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銃撃士は相棒を選べない―最強美少女たちがパーティーを組もうと迫ってくる件について―  作者: アレセイア
第一章

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第8話

(なるほど――そういうことね)


 魅力的な指名、勧誘、やたらと熱心に推してくるユキ。

 不思議だとは思っていたが、集合場所である街の門――そこで待つ、一人の少女を見た瞬間に思わず納得してしまった。苦笑い交じりにその傍に歩み寄る。

 不安そうな顔でもじもじと時計を見つめていた少女は、ふと視線を上げ――ぱっと花開くように笑顔になった。


「レオンっ! 依頼、受けてくれたのね……ありがとう」


 シュリ、だった。短い金髪を揺らしながら、気の強そうな吊り目を細めて笑う。その蜂蜜色の瞳がきらきらと眩しいくらいに輝いている。

 姉妹喧嘩をしていたあの殺気や覇気はなく、無邪気な少女のような笑顔だった。


「ひょっとして、ユキさんに頼み込んだのかな?」

「正確にはギルドマスターに少しお願いしたの。私とレオンだけで依頼を受けられるように調整してほしい、って」

「なるほどな。ちなみに――」


 言葉を続けながら、さりげなく辺りを見渡すと、彼女は苦笑をこぼした。


「あの愚妹はいないわよ。追い払ったわ」


 事もなげにそう言う彼女は、先ほどまで戦い合っていた気配すら見せず、屈託のない笑顔を浮かべている。相当な激戦だったはずだが、疲労の欠片も見せていない。


「とにかく、勧誘を受けてくれたのよね?」


 レオンの疑問は、シュリの真っ直ぐな質問に遮られる。思考をひとまず脇に置き、レオンは頷きながら受け取った書類を見せる。


「ああ、銃撃士指名の勧誘を受けて。報酬は半々で間違いないな」

「ええ、そうよ……ってあまり堅苦しくなくていいわよ? レオン。あたしと貴方の仲じゃない?」


 そういう彼女の口調は、まるで友人同士のように、気安い。砕けた口調で、ぐいぐいと距離を詰めてくる――レオンは少し戸惑いながら訊ねる。


「俺とキミの仲って言っても、まだ会って何回か……お互いのスタイルも分かっていないぞ? 信頼するには、まだ早いと思うが」

「ああ、貴方はそれでいいわ――あたしが勝手に信頼しているだけだから」


 彼女はそう言いながら、また一歩と距離を詰めてくる。じっと見つめてくる瞳は、逸れることない。少しむずがゆく思いながら、レオンはぎこちなく見つめ返す。

 その様子を彼女は気にした様子はなく、微笑みながら続ける。


「互いのスタイルにせよ、信頼にせよ、戦えば分かってくるものもあるわ。行きましょう。レオン――ここだと見つかりたくない相手に会うかもしれないし」

「ああ、カグヤ――」

「その名前を、出さないで」


 その一言と共に、鋭い殺気が滲み出た。思わず口を噤むと、シュリはあはは、と取り繕うように笑みを浮かべ、そっと手を伸ばす。


「ごめんなさい――とにかく、行こう? レオン」


 遠慮がちに、小さく指先で腕に触れてくる。レオンはため息をつき、前に進み出る。


「分かった。いずれにせよ、依頼は引き受けた以上、遂行する」


 その言葉に安堵したようにシュリは控えめに吐息をこぼす。それから目を細めると、ちら、と街の外を見やった。


「今回の獲物はグランド・ベアよ。正直、あたし一人でも行けなくはないけど、この街での依頼をこなすのは初めてだから、道案内が欲しかったところでもあるの」

「なるほど、俺の役割としては道案内兼、援護役、といったところか」

「ん、そういうこと。貴方の腕前は知っているから、援護に期待している」


 それと、と言葉を続け、シュリは流し目を向けながら微笑む。


「あたしの相棒になるかどうかも、これを機会に決めてくれると嬉しいわ」

「――熱心に誘ってくれるのはありがたいが、俺はしがない銃撃手だぞ? そんな俺を仲間に加えるよりも、もっと別の後衛を入れた方がいいと思うんだが」


 そう言いながらシュリを促し、レオンは街の外に足を向ける。

 門を出れば早朝の涼しい風が草原を吹き抜け、心地よく感じられる。他の冒険者もせっせと歩いていくのに交じり、二人で道を進みながら言葉を交わし合う。


「いろいろ試しているわ。さすがにソロでやるのにも限界があるから、機会があれば何人かと組んでみて依頼を挑んだ。でも、連携が上手く行かなくて」

「連携が?」

「そう、なんというかかみ合わないというか……」


 歯切れが悪そうにシュリは続けていたが、やがてはっきりと告げる。


「他の人たちが遅い、というか、鈍いのよね」

「……ふむ、高ランクの冒険者でも?」

「そう。あたしの前衛を上手く援護してくれないというか」

「なるほど……」


 レオンは軽く頷きながら最初の共闘を思い出し、少し考えてみる。


(シュリの戦い方はあのとき、かなりアクティブだった。敵の中に斬り込み、離脱を繰り返すような、目まぐるしい戦闘――)


 それに合わせられる冒険者が少ない、ということだろうか。

 そこまで考えると、レオンは小さく吐息をこぼして首を振る。


「いずれにせよ、実際に戦いぶりを見せてくれなければ分からないか」

「そうね。貴方の銃撃の腕前も再確認したいし」


 レオンとシュリは前を見る。歩く先にはすでに木々が茂る森が見え始めていた。

 バウマンの街の近郊にある、魔獣の巣窟――ケルドの森だ。

 それを見据えてから、彼女はレオンを横目で見てふわりと微笑んだ。


「あたしの実力、しっかり見ていてね」

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