表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銃撃士は相棒を選べない―最強美少女たちがパーティーを組もうと迫ってくる件について―  作者: アレセイア
第四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
45/49

第45話

 次の魔力の波長は、それほど間合いを置かずに感じ取れた。


(――来たな)


 身動きはせず、レオンは神経を研ぎ澄ませた。四肢に力を込める。

 少し遅れて、洞窟にいたシャドウウルフたちが唸り声を上げる。ベルグが眉を寄せ、廃坑の外へ視線を向ける――その瞬間、圧倒的な魔力が膨れ上がった。


(あ、やべ――)


 思わずレオンは咄嗟に身を伏せさせる――直後、凍てつく波動が吹き抜けた。

 氷の奔流が凄まじい勢いとなって流れ込んでくる。それが直撃したシャドウウルフがたちまち、白く凍りつく。壁や天井が白く凍りついていく光景に、レオンは白い吐息をこぼす。


(パルマ・フォレスト……しかも、かなりの精度……!)


 魔獣たちは立ち上がる間もなく、しかも廃坑内は狭くて逃げられない。

 それでいて、レオンの周りだけは冷気が避けるように駆け抜けていく。

 狙いすましたように氷漬けにされていく魔獣たち。こんなことができる魔術師は、たった一人しか思い至らない。

 その光景に驚いていたベルグだが、彼は獰猛に牙を剥くと吼えた。


「おう、戻ってきたか! いいだろう、相手になる……!」


 ベルグの掌が輝きを放つ。それに応じるようにドラゴンが唸りを上げて進み出る。その巨躯で冷気を完全に受け止めると、その口が大きく開いた。その喉の奥からこぼれだす、眩い閃光。

 咄嗟に、レオンは耳を塞ぎ、目を閉じる。直後、凄まじい勢いで光線が迸った。

 竜の息吹。全てを溶かす、凄まじいほどの熱量が駆け抜ける。

 それが一気に洞窟内を舐めるように駆け抜ける。パルマ・フォレストの冷気を一瞬で蒸発させる熱波が、レオンにも襲い掛かり、肌が焦げるように熱くなる。その中で薄く目を開き――それに、目を奪われた。


(――え)


 業火が、割れた。そんな錯覚を覚えるほど、鮮やかに斬り込んできた剣士があった。その手にしているのは、漆黒の刃。

 純白の衣に身を包みながら、踏み込んできた人影は、素早くベルグへ肉迫――刃を振り下ろす。鋭い一閃をベルグは目を見開きながら身を逸らす。

 空を裂いた刃。だが、それは止まらず、鮮やかに刃が返される。

 その猛攻にベルグは後ずさる。その視線がレオンから外れて剣士に集中する。その一瞬をレオンは逃さなかった。懐から小さなそれを引き抜く。


 掌にあるのは、カグヤが作った魔導薬莢。宙に投げたそれを指先で弾く。

 鋭い銃声が轟き、火線が宙を駆けた。

 小さな薬莢から放たれた銃弾が、ベルグに肩を撃ち抜く。その予期せぬ銃撃にベルグの動きが止まる。その隙を、剣士は逃さない。

 跳ね上がった刃が、黒閃となってベルグを一気に真一文字に斬り裂いた。


「な――ッ!」


 ベルグは目を剥きながら苦悶に呻く。だが、すぐにその掌を振りかざす。瞬間、ドラゴンが大きく動いた。

 前足を振り上げ、剣士の方に向かう。だが、その剣士は動じずに半歩引いてドラゴンに向き直る。ひらりと手の中で舞わした黒い刃は、鞘に一瞬で収まる。

 刃は上に、左手で鞘を掴み、右手を柄に添える。視線は、頭上の前足の爪に固める。


(居合、抜刀術――)


 レオンの視線の先で、その剣士は鞘に封じた刃に力を込め、鍔を鳴らす。

 その澄んだ音が響き渡った瞬間、一閃の黒刃が、弧を描いて迸った。

 ぱっと咲いたのは――血花。

 鮮やかな血が、彼女の頭上が弾ける。それと共に、ひらり、と中空で何かが舞った。

 宝石のような、塊――それが、竜の爪と気づいた瞬間、凄まじい咆吼が洞窟内を震わせた。苦悶の悲鳴に、大きくドラゴンが暴れ回る。


(まず――っ!)


