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湖のほとりに馬車を止めて降り立つと、先に来ていたセイが手を挙げながら近づいて来た。
「やあ、フィー久しぶりだね。変わりはないかい?」
そう声をかけながら流れるような仕草で手を取り甲にキスを落とす。
そう言えばセイはこういう人だったと思ってその様子をながめてたら不満げに見上げられた。
「もうちょっと何か反応ないの?虚しくなるんだけど」
「ははは。セイ相手でそんな反応の女の子は中々いないな」
テウが後ろから笑いながら近づいて来るとセイの眉間にしわが寄った。
「そんな風に笑ってる処みるとテウは僕ほど子供扱いされてないのかな?」
「ん?どうなんだ?」
そこで私にふられてもどうしたらいいのさ。という訳で完全スルーする事にする。
「ところで今日はピクニックって事だけど具体的になにするの?」
「ランチとおやつ持って来たよ。フィーの好きなスコーンも勿論入れて貰ったからね」
「わあ、やったー!あれ本当に美味しいよね。テウは食べたことあるの?」
「ああ、あの侯爵家でしか味わえない焼き菓子か。あれにつけるクリームが美味しいんだよな」
「えっ、スコーンって侯爵家でしか食べられないの?」
「そうだね。レシピは公開してないから他では見たことないかな」
貴族ならみんな食べてるお菓子なのかと思ってたからちょっとビックリ&残念だ。
「どう?我が家に来れば毎日食べられるけど?」
「おい、セイ抜け駆けするなよ!うちだって色んなデザート用意するぞ。っていうかうちの食事に何か不満でもあるのか?」
侯爵家も伯爵家も料理長さんの腕は確かなのは2週間の滞在で十分理解してるけど、自宅では中々食べる機会のないスイーツの誘惑は侮れない。侯爵家のスコーンに対抗するなら伯爵家はアイスが美味しいんだよね。アフォガードが特にお気に入り。
「文句なんてある訳ないし。デザートだったら侯爵家のスコーンと伯爵家のアフォガードは別格かな。そこで差はつけられないよ」
「フィーの中ではまだどちらの家に住むかは決まってないの?」
セイの質問には頷きで答えておく。
「馬車に揺られて疲れただろ」
ひとまず座ってお茶でも飲むか、というテウの提案で、湖のほとりの眺めの良い草むらに敷物をしいてお付きの方々が準備をしてくれる。準備はおまかせっきりでただ待ってるってのが慣れなくて少し居心地が悪いんだけど無理に彼女たちの仕事を手伝うのも逆に邪魔になりそうで遠慮する。
この街の気候は穏やかなので夏場といってもそれほど暑くもなく湖を渡ってくる風が爽やかで心地いい。前世の猛暑とはえらい違いだ。
日差しを遮るように立てかけられたパラソルの陰に座って早速お気に入りのスコーンと紅茶を楽しみながら二人を見る。どちらもお茶を飲みながら私に向ける笑顔が比喩ではなく湖面の光を受けてキラキラしてた。今更ながらにこんな素敵な攻略対象者が私と結婚する未来なんてあるのかしら?
「テウとセイは正直なところ私を婚約者にする事についてはどう思ってるの?」
「オレは悪くないと思ってる。この2週間一緒に過ごして中々楽しかったし、フィーは頭がいいから話してても面白いしな」
「フィー、僕はぜひ君を婚約者に迎えたいと思ってるよ。爵位とか見た目とかではなく僕個人と付き合ってくれているというのは2週間の付き合いでも感じられたからね。しかもしっかりものな上に素直でかわいい」
ウィンクつきでそう答えたセイにテウは呆れた顔を見せたけど、私としてもこのチャラ男っぽい態度はどちらかと言えば減点対象だ。
「セイってやっぱり私と婚約イヤなんだ」
「え、どうして?」
「だって、さっきみたいな態度じゃ私に響かないってわかってるでしょ?」
私の言葉に少し考えるそぶりをみせたセイを横目に見ながらテウがニヤリと笑った。
「じゃあもううちに住むって事で決まりでいいじゃないか」
「そう簡単には譲れないよ」
急に真面目な顔になったセイにドキリとした。
数日出かけてしまうので次回の更新まで1週間ほど空いてしまうかもしれません。
もし待っててくださる方いらっしゃったらすみません。




