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銃撃士は相棒を選べない―最強美少女たちがパーティーを組もうと迫ってくる件について―  作者: アレセイア
第二章

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第22話

「今日はいい天気ですね、レオンさん。ふふっ」

「ああ、探索日和って感じだ」


 翌日の早朝、レオンとカグヤは早々に行動を開始していた。準備を整えて宿を出ると、森に足を踏み入れていた。目指す先は小川沿いに進んだ場所――上流の水源だ。

 森は村人たちも足を踏み入れているおかげか、程よく人の手が入っており、風通しもいい。木漏れ日も降り注ぎ、その中をカグヤは楽しそうに弾んだ足取りで歩いていた。表情も明るく上機嫌なのが伝わってくる。


(昨日の夕食の時からそうだったからな――)


 余程、レオンに大人として認められたことが嬉しかったらしい。食事の時は甲斐甲斐しく酒を注いでくれたり、食事を取り分けたりしてくれた。昨日と比べると一段と笑顔を見せてくれる。レオンは苦笑しながら軽く肩を竦めた。


「上機嫌だが、あまり気は抜くなよ。魔獣が出る森なのは変わりないから」

「大丈夫です。常に魔力で辺りを索敵していますから」


 そう言いながら彼女は杖を持ち上げる。先端の水晶には魔法陣が浮かび、光を放ち続けている。それを見てカグヤは自信満々に告げる。


「辺りに危険な魔獣はいません。尤も小さいのは隠れている様子ですが」

「ああ、そうだな。不自然なくらいに」


 レオンが慎重に口にすると、カグヤは何かに気づいたように目を見開いた。


「――そっか、静かすぎます」

「そういうことだ」


(昨日、狩人から聞いた話だと、この上に泉があってそこから水が供給されるそうだが)


 それだけに自然が豊かであり、魔獣を含めた獣たちが多く生息しているらしい。

 レオンは足を止めて地面に手をつき、痕跡を確かめる。獣の足跡や体毛、糞などはここまでであまり残っていなかった。カグヤも杖を辺りに向け、水晶に魔法陣を展開する。


「――広域索敵に切り替えましたが、明らかに魔獣の動きが引っ掛かりません。厳密にいえば、小物はそれなりにいるのですが」

「水量の低下と関連があるかもな」

「可能性は捨てきれませんね」


 そう告げたカグヤの表情は頼もしく引き締まっていた。彼女は少し考えてから意見を口にする。


「痕跡や臭いなどを辿るのは、レオンさんにお任せします。私は索敵に注力します」

「その分担が無難だな。了解した」


 レオンは頷きながら辺りを注視する。森の中にある異変を一つも見逃さないようにゆっくりと歩きながら。カグヤは杖を掲げるように持ち、レオンの後ろを歩いていく。

 魔獣はやはり見当たらない。痕跡があるものの、多くが土や落ち葉を被っており、最近のものは掻き消えている。進めば進むほど、その痕跡がさらに薄くなる。


(――ん?)


