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銃撃士は相棒を選べない―最強美少女たちがパーティーを組もうと迫ってくる件について―  作者: アレセイア
第三章

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第33話

「――どういう、風の吹き回し、でしょうね?」


 その日、レオンは困惑していた。

 場所はギルドの応接間――そこのソファーに座り、向かい合うように二人の男と相対していた。立派な騎士鎧姿の壮年の男と、恰幅のいい顎鬚の男だ。

 顎髭の男は見覚えがある。あまり表には出てこないが、ギルドを統括する長だ。

 そして、もう一人は――名乗らなくても想像がつく。


「何故、俺が騎士団の方からお呼び出しを受けるのでしょうか」


 鎧姿の男はわずかに口角を吊り上げる。その胸につけられた徽章が輝きを放つ。盾と剣のエンブレム――王国騎士団の象徴だ。彼はゆったりとした口調で口を開く。


「キミに依頼をしたいからだ。レオン・ケンフォード殿」


 丁寧な口調だが、威厳を感じさせる声だ。ふむ、とレオンは眉を吊り上げる。

 冒険者は民間の依頼を受け、依頼人から報酬を受けるのに対し、騎士団は王国が抱えている部隊だ。魔獣の他に、治安維持なども担当する。

 言うなれば冒険者は傭兵、騎士団は警察なのだ。


(……警察部隊が、傭兵を雇うものか?)


 思わず不審に思っていると、ギルド長がふと思い出したように一つ頷いた。


「ケンフォードくんはソロばかりだからね。合同依頼に参加したことはなかったか」

「合同依頼、ですか」


 オウム返しに訊ねる。それに答えたのは、騎士の男だ。


「口惜しいことだが、騎士団はこの王国全土を護るには人手が足りない。ギルドに協力を要請し、魔獣の討伐を頼んでいるのだ。キミも数度、受けたのではないかね?」

「ええ……なるほど、あれが騎士団からの発注だったのですね」


 思えば、強大な魔獣の討伐依頼はいつもどこからか依頼の掲示板に貼り出されている。それは騎士団からの要請だったらしい。


「その中でしばらくの期間、依頼が達成できない場合は騎士団に差し戻され、騎士たちが対応に入るのだ。だが、その際、二つ問題がある。一つは我々に土地勘がないこと。もう一つは騎士団も多数の軍勢を割けないこと。故に、現地のギルドに協力を要請し、推薦する冒険者に依頼を出して戦力の補充を行うこととしている」

「これが、その依頼書だ。確認してくれ。ケンフォードくん」


 ギルド長が机に置かれた依頼書を差し出す。ユキがいつも依頼のときにくれる、詳細な書類だ。書いたのもユキなのだろう、相変わらずの丁寧な筆致だ。

 報酬の額はかなり弾んでいる。依頼内容も探索がメイン。交戦も含まれている。


(ケルドの森を経由して、ゴウル鉱山道へ。そこから鉱山までの調査任務、か)


「それにしても、何故、自分を指名したのですか? バウマンには、俺以上に戦力や協調性に秀でたB級以上の冒険者がいます」

「理由は二つある。まず、一つとしてキミの狩人としての腕前、索敵技術を買っている。魔術を用いない、柔軟な気配の察知は、いざというときに役に立つと思われる。また、地形の把握なども優秀だと報告を受けている――それらを存分に生かしてほしい」


 騎士の流暢な説明に、なるほど、とレオンは納得する。

 そこは、銃撃手としての腕前を頼りにしている、と言って欲しかったが、そこは仕方ないだろう。銃よりも魔術の方が何十倍も威力があるのだから。


「……それで、もう一つの理由は?」

「構成員の都合だ。参加者一覧を見て欲しい。最後の書類だ」


 騎士に促され、書類をめくって一覧を確かめる。最初の四名は騎士で構成。後の六名が冒険者で構成されている。その一番上にある名前は見覚えがあった。

 シュリ・ユグドラと、カグヤ・ユグドラだ。


 納得した。即断する。


「辞退させていただきます」

「ちょ、待ってくれッ!」


 瞬時に席を立ったところに、ギルド長が縋りつくように前へ乗り出した。だが、レオンは一歩引いて避けながら、騎士に視線を向ける。


「あの二人の仲の悪さを聞いていませんか?」

「ああ、姉妹仲がすこぶる悪いことは聞いている。だが、それを改善できるのがキミだと、ここの受付嬢から推薦を受けた」


(ユキさんの差し金か……!)


 思わずレオンは額に手を押さえる。ギルド長は冷汗を滲ませながら、両手を合わせて何度も頭を下げている。


「最近、二人の喧嘩もケンフォードくんのおかげで鎮静化されているそうではないか! その調子で今回も頼む……!」

「いやいや、さすがに毎回は厳しいですよ……」


 恐らくあの二人と一緒に依頼をこなすとなれば、潰れるのはレオンの胃か部隊のどちらかだ。さすがにこの依頼は受けたくない。

 騎士に視線を戻すと、彼は咳払いをしてから真剣な顔つきで告げる。


「今回の作戦は予断を許さない。出来うる戦力は投入しておきたい。その上で、前衛の要になる剣士も、後衛の要になる魔術師も欠かせない。つまり、二人を参加させるのは決定事項と言っても過言ではない」

「――ちなみに、二人は同意しているのですか?」

「レオン・ケンフォードが参加予定だと告げたら、即決してくれたぞ」

「……嘘は言っていませんけど、ほとんどそれ詐欺では?」


 騎士団のやり口があざとい。思わず呆れるレオンの目の前で、ギルド長はほとんど土下座する勢いで勢いよく頭を下げた。


「頼む、ケンフォードくん! 報酬も弾むし、B級の昇格も保障する! わしと、参加者たちを助けると思って――頼む!」


 見事な懇願だった。立派な顎鬚は床を擦ってしまっている。

 レオンは思わず深くため息をこぼす。ここで突き放す冷徹さがあれば、ここまで苦労はしていないのだ。我ながら、自分の甘さが恨めしい。

 彼はがっくりと肩を落とすと、力なく頷くしかなかった。

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