 その巨体に押しつぶされそうになり、慌ててレオンは離れようとして――。

 その手が、ぐいと引っ張られた。


「レオンッ! こっち!」


 馴染みのある声と共に、純白の剣士が叫ぶ――彼女の刃が走り、拘束を破壊する。

 自由を取り戻したレオンは、引っ張られるようにその剣士に続く。息を切らしながらも、笑みを浮かべてその背に向かって声を掛けた。


「ありがとう、シュリ――助かった!」

「礼はまだ早いわ――ほら、レオン」


 純白のマントに身を包んだ剣士――シュリは笑顔を見せながら、その胸に何かを押し付けてくる。それを掴んだ瞬間、何か分かる。

 ヘルメス17。使い込んだ形跡が少ないところを見ると、アレスタに預けていた予備らしい。片手で遊底(スライド)を引き、薬室を確認(チャンバーチェック)する。

 すでに初弾が入っている――すぐに撃てるようにしてくれているようだ。


「早速、腕前を見せてくれるかしら、銃撃士様ッ!?」


 そう告げた瞬間、後方から魔獣の気配。シャドウウルフが一気に襲い掛かってくる。レオンは振り返りざま、銃口を向ける。

 連続して引き金(トリガー)を引く。放たれた銃弾はシャドウウルフに直撃し、血潮を撒き散らしながら倒れていく。シュリは口笛を吹きながら笑みを見せた。


「さすがね、レオン――まさか後ろ向きで当てられるなんてね」

「これくらいならな」


 どんな姿勢でも撃てるように鍛錬を積んでいる。無論、安定した姿勢の方が命中精度は高くなるのだが。


(あちらも図体がでかいからな――)


 銃弾を撃ち尽くしたレオンは視線をシュリに向ける。彼女は呆れたような表情を見せ、懐から弾倉(マガジン)を抜いて投げ渡してくる。


「本当、銃に関しては最強ね」

「ありがと。シュリ」


 駆けながら弾倉(マガジン)を素早く引き抜き、新しい弾倉(マガジン)を叩き込む。遊底(スライド)を引いて次弾を装填(リロード)すると、シュリと並んで駆ける。


「こっちよ、レオン!」


 シュリは迷わずに洞窟の中を駆けていく。左に折れたと思えば、次は右に、かと思えば上にぶち開けられた大穴――。


「こんな道、よく見つけたな……っ!」


 頭上から垂れているロープを掴み、レオンは急いで登っていく。その先をするすると登っていくシュリはくすりと笑みをこぼした。


「違うわよ、道は作ったの。塞がれている穴を壊して」

「ええ、そういうことですよ、レオンさん」


 その澄んだ声と共に頭上から手が差し伸べられる。それを掴んで這い上ると、そこでは法衣姿の金髪少女が待ち受けていた。


「レオンさんッ! 良かった……!」


 目を潤ませるカグヤに、レオンは息を整えながら思わず笑みをこぼした。


「ありがとう――まさか、二人が息を合わせて助けに来てくれるなんて」

「一時休戦して、仕方なしに、ですよ」

「その割に、二人の息は、ぴったりだったけどな」


 初撃のパルマ・フォレストから、シュリの斬り込み――あれは、なんとも鮮やかな連携だった。お互いの呼吸がぴったりと合っていたのだ。

 一歩間違えれば、シュリは氷漬けになるか、竜の息吹で焼け死んでいただろう。

 シュリとカグヤは視線を合わせ、少しだけ気まずそうに視線を逸らす。


「まあ――この人の妹ですから」

「まあ……この子の姉だしね」


 思わずレオンは噴き出した。カグヤは不機嫌そうに頬を膨らませながら、彼の胸に箱を押し付ける。銃弾の箱だ。

 シュリは羽織っていた純白のマントを脱ぎ、カグヤに放る。


「返すわ。ありがと。カグヤ」

「いえ――それよりも急いで、ここを脱しないといけません。こちらに」


 カグヤは踵を返して先頭を駆けていく。やはりその足取りは迷いがなく、複雑な廃坑の道を駆けていく。その地面に魔獣の足跡がないことを見て気づく。


「そうか、魔獣も使っていない別の廃坑を……」

「そうです。そこをシュリ姉さまに壊してもらって、壁を繋げました。恐らく、追いかけてくるには時間がかかるはずです……!」


 封鎖されている壁をぶち壊すとは、なんという怪力だろうか。

 思わずシュリを見やると、彼女はくすぐったそうに笑みをこぼした。


「別にそんな手間じゃなかったわよ」

「はは……さすがA級魔術師だ。二人とも、頼もしいよ」


 レオンの声にシュリとカグヤはくすりと笑みをこぼす。

 直後、不意にぐらりと地面が揺れる。それに足を取られたカグヤを支えながら、レオンは軽く舌打ちをした。


「なるほど、追跡をあきらめたか」

「……そうなの?」

「ああ、その代わりあっちも地面をぶち抜くことにしたんだろ」


 その言葉に答えるように、背後から凄まじい咆吼が響き渡る。地面がぐらぐらと揺れ、今にも廃坑が崩れそうだ。カグヤは顔を引きつらせ、シュリは鋭く告げる。


「外に出ましょう。まずは、そこからよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