 わずかに鼻先を妙な匂いが掠めた。眉を寄せながらゆっくり進めば、カグヤも何かに気づいたように鼻を鳴らし、顔を顰めた。


「――臭いですね。どぶ臭いような」

「カグヤも気づいたか。水は綺麗なんだが……」


 傍を流れる小川は清流だ。だが、上流から微かにどぶのような匂いが漂ってきている。その異変に気を配りながら足を進めると、ふとカグヤが口を開いた。


「魔獣の気配がします。この先――多分、水源の泉の辺りかと」

「数は?」

「多そうです。小さい気配が複数」

「なるほど、油断はできなさそうだな。他は?」

「――泉の奥で大きな気配が。ただ、魔獣かどうかは判別できません」

「それだけ分かれば上等だ。頼りになる」

「えへへ、ありがとうございます」


 少しだけカグヤは嬉しそうに表情を緩めるが、その動きに隙はない。二人は頷き合うと森の奥を目指す。次第に少しずつ茂みは濃くなり、木々の密度も増してくる。


「足元、気をつけて」

「はい、ありがとうございます」


 自然と掛け合う声も小さくなる。二人は神経を研ぎ澄ませながら水音の源まで近づき――不意に、視界が大きく拓けた。


「――っ」


 視界に飛び込んできたのは、泉だった。想像よりも大きな泉であり、綺麗な水が並々と蓄えられている。それにカグヤも目を奪われ、小さく吐息をこぼした。


「綺麗――これがアシュタル村の水源、ですね。枯れているようには見えませんけど」

「ああ、ただ異変は起きているようだな」

「異変……?」


 カグヤは眉を寄せる。レオンは視線を泉の周りに向けながら目を細める。

 確かに水は綺麗だ。透き通るようであり、周りも大きく拓け、遮るものがない。

 その遮るものはないことが、異変なのだ。


「水草や魚影が全くない」

「――っ」


 その言葉にカグヤは理解したようだ。視線を巡らせ、杖に魔力を注ぎ込む。魔法陣が次々と切り替わり、周りの魔力の波が辺りを探っていく。

 レオンも膝をつき、周りの土を確かめる。触れるとどろっとした感触と共に、指先に繊維のようなものが絡みつく。腐敗しかけた水草の残骸だ。それに絡まるように小魚の死体もある。どぶの臭いの原因は恐らくこれだ。


(何故、枯れた……? しかもこんな量が一斉に……)


 水が汚染された、というわけではなさそうだが。

 彼は眉を寄せながら土を軽く掘ると、水草の根元が見えてきた。その根元がすっぱりと切断されている――まるで、刃物で斬られたように。

 それに気づいた瞬間、カグヤの鋭い声が響き渡った。


「泥の中です、レオンさん!」

「――っ!」


 レオンが地を蹴って後退する。瞬間、その泥を弾き飛ばす勢いで、その真下から黒い何かが勢いよく飛び出してきた。

 瞬時に、レオンは腰から拳銃を引き抜いて発砲。その銃弾に弾かれ、飛んできた何かは泥に落ちた。その姿に彼は思わず目を見開く。


「これは――カニ、か?」

「いわゆる、ザリガニでしょう。やたらと大きいですが」


 なるほど、とレオンは頷く。カグヤの言う通り、目の前の黒いザリガニは大きい。小ぶりのウサギほどの大きさで、漆黒の鋏をかちかちと鳴らして威嚇してくる。

 その表面は固い殻で覆われているのか、銃弾が利いているようには見えない。

 ザリガニはレオンを睨みつけるように動くと、ぐっとその尾が丸まる。迸った殺気にレオンは拳銃を構えながら鋭く叫んだ。


「来るぞっ!」


 瞬間、勢いよく尾で泥を弾き、ザリガニが飛び掛かってくる。レオンは右足を退きながら狙いを定め、冷静に引き金(トリガー)を引く。銃声と共に駆けた銃弾は真っ直ぐにザリガニの胴体に着弾し、火花を散らした。間髪入れず、カグヤは鋭く魔術を放つ。


「凍てつく風よ、かの敵を氷の腕に抱き給え――フリーズ・ミスティ!」


 杖の先端の魔法陣から冷気が迸り、ザリガニの身体を包み込む。直後、ザリガニの動きが鈍くなり、表面が白く凍り始める。


「レオンさんッ!」

「ああ――!」


 カグヤの声にレオンは再び銃口をザリガニに向けて引き金(トリガー)を引く。その弾丸はザリガニの凍った頭に直撃し、その頭を砕き散らす。魔獣が動かなくなったのを確かめ、レオンは銃口を下ろしながら辺りを見る。

 カグヤも杖を構えながら一歩後ずさって続ける。


「まだ来ますよ、レオンさん――」

「……みたいだな」


 ぼこ、ぼこ、と至る所で泥が泡を立てている。それと同時にいくつもの泥が盛り上がり、その中から赤い目が次々と姿を現している。十、二十――それ以上の姿にレオンは表情を引きつらせる。


(さすがに処理しきれないか――)


 撤退するべきか――わずかに迷いながら隣を見ると、カグヤは杖を突き出しながら魔力を巡らせ始めていた。


「レオンさん、二十秒で構いません。私を守ってくれますか?」


 その言葉から滲み出るのは確固たる自信と、レオンに対する信頼。

 それを聞いた瞬間、レオンの迷いが振り切れる。苦笑を一つこぼし、レオンは銃のマガジンを交換しながら告げる。


「長くは保たないぞ……!」

「お願いします――!」


 その声と共にカグヤがわずかに距離を取る。彼女を背に庇うようにレオンは進み出ながら銃を構える。直後、一斉に水音を立てて無数のザリガニが飛び掛かってきた。

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