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銃撃士は相棒を選べない―最強美少女たちがパーティーを組もうと迫ってくる件について―  作者: アレセイア
序章

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第4話

 この大陸には、魔物がはびこっている。

 大地に恵みを与える霊脈からあふれ出た魔力は人々に魔術という形で恩恵を与えたが、これは些か獣には大きすぎる力であったのだ。

 大きすぎる力の影響を受けた獣は、その身に力を宿し、狂暴化してしまう。

 それが魔獣、あるいは魔物と呼ばれるものの正体だ。

 中には知性を持ち、その力を御することを覚えた者もいる。その者たちは魔族と呼ばれ、人間国家であるペンシル王国の北部で一大帝国を築き上げているのだ。


 その両国の境――いわゆる、辺境と呼ばれる土地には、ある一つの街が存在する。

 辺境都市、バウマン。城壁に囲まれた、小さいながらに堅牢な都市。

 魔族領から越境してくる魔物の被害が絶えないため、冒険者と呼ばれる傭兵たちがそこに多く住み、生計を立てている。


 銃撃士、レオン・ケンフォードもその一人だ。

 彼は遠征を終えて自分が拠点としているバウマンに戻り、馴染みの鍛冶屋に顔を出していた。


「アレスタ、いるかー?」


 声を掛けながら店内に足を踏み入れる。

 瞬間、身体を包み込むのは鉄と油の匂いだ。それもそのはず、薄暗い店内には所狭しと所狭しと斧や槍、剣が立てかけられ、足元に木箱には乱雑に短剣が雑多に放り込まれている。

 どこを見ても武器がある景色に、思わずレオンが眉を寄せると、カウンターの方から低い声が響き渡った。


「おお、レオン坊、戻ったか。三ヵ月ぶりか」


 奥から顔を見せたのは、一人の大男だ。

 ぼさぼさ頭に、浅黒い肌。むじゃむじゃの無精髭に包まれた、むさくるしい顔つきは常に煤で汚れている――が、その目の輝きは汚れで隠し切れていない。

 アレスタ・グノーム。彼がこの店の主であり、数多の武器を手掛ける鍛冶屋だ。

 レオンは店内を見渡してから肩を竦め、カウンターに近づいた。


「何度も言っているが、少しは片付けた方がいいと思うんだが」

「うるせぇ、余計なお世話だ。それより――銃撃士、どうだった?」

「どうだった、とは?」

「言わなくても分かるだろう。お前が王都に行ったのは、最新式を手に入れるためだろう? 手に入ったのか? どうなのか? え?」


 アレスタは揉み手をしながら何かを期待するようにレオンを見つめる。レオンは思わず苦笑しながら担いでいた荷物を置き、中からそれを取り出す。


「ああ、苦労したが手に入れられたぞ。これだ」


 布に包まれたそれをカウンターに置くと、アレスタは目を光らせる。


「――触ってもいいか?」

「もちろん。壊すなよ?」

「分かっていらぁ」


 アレスタは頷きながら慎重な手つきでそれを取り上げ、布を取り払う。その中から現れたのは無骨な拳銃だ。


「これが最新式の、自動式魔導拳銃(オートマチック)か……!」

「ああ、ブローニング技士が手掛けた最新作、ヘルメス17だ」


 その噂を聞いたのは約四か月前。王都で新しい銃ができたと聞き、銃撃士のレオンはいてもたってもいらず、王都へと旅立ったのだ。

 途中の街の冒険者ギルドで依頼を受けて路銀を稼ぎつつ、辿り着いた王都。そこでいろいろ聞いて回り、ありったけの金を積んでようやく手にできたのだ。


「完成度も高く、王都の近衛も導入を検討しているらしい。まぁ、実際に触ってみれば納得だな」

「全くだ。なるほど、このスライドが前後することで次弾を自動的に相談するのか」


 さすが銃を扱う鍛冶屋だけあって、すぐに構造を理解したようだ。

 銃把(グリップ)から弾倉(マガジン)を引き抜き、遊底(スライド)を動かしてみては感嘆の唸り声を上げる。それからマガジンに装填された弾を見やり、小さく吐息をこぼす。


