも言ってた」
やっぱりこちらも予言者的な人がいるらしい。
「そもそもテウと幼馴染みとして早くから親しくするようになったのも彼女の進言があったからなんだ。と言う訳で、我が家では君との事は運命だと思ってる」
「その大叔母さまは予言者とかなの?」
「予言者とは聞いてないな。ただ、君の好きなスコーンを最初に作ったのも彼女なんだけど、不思議な知識を持っている変わった方だったそうだ」
「知識?セイはその方に会ったことはあるの?」
「物心つく前に家を出られたからね、会ったとは言えないかな」
「家を出たって事はどちらかに嫁がれたのかしら?」
こちらの方ならひょっとして会って話すことも出来るのかもと期待したんだけどそう簡単ではなかった。
「嫁いだといえばそうなんだが、冒険者と結婚して各地を旅するために家を出てそれっきりなんだ」
「それって行方不明って事?」
「まあそうかな。最初の頃は色んな噂が届いてたんでどこの国にいるかわかってたんだけど、他国の戦争のせいで情報が滞りがちになってしまってね」
「そっか、早く無事が確認出来るといいね。出来ればその方に会ってみたいな」
スコーンの発明者ってだけでも転生者疑惑あるんだけど生れる前からセイの名前決めてる辺り高確率でゲームも知ってる人だと思うんだよね。ただその割にヒロインについての情報がやっぱりうっすいのは何故なの?
「ねえ、その方が言ってる可愛い女の子が私だと思ってるの?」
「可能性は高いんじゃないかな。君の魔力の高さなら僕と一緒に戦う事は充分出来ると思うんだよね」
そこまで話したところで舟の準備が出来たらしく、テウが呼びに来た。
「フィーは舟に乗ったことはあるのか?」
一瞬頷きそうになったけど今世では乗った事なかったことに気づいて慌てて首を振る。
「初めてだから楽しみ」
「落ちないように僕にずっと捕まっててね」
「準備したのはうちなんだから、それは俺の役割だろ」
「そこはフィーに選んでもらうべきじゃないの?」
セイとテウの小競り合いを見ながらも、テウとセイから今日聞いた話を頭の中で反芻する。
侯爵家の話にも伯爵家の話にもヒロインを特定する情報が少なすぎるのはなんでなのかなぁ。デフォルトの名前はエヴァだったはず、でもこれは名前変更可能なんだよね。変更できない家名があったはずなんだけどそちらがどうしても思い出せない。でも家名があるって事は貴族ではあるはずだし、ゲームの舞台である王立学園はほとんど通うのは貴族のはず。ひょっとして両家の転生者も私なみに記憶が曖昧な程度にしか「エリュスト」プレイしてなかったの?それだとこの誤解解くにはどうしたらいいんだろう。
その日はせっかく初めての舟遊びだというのに考え事に気を取られてほとんど印象に残らなかったのは後から考えるとかなり勿体なかったかも。




