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銃撃士は相棒を選べない―最強美少女たちがパーティーを組もうと迫ってくる件について―  作者: アレセイア
第三章

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第32話

 レオンが回復してから十日ほど経ったある日。

 彼はいつものようにアレスタの鍛冶屋に立ち寄ると、アレスタは片眼鏡(モノクル)をつけて、カウンターの上で何かを弄っていた。彼はすぐにレオンに気づくと、片眼鏡を外しながら髭面ににやりと笑みを浮かべる。


「お、来たな。色男」

「急になんだ? アレスタ」


 レオンがカウンターに歩み寄り、ホルスターから銃を抜く。いつものように弾倉(マガジン)を抜き、スライドオープンさせて差し出す。

 アレスタは弄っていた金属片を脇に置き、銃を受け取ってメンテナンスを始める。

 お互い、もうすでに勝手が分かっている仲だ。アレスタは整備道具を取り出しながら、視線を上げてレオンを見やる。


「バウマンの街でちょっとした噂だ。あのユグドラ姉妹が、最近大人しい、と」

「……そうか? 顔を合わせるなり、口喧嘩が絶えないけど」

「でも裏を返すと、口喧嘩だけだろう?」


 その指摘に、ふと思い返す。そういえば、ここ最近は二人が激突しているところを見ていない気がする。二人の仲が険悪なのは変わりがないが――。


「それに気づいた街の人々の視線が、お前に向くわけだ。あの姉妹とここ最近、一緒にいるお前さんにな。そうなれば、自然とそういう噂になる。『あの銃撃士は、姉妹を誑し込んだのではないか……』みたいな」

「おいおい、不名誉だな……」


 だが、考えてみると街を歩いているだけで、妙な視線を向けられていた気がする。気のせいだと思っていたのだが、そういった背景があったとは。

 レオンは深くため息をつきながら、ここ数日のことを思い返す。

 恐らく、きっかけはレオンが病に倒れたときのこと。そこで二人に対して、一応の筋を通した。その言葉の通り、ここ数日は二人に誘われた依頼をこなしていた。

 シュリとカグヤ、二人が持ち込んだ依頼を二件ずつ。

 それを通じ、さらに二人とは呼吸を合わせつつあった。


「……不本意だが、二人との接し方も分かってきたからな」

「そういや、街中でお前さんが喧嘩の仲裁をしていたのを見た、という奴もいたな」

「あー、屋台での時か」


 三日前の真新しい記憶のことだ。外を散歩していると、シュリとカグヤが言い争っているところに出くわしたのだ。シュリが串焼きを食べているところを、カグヤが「太りますよ」とバカにしたのが事の発端だったらしい。

 屋台の人が縋るような目つきで見てきたので、仕方なしに仲裁したのだ。


「ちなみに、どうやって捌いた?」

「別に? 二人に串焼きを奢って少し話をしただけだけど」


 物を食べている間は、二人も言い争いができない。その間に話題を逸らしたのだ。咄嗟のことだったので、自分の昔語りをしたのだが、それを二人は食い入るように聞いていた。


(……やっぱり、二人は魔境の魔獣に興味があったのか……?)


 レオンは内心で首を傾げていたが、アレスタは納得したように深く頷く。


「なるほど、レオン坊にしかできない手腕だな」

「大したことはしたつもりはないけどな……それより」


 レオンは話題を変えようと視線をカウンターに向ける。その隅には、入店するまでアレスタが弄っていた金属片がある。


「一体、何を作っているんだ?」

「ん、ああ、これか。お前が寄越した魔獣の殻があっただろう? その加工が進んでいるんだが、その破片で何か作れないかと思ってな」


 アレスタはそう言いながらその金属片を見せてくれる。表面には細かく緻密な模様が書き刻まれている。魔法陣のようではあるが――。


「魔道具か。よくこんな細かいものを作れるな」

「はは、銃に比べればこれくらい容易いものよ」

「そんなものかね――ちなみに何の効果があるんだ?」

「一応、結界の術式を試しに書いてある。この鉄の強度なら、かなり強力な魔術でも耐えられそうだったからな」


 アレスタはそう言いながら机の中をごそごそと探り、何かを取り出した。手にしたのは同じような札――だが、それには端に穴が空けられ、チェーンがつけられている。


「折角だから、ほら、これを持っていけ。試供品だ」

「お、いいのか?」

「ああ、護身用を兼ねてな。肌につけておけば、自身に脅威が迫ったときに自動的に作動する――はずだ」

「……はずだ、って。すげぇあやふやだな」

「試したことがねえんだ。仕方ないだろう」


 肩を竦めたアレスタはその鉄の札を投げ渡してくる。それをレオンは片手で掴むと、苦笑をこぼしながらそれを首から提げた。


「ま、それもそうだな。だからこその試供品か」

「そういうことだ。使用感を教えてくれよ」

「生きて帰れたら、だけどな」


 この護符が作動するときがあるとすれば、危機的状況だろう。その言葉にアレスタは苦笑を返して、違いねえ、と頷き返す。

 その一方で、手元でしっかり仕事をこなしている。淀みない手つきでクリーニングされた部品を的確に彼は組み立てていき、最後に遊底(スライド)を引いてから引き金(トリガー)を絞る。かちり、と小気味いい空撃ち(ドライファイア)の音を確かめてから、レオンに銃を差し出した。


「待たせたな。相変わらず丁寧に使っているのが分かるぜ。ただ、マガジンを落とす癖だけはどうにかしとけよ」

「急いでいるときは仕方ないだろ……ほら、返す」


 レオンとアレスタは銃を交換しながら、苦笑いをこぼし合う。それからアレスタはカウンターの中に手を突っ込んで軽い口調で訊ねる。


「今回は何箱だ?」

「三で頼むよ」

「了解だ。だが、今回から値上がりするぜ」

「あー、なるほど、了解」


 とうとう、ゴウル鉱山道での影響がアレスタの鍛冶屋でも出たらしい。彼が書きつけた請求書を見やり、少しだけため息をこぼした。


「……大分、値が張るな」

「ま、普通ならこの値段で四箱買えるからな。悪いな、レオン」

「いや、アレスタが悪いんじゃない」


 そう言いながら財布を取り出して代金を支払う。アレスタはすまなそうに眉を寄せ、付け足すように続ける。


「詫びと言ってはなんだが、お前の持ち込んだ、ユニコーンと魔獣の殻……もうすぐ、加工ができそうだぜ。次のクエストが終わったら立ち寄ってくれ」

「ああ、ありがとう。アレスタ」


 その後、レオンはアレスタと軽い雑談をしてから店を出た。穏やかな陽光が注いでくるが、懐具合は少しよろしくない。


(……この頃、結構、弾使っているからな)


 手ごわい相手なら、それなりに銃弾を使う。それに純粋に相手にする魔獣の数も増えているのだ。最近、ケルドの森での魔獣の遭遇頻度が上がっている。

 無論、遅れをとるはずはないが、多く弾を使って出費が増えている。


(今後のことも考えると、弾代の高騰は厳しいな……)


 ゴウル鉱山道の一件を誰か早く解決してくれないか、と他力本願なことを考えつつ、レオンは帰り道につく。


 まさか、その一件に自分が巻き込まれるとは、今のレオンは考えだにしていなかった。

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