久々の帰宅1
「お帰りなさい」
父さんと母さんの笑顔にやっと緊張が解けて、セイの腕を離して二人に駆け寄った。
「ただいま!」
「大丈夫だったか?」
「店に入って来た時は信じられないくらいのお淑やかさだったから、飛びついて来なかったら一瞬フィーだとわからなかったかもね」
そんな母さんの笑い交じりのからかう言葉に思わず頬が膨らむ。
私たちのハグが終わるのを待ってセイが声をかけてくる。
「お久しぶりです。お変わりはありませんでしたか?」
「お久しぶりでございます。娘を送って下さってありがとうございました」
父さんが深く腰を折ると母さんも同じように頭を下げた。
私たちの後から店に入って来たマリーとミリーも慌てて隣に並んで頭を下げてる。
「頭を上げてください。フィーにも言ったけど僕の事は気軽にセイって呼んでください。敬語も必要ないです」
緊張してる家族にセイが優しく声をかけるけど、そんな簡単に馴れ馴れしくしたり出来ないよね。私もなじむまで1週間近くかかってたし。
だから、出来るだけ砕けた口調を意識してセイに話しかける。これから長い付き合いになる可能性もあるんだから、私だって家族とセイが仲良くなれたらいいなと思ってるから。
「セイ!そう言えばこのワンピース、セイが用意してくれたんだって。凄く気に入ったよ。ありがとう」
「うん。とてもよく似合ってるね。そうそう、お土産にはフィーの好きなスコーンとクリームをたっぷりつめて貰ったからみんなで食べてね」
「うわぁ、私、あれ大好き。マリー、ミリー、侯爵家のスコーンていうお菓子、凄く美味しいの!きっと二人とも絶対気に入るよ!」
「このバスケットの中身がそれ?」
「見たい、見たい!」
私がフランクにセイと話してるのを見て、ようやく敬語じゃなくても大丈夫って納得出来たみたいで、マリーとミリーがはしゃいだ声を出すと、両親も少し肩から力が抜けたみたい。
それを見てセイが私の方へ笑顔を見せる。
「いつの間にスコーンの準備なんてしてたの?ほんと、セイって気が利くよね。そういうのも社交術とかで習うのかしら?」
「社交術ね…。フィーこそ本当に周りをよく見てるし、気遣いが子供らしくないってみんなが言ってるよ」
そう言われても確かに中に大人がいる分そういうの気になるのは仕方がないというか、気づいててスルーするのもそれはそれでストレスというかね…。
スコーンを見てはしゃぐ姉妹とそれを優しく見つめる両親に安心したのか、セイが暇の挨拶を告げる。
「それでは伯爵家の滞在が終わった後にまた会いましょう」
そのまま店の入り口へ向かうセイを見送りに向かうと、気づいたセイが振り返って、ここで、と告げた。
「我が家のスコーンをまた一緒に食べられる日を楽しみにしているよ」
その言葉の後に、流れるように私の右手を取って口づけをした。
きゃーーー。
マリーとミリーの悲鳴を聞きながら颯爽と去っていくセイの行動がイケメン過ぎて、二人に肩を揺すられるまでポカーンとしてしまう。中身に三十路が詰まっててもきゅんとする心はちゃんとあったらしい…。




