表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銃撃士は相棒を選べない―最強美少女たちがパーティーを組もうと迫ってくる件について―  作者: アレセイア
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/31

第27話

 ぽちゃん、と水の滴る音を聞きながら、レオンは一つ吐息をついた。

 見渡す限り、そこはごつごつとした岩場――北の村はずれに、その温泉はあった。

 湯につかれば、程よい湯加減。じんわりと浸み込んでくる熱が、身体中の疲れを溶かすように解きほぐしてくれる。その感覚に身を委ねながら、周りをぼんやりと見渡す。

 村人が定期的に使うのか、周りが整えられ、歩きやすいように整地もされている――見下ろせば、宴会で盛り上がっている村の灯りがよく見えた。

 そして――頭上で広がる、降り注がんばかりの星空も。


(上手く、大岩が周りを隠しているから、見られることもない――格別だな、ここは)


 ラルゴが米酒や水、それと軽い山菜の摘まみを置いて行ってくれた。星を眺めながら、酒を口にする――淡い口当たり。温泉ということもあって、すぐ酔ってしまいそうだ。

 心地よい温かさに包まれながら――ふと思うのは、あの姉妹のことだ。


 シュリは人当たりがよく、快活としている。少しドジなところもあるが、基本的にはしっかりとして頼りになる子だ。いろいろと世話を焼いてくれる面もある。

 カグヤはプライドが高く、とっつきにくいところはあるが、蓋を開けてみれば甘えん坊なところがある。困ったときは、すぐに頼ってくれるし、頭もすぐに回る。

 戦士と、魔術師――二人とも実力派で、悪い子たちではない。


(だけど、あんなになんで喧々囂々とやり合っているのか――)


 つまらない意地の張り合いにも見えるし、何か根の深い話なのかもしれない。

 そこまで付き合う義理は、レオンにはないはずなのに――何故か、放っておけない気持ちになっていた。どうにかして、二人を和解させてあげたい気もする。

 前々から抱いていた、その気持ちは二人のことを知るうちに大きくなっていた。

 そうすれば、レオンが喧嘩に巻き込まれることもなくなる。


(その上――面白いことが、できるようになるかもしれないし)


 そんなことを考えながら、酒を口につける――ふと、人の近付く気配に気づき、振り返った。


「ラルゴさんか? 入っても構わないぞ」


 その足音は、遠慮しがちだった。眉を寄せていると、衣擦れの音が聞こえる。

 妙にその時間が長い。嫌な予感がする。思わず岩陰に置いた魔導銃に手を伸ばしかけ。

 現れた人影に思わず、目を見開いた。


 そこにいたのは、金髪の少女だった。


 満天の星の下に、真っ白な肌をさらした彼女は、そっと大事なところを手で隠しながら、もじもじとしている。白い湯気に抱かれ、長い金髪がぼんやりとした輝きを放っている――。

 どうしようもないほど、目を奪われてしまう――そんな美しさが、そこにある。


「そ、その――あまり、見ないで下さい……」


 か細い声に、思わず我に返り、慌てて視線を逸らした。


「す、すまん、まさかカグヤだと思わなくて……」

「入るまで待ってください。そちらに、行きますから」


 ちゃぽん、と水音――近づいてくる気配に、レオンは視線を逸らしたまま訊ねる。


「出た方がいいか?」

「いえ、折角ですので一緒に……だ、ダメですか?」


 声がにじり寄ってくる。諦めて肩を竦めると、視線を戻した。

 隣に、カグヤがいた。解いた金髪を湯に漂わせながら、ほのかに頬を赤らめている。白濁した湯のおかげで、彼女の裸体が隠れているのが救いだ。

 ぎこちない仕草の彼女から、視線を空に向けてごまかすように言う。


「ここの星空は、綺麗だな。ぜいたくな、温泉だ」

「はいです――いつも、この湯を借りています。ここは、素敵です」


 しばらく、二人で星を眺める。美しい景色と、心地よい熱、そして、互いの気配。それが徐々に二人の間のこわばりを溶かしていった。

 なんとなくため息をこぼすと、カグヤのため息と重なり合う。思わず視線を交わし合い、おかしくなって少し笑い合う。その笑顔の中で、カグヤは小さく口を開いた。


「――ありがとう、ございます。レオンさん」

「礼を言われることは、何もしていないが?」

「いえ、十分してくれましたよ。あの魔獣との戦いのとき、私の我が儘を聞いてくれたじゃないですか。本来なら、一旦逃げた方が得策なのに。それに――」


 彼女は一息つくと、瞳を微かに揺らしながら微笑む。


「今回だけですけど、私を相棒として扱ってくれた」


 その一言は、とても嬉しそうに目を細められて告げられた。そっと、湯の中で手がぶつかり合い――ためらいがちに、少女はその手を重ね合わせる。

 不自然に高鳴る鼓動。それを押し殺すように、レオンは視線を逸らしながら言う。


「雇われた以上の責務を果たしただけだよ。カグヤ」

「そういう律儀なところ、私は好きですよ。レオンさん」


 くすりと、笑った彼女の距離が縮まる。つぶらな瞳が、潤んで真っ直ぐに見つめてくる。

 からかいでも、ましてや、冷たい視線でもない。

 柔らかさを帯びた、吸い込まれるような瞳に、レオンは魅入られる。

 桃色の唇が、そっと開かれた。


「レオンさん、私の律儀なところも見てくれませんか?」

「え……?」

「私に、お礼をさせてください。貴方の、本当の相棒になって――」


 その一言と共に、ぐっと顔が一気に近づき――。


「な、に、を、やっているのかしら――ッ!?」


 不意に轟いた怒声に、二人は弾かれたように離れた。振り返ると、大岩の間から、一人の女戦士が姿を現していた。泥でぼろぼろ、傷だらけの彼女――。

 だが、その金髪の少女は、見間違いようがない。

 思わず固まったレオンの前に、すっとカグヤは進み出て氷点下の声を発する。


「姉さま――何故、こんなところにいるのですか。覗き、ですか」

「そんなわけないわよッ! 緊急のクエストで、必死に駆けてきたのよ! 巨大魔獣が発生、アシュタル村が壊滅の危機にあり、って!」


(なるほど、そういえば救援要請を出していたって言っていたな)


 それをシュリが受けてくれたらしい。

 村を守るために、必死に、必死に、必死に駆け抜いて――。


「駆けつければ、何よ! あたしのパートナー候補に、色仕掛け、かしら……?」

「貴女の目は、節穴みたいですね。それに、レオンさんはまだどこのパーティーに属していませんから、勧誘は自由です」

「にしても、色仕掛けまでするなんて……! 見損なったわ、カグヤ」

「……言っても聞かなそうですね。なら、実力で――」


 カグヤは冷たく吐き捨てると、指先で光を描く。描かれた魔法陣に応じるように、中空から何かが飛んできた。彼女の、杖――それを掴んで、彼女は立ち上がる。

 目の前で揺れる、彼女の長い金髪と裸体に、慌てて視線を逸らす。

 だが、彼女の始めた詠唱を聞いた瞬間、血の気が引いていった。


「凍れ、凍れ、大気よ――集え、集え、絶氷よ――」


(ぱ、パルマ・フォレストッ!?)


 その威力は、すでに見て痛感している。ましてや、温泉とはいえ、水場でやらかせばどうなるか――。

 同時に、シュリは地を蹴り、剣を閃かせる。それと同時に、カグヤが大きく杖を振る。


「や、やめろおおおおおおおおおおおお!」


 レオンの情けない悲鳴と共に、剣と魔術が激しくぶつかり合った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