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銃撃士は相棒を選べない―最強美少女たちがパーティーを組もうと迫ってくる件について―  作者: アレセイア
第四章

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第46話

 廃坑が完全に崩壊したのは、レオンたちが廃坑から飛び出して少し経ってからだった。レオンたちは鉱山道の岩棚の茂みに身を隠していると、崩落した地面から魔獣が次々と飛び出してくる。

 そして、その魔獣たちは辺りを入念に駆け回り始める。逃げたレオンたちを探し回るように。それを目にして、レオンは吐息をこぼす。


「ま、あれだけ虚仮にしたからな。絶対に見つけ出そうとするだろう」


 レオンは空になった弾倉(マガジン)を取り出し、銃弾を弾倉(マガジン)を中へと押し込んでいく。カグヤは視線を巡らせ、難しそうな表情で告げる。


「シャドウウルフが厄介ですね。匂いを追いかけてくるはずです」

「上手く隠れてもブラッドクロウが空から見つけてくるし……」

「案外、グランド・ベアの嗅覚も侮れないぞ。そして見つけ出されたら最後」


 ちらり、と視線を陥没した地面に向ける。その中央に佇んでいるのは、巨大な漆黒のドラゴン。憤っているのか、時折喉から炎をちらつかせている。


「……あれに、追い回されるな」

「なら、逃げ回るのはなしにしましょう。レオンさん」

「やりましょう。レオン。あたしたちなら、できるわ」


 二人は軽い口調で言いながらレオンを見やってくる。信頼を込めた眼差しに、思わず少しだけ苦笑いが込み上げてくる。


「事もなく言ってくれるな……言っておくが、魔竜の撃退なんて、S級が五人がかりで成し遂げる偉業だ。それを、たった三人――しかも、A級二人とC級一人でやろうっていうのか?」


 試すような口調。それに二人は視線を合わせると、すぐに頷き合った。


「確かに、普通なら無理なことね。だけど――」

「この三人なら、出来る気がするんです」


 二人の真っ直ぐな言葉。互いの信頼関係を、疑っていない。


(――この二人なら、呼吸を合わせることができそうだな……)


 自然とレオンの口角に笑みが込み上げてきた。拳銃の銃把(グリップ)内に弾倉(マガジン)を力強く叩き込む。小気味よい音が響き渡り、拳銃の銃把(グリップ)の重さが手に馴染む。


「よし、やろう――魔竜退治だ。手短に、作戦を詰める」


 見つかっていない今が好機。三人は頷き合い、小声で作戦会議を始めた。


   ◇


 シャドウウルフの遠吠えが響き渡る。

 それを聞いてレオンは吐息をこぼして腰を上げる。殺気がこちらに向けられているのがよく分かる。とうとう、見つかったようだ。


(けど、時間稼ぎは充分できたはず……)


 彼の傍にシュリとカグヤはいない。作戦に応じて別行動を取っていた。

 レオンはたった一人で茂みから姿を現すと、魔物の気配の方向を見やる。

 そこからは魔獣の群れが大挙を為して押し寄せて来ていた。そして、その背後から地鳴りと共に近づいてくるのは、魔竜。

 凄まじい咆吼と共に地を蹴り、大地を揺らしながら駆けてくる。

 雲霞のような軍勢を前に、レオンは笑みをこぼしながら踵を返す。


「さて――それじゃあ、鬼ごっこといきますかッ!」


 直後、背後から轟いたのは脳を揺さぶるほどの、大音声。

 だが、レオンには効かない。カグヤが簡易の結界を張り、どんな音や光でも感覚が利くようにしてくれているのだ。


(とはいえ、凄まじい揺れだな……)


 凄まじい勢いで距離を詰めてくるドラゴン。激しく揺れる地面に、足が取られる。レオンはよろめきながらも、岩場を飛び越え、倒木を潜り抜けて道を駆ける。

 ドラゴンはその障害物ごと駆け抜けようとして――突如、そこに爆炎が噴き出す。

 先回りしたシュリやカグヤが作った罠だ。アレスタから買ったという護符を惜しみなく設置し、タイミングを見てカグヤが遠方から爆破している。

 その衝撃で足止めを喰らう魔竜。だが、その脇をすり抜けるようにシャドウウルフやグランド・ベアといった魔獣が四足で駆け抜ける。飛ぶように距離を詰め、レオンを追い詰めようと爪や牙を閃かせ――。


 その頭に、巨岩が直撃する。


 レオンが駆け抜けた場所を降り注いでいく巨岩。それは左右に広がる岩壁から落ちてきたものだ。岩壁の岩棚や茂みには魔獣が潜んでいることが多い――。

 そこをシュリとカグヤが爆破し、岩壁を崩して頭上から岩を降らせているのだ。

 頭上から次々に降り注ぐ岩に魔獣たちは逃げ惑い、押しつぶされていく。


(悪いな……こっちは正々堂々やる暇なんてないんだ)


