表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銃撃士は相棒を選べない―最強美少女たちがパーティーを組もうと迫ってくる件について―  作者: アレセイア
閑話

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/31

第29話

 その後、レオンはアレスタと素材の加工について相談し、彼の店で小道具を買い足してから外に出る。軽く吹いている風に、少しだけレオンは身を縮める

(……おかしいな、そこまで寒くはないはずだけど)


 なんだか、風が妙に寒く感じてしまう。鼻が、またむずむずしそうだ。


(……少し、気が抜けたかな)


 考えてみれば、ここ数日、オーガやグランド・ベア、異形のザリカニと激戦が続いていた。それに姉妹喧嘩に巻き込まれ続けた心労が出てきたようだ。

 それから束の間の解放に気が緩んだのか、身体の芯からだるさが込み上げてくる。


(――少し、休むか……)


 レオンはふらりと道端の岩に腰かける――今日はぽかぽかと温かい陽光が降り注いでいるのに、どこか肌寒い。参ったな、と苦笑いを浮かべて息を整える。

 かなり身体に疲れが来ていたようだ。


(今日は早めに休んで、しばらくは依頼も休止だな――)


 収入が途絶えることになるが、蓄えはまだある。焦らなくていいはずだ。

 ただ、一度座ってしまうと立つ気になれず、ぼんやりと行き交う人を眺めて――。

 ふと、冷たい感触が頬に走った。

 思わずびっくりして顔を上げると、そこには悪戯っぽい笑みを浮かべたカグヤの姿があった。片手には、素焼きのコップが握られている。


「こんにちは。レオンさん――こんなところでぼっとして、どうしたんですか?」


 はい、これ、ジュースです、と彼女は差し出してくれるコップをありがたく受け取る。氷が浮かんだ、冷たい絞り立てジュースを口にしながら笑う。


「少し、休んでいてね。あまり、体調がよくないんだ」

「あ――もしかして、この前の……」


 心当たりがあったのか、口ごもるカグヤ。苦笑いを浮かべて首を振る。


「いや、単に自分の体調管理が、甘かっただけだよ」

「だけど……さすがに、申し訳ない、というか……」

「気にするな――それより、今日はクエストじゃないのか?」

「今日は、買い物と、ギルドで情報を少し集めていて」

「買い物か……そういえば、いつもの法衣じゃないんだな」


 今一度、彼女の姿を見直す。杖こそ手にしているものの、今日は法衣ではなく、可愛らしい服に身を包んでいる。

 少しフリルがあしらわれた白いブラウスに、それを引き立てる、漆黒のコルセット。

 そのコルセットと一体化した、黒のミニスカートから覗く、しなやかな足は膝まである紺色の靴下に包まれている。


「ふふ、気づいてくれましたか。さすがはレオンさん――どうですか?」

「うん、似合っているよ。かわいい」


 少しだけ幼い雰囲気はあるが、かわいらしい彼女にはよく似合っている。法衣だと分からない、彼女のスタイルの良さも引き立てられているのが分かる。

 だが、同時に分かるのは、その服の質の良さだ。


「こういうのを聞くのは無粋かもしれないが、結構、値段がするんじゃないのか?」

「まあ、それなりにしますけどね。レオンさんに褒めてもらえたから、安く思えます」

「そんなものかね。お嬢さん」

「そんなものなのですよ。レオンさん」


 くすくすと笑い合う二人。ひとしきり雑談を終えると、ふと、カグヤはわずかに顔つきを変える。どこか緊張した、真剣な面持ちへと。


「それで……レオンさん、温泉で言った私の申し出、考えてくれましたか?」


 温泉でのこと。そういえば、カグヤは何か言いかけていた。

 途中でシュリが乱入してきたが、あれは恐らく――。


「俺とパートナー……パーティー契約を、結びたい、ってこと、だよな?」


 再確認の意味で訊ねると、彼女はこくん、と小さく頷き、固唾を呑むようにじっと見つめてくる。

 それに対して、レオンは慎重に言葉を紡ぐ。


「――まあ、やぶさかでは、ないんだが……な」


 カグヤは優秀なA級冒険者。それは、この前の護衛任務で分かっていることだ。

 むしろ、こちらから一緒にパーティーを組むことを申し出たいぐらいである。


(けど、もう一人誘われている相手のことを考えると……)


「あら、レオン、奇遇ね」


 不意に、澄んだ声が響き渡り、視線を上げた。そこには、思い浮かべた少女の顔が合った。吊り目を細め、革袋を担いで快活に笑ってみせる。


「ああ、シュリ――」

「なんですか。姉さま。今、レオンさんは私とお話ししているのですよ? 邪魔しないで下さい」


 瞬間、殺気が立ち上った。横にいたはずのカグヤが立ち上がり、凍りつくほど冷たい声を発する。だが、シュリは涼しい顔でそれを受け流した。


「それは悪かったわね。カグヤ。なら、同席させてもらってもいいでしょう?」

「何が、なら、なんですか。不愉快ですね」

「奇遇ね――あたしも、貴女の顔を見て不愉快よ」

「なら、とっと消えて下さい」

「あたしはレオンと話したいのよ。貴女が消えなさい」

「――やはり脳みそまで筋肉なら、実力行使でしか分からないようですね」

「だ、誰が脳筋よ。へりくつ女――武力行使で、分からせてあげるわ」


 たちまち、二人が殺気立ち、武器に手をかけ始める。通りかかった人は、またかよ、とばかりに苦笑しながら立ち止まり、遠巻きに見守り始める。

 それどころか、災害を避けるかのように、店じまいまで始める人もいる。


(天災扱いか……まあ、自業自得、なんだが……)


 どうにかなだめようとレオンは手を挙げながら、立ち上がり――。

 ふと、足元がぐらりと揺れた。頭も、定まらない――どこか、ぼっとする。


「あ、くっ――」


 思わず地面に膝をつく。それを引き金に、どっと身体の芯から熱が込み上げ、意識がだんだん薄れていく。倒れそうになるのを、誰かが両脇から支えた。


「レオンっ、どうしたの!?」

「レオンさん、大丈夫ですか!?」


 二人の狼狽えた声を聞きながらも、答えることができず――彼の意識は、闇の中に呑まれていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