「弾は共通規格か。ますますいいな――装弾数は?」

「聞いて驚け。十四発だ。薬室に一発装填しておけば、最大十五発撃てる」


 その言葉にアレスタは口笛を吹き、嬉々として拳銃を眺め回す。


「ははっ、驚いたもんだぜ。こんな銃が出回ったら、装弾数六発の回転式拳銃が廃れちまう」

「だろう? 大枚叩いた甲斐があったぜ」

「相変わらずの銃バカだな。お前は」

「うっせぇ、仕事道具なんだ」


 レオンが笑うと、アレクスタも豪快な笑いを上げる。それから名残惜しそうにそれをレオンの方に差し出す。


「いいものを見せてもらった。また見せてくれるか?」

「何を言っているんだ? アレスタ」


 レオンはにやりと笑みを浮かべると、それをアレスタの方に押し戻す。目を丸くするアレスタに対し、レオンは腰に帯びたホルスターから銃を抜く。

 同じ型の自動式拳銃、ヘルメス17。それを見て、アレスタは息を呑む。


「まさかお前――二挺も買ったのか?」

「ああ、メンテナンスができる奴がいないと困るだろう?」


 だから、と言葉を続けながらレオンは笑いかけた。


「これはアレスタに預ける。壊すなよ?」

「は――ははっ、レオン坊、お前ってやつは……!」


 アレスタは痛快そうに笑い、ヘルメス17を嬉しそうに持ち上げて眺める。その笑顔にレオンは目を細めながら、カウンターに寄りかかった。


   ◇


「そういえばレオン、何か土産話はないのか?」


 それからしばらく、レオンとアレスタはヘルメス17を通常分解(フィールドストリップ)しながら拳銃談義に花を咲かせていたが、アレスタがふと思い出したように訊ねる。

 カウンターに寄りかかっていたレオンは軽く眉を吊り上げた。


「土産話?」

「ああ、王都までの旅で何か面白いことはなかったのか?」

「そんな面白いようなことは――ああ、いや」


 レオンは思い出して小さく苦笑をこぼした。


「そういえば、道中で依頼を受けたときに、女の子を助けたな。それも二回」

「へぇ、可愛かったか?」

「どちらもとびきり可愛かったな。しかも強かった」


 そう言いながらレオンは彼女たちの姿を思い出す。

 短い金髪を揺らしながら剣を素早く遣う少女と。

 二つに結った金髪をなびかせた氷の魔術師の少女。

 それぞれ別々の街の近くで出会い、一人で窮しているところをレオンが助けた。


(――にしては、二人ともどこか似ていたな)


 雰囲気は全く違うが、顔立ちは似通っていた。


「お礼とかしてもらったのか?」

「まさか。街の診療所に送り届けてそれっきりさ」

「勿体ないな。折角助けたのに」

「お礼目的で助けたわけじゃないさ。困ったらお互い様だろう?」

「相変わらず人の良い奴だな。レオン坊。俺にこの銃を預ける辺りもそうだし」


 アレスタは笑いながら手元でヘルメス17を組み立てている。もうすでに大体の構造は把握したらしい。


(元々、アレスタは回転式拳銃(リボルバー)も扱っていたからな)


 このバウマンの街では多くの鍛冶屋があるが、銃を調整できる鍛冶屋はアレスタしかいない。外見から見れば粗雑そうに見えるが、指先は実に繊細なのだ。

 ちなみに魔術についても理解があり、術式を刻むこともできるらしい。


「ふむ、大分分かって来たな。意外と構造は単純だ――とはいえ、中のこのバネの強度の塩梅が分からんから、いろいろ試してみる必要はありそうだな」

「頼むぜ。アレスタ。修理するときはお前が頼りだから」

「まぁ、任せな。お前さんがまた女の子を助けられるようにな」

「はは、そんな場面が来ない方がいいんだが」


 レオンは肩を竦める。実際、そうそうあることではない。


(普通、ああいった洞窟――ダンジョンには仲間たちと入るものだからな)


 ダンジョンの奥に行けば行くほど危険は増し、単独でいれば不慮の事態に対応しきれなくなる。だから、仲間とパーティーを組むのが一般的だ。

 レオンは銃撃士という特殊さから単独行動も多いが、困難な依頼を受ける際は誰かしら仲間と組んで挑み、不慮の事態に対応できるようにしている。

 彼女たちは何らかの理由で仲間がいなかったのだろうが――。


(どうしているのかな。二人とも)


 二人とも出会ったのは遠く離れたダンジョンだ。また会う機会はないだろう。

 そんなことを考えながら、アレスタと雑談を弾ませる。


 まさか一か月後に、その予想が裏切られるとは知らず――。

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