 何せ、敵は魔竜と統率の取れた魔獣軍団。真面目に正面切って戦う方が馬鹿げている。そんなものは、英雄譚に任せておけばいい。

 レオンは狩人。ならば、それらしく道具や地形を駆使して、戦えばいいのだ。

 カグヤが岩壁の頂上で、大きく杖を振る。瞬間、地形に仕掛けられた護符が弾け、岩壁が砕け散る。魔獣たちはそれに打ちのめされ、散り散りに逃げてしまう。

 だが、魔竜は退かない。喉を逸らし、凄まじい咆吼を放って暴れ回る。

 レオンは振り返ると、魔竜の背にベルグが乗っているのが目に入った。残忍な笑みを浮かべ、高笑いを弾けさせる。


「レオン! こんな小手先技で俺から逃げられると思っているのか!」


 ベルグが掌をかざし、レオンに向けて狙いを定める。ぞくり、と背筋に走った予感に従い、レオンは横っ飛びに避ける。

 直後、ベルグの掌から閃光が迸る。宙を駆けた光線がレオンの立っていた場所に直撃。そこにあった倒木を跡形もなく消し飛ばす。

 ベルグは高笑いを上げながら、畳みかけるように掌をかざし――。

 それを妨害するように、さらに氷の刃が頭上から降り注ぐ。カグヤの援護だ。

 ベルグは不愉快そうに舌打ちをこぼすと、その掌を翻して頭上に向ける。

 結界を張り、降り注ぐ無数の刃を凌ぐ。その光景に、カグヤは悔しそうに表情を歪ませた。攻め手が緩み、ドラゴンがさらに大きく暴れ、一気に飛び上がろうとし――。


 その鼻先に、跳躍する剣士がいた。飛び上がりざま、シュリが一瞬で刃を走らせる。


 ドラゴンの鱗が、真横一文字に引き裂かれる。血飛沫と共に湯気が舞い、苦悶の咆吼が静けさの夜を震わせる。暴れたドラゴンが、シュリを狙って前足を振るい――。


 その姿が、霧に包まれて消滅する――カグヤの、魔術だ。


 だが、マークが外れたベルグが再び掌を掲げる。だが、それを防ぐように、レオンは銃弾を放って牽制する。その隙に、シュリは縦横に地を駆け、魔竜の身体を斬り刻んでいく。

 三人で、代わる代わる攻守を切り換え、ベルグと魔竜の動きを封じて行く――。

 互いが互いをカバーし合っているので、隙が生まれにくい。刃と銃弾と魔術――それぞれが、互いの欠点を補い合い、長所を引き出しているのだ。

 その連携を見つけられず、歯噛みするベルグを見つめ、レオンはほくそ笑む。


(卑怯だとか思うなよ? 常に一方的な攻撃が――狩り、っていうんだからよ)


 駆けながら左手で腰から新しい弾倉(マガジン)を引き抜く。親指と人差し指で保持しながら、銃を持つ右手でマガジンキャッチを押し込む。自重で落下した弾倉(マガジン)を左の掌で受け止めながら、入れ替わるように新しい弾倉(マガジン)装填(リロード)した。

 そして再び銃口を魔竜に向け、引き金を引く。次々と放たれる銃弾が一気に魔竜の顔面に一点集中。強固な鱗が火花と共に削れて、魔竜が悲鳴を上げる。

 すかさず、そこにシュリが刀を走らせる。目元がざっくりと裂け、ドラゴンはさらに大きく暴れる。その反応に、レオンはシュリとカグヤに視線を振った。

 彼女たちは頷き返してくれる――やはり、推測通りだ、と。


(ドラゴンとはいえ、目や口元は弱い!)


 弱点である逆鱗がないとはいえ、粘膜が露出しているところは弱いのだ。

 三人の動きが一瞬で切り替わる。怒り狂ったドラゴンをシュリが攪乱、ベルグの注意をレオンの銃撃が引き、カグヤがドラゴンの顔面へ氷の刃を無数に叩き込む。

 顔に集中し始めた攻撃に、魔竜は激昂の咆吼と共に首を振る。その顔からこぼれ出た高熱の血飛沫が地面に落ち、焼けた鉄の臭いを放つ。

 痛みで魔竜の動きが散漫になったところに、シュリの剣閃がその足元に集中する。

 鍛え上げられた漆黒の刃が容赦なく魔竜の爪を斬り裂き、鱗を引き裂く。と思えば、シュリは身を翻し、一瞬で離脱。魔竜の踏みつけを回避する。

 研ぎ澄まされた三人の技が、容赦なく魔竜の弱点を突いていく。


 まさに、狩り。容赦もなければ油断もなく、魔竜を追い詰めていく。


 その狙いに、ベルグも気づいたのか、慌てた様子でその背から立ち上がる。その両手を突き出すと、それに呼応するように、ドラゴンの頭へ光が集まっていく。

 結界か、治療か――いずれにせよ、彼は両の手を突き出す――。


 その一瞬を、待っていた。


 高らかに鳴り響いた、銃声――それが真っ直ぐに宙を引き裂く。

 流星のように真っ直ぐ伸びた火線は、紛れもなくベルグの手に伸びて行き――。

 その右手を、紋様ごと粉々に吹き飛ばした。

 ベルグが目を見開く。瞬間――魔竜の暴れ方が変わった。

 全身で大きく身体を震わせて暴れ回る。まるで、ベルグを配慮しない、全身での動きだ。

 それに吹き飛ばされるように、ベルグの身体が浮いた。ふわり、と中空で滞空したベルグの目が、絶望に見開かれる――まさか、と口が動き――。


 次の瞬間、振り抜かれた翼に弾かれ、彼の身体は地面に叩きつけられた。

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