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【番外編】夫夫として


 馬車の中で俺たちはお互いの唇を貪っていた。

 俺の上に乗るハイネの礼服の中のシャツのボタンに手をかける。


「ギルバートっ」


 熱い吐息が俺の唇にかかる。俺は再び、濡れた唇を塞いだ。

 あの時、ハイネの兄が声をかけてきたのは驚いた。俺はハイネが嫌がったら近づかないように釘をさした。

 だけど、ハイネは頑張って兄と話をし、自分の未来に無くしたものを蘇らせた。ちゃんとハイネが成長している。

 ただ、可愛いだけじゃない。

 こんなの惚れ直さないわけがない。


「ハイネ、お前は本当にすごいよ」


 ハイネの頭をぐしゃぐしゃと撫で、頬に触れキスを落とす。

 兄と向かい会い、イシュタルグの悪魔って呼んでいた貴族も変えた。


「それは、ギルバートのお陰だよ」


 ハイネが俺の頬を包み込み、額に、瞼に、頬に、口に、キスを落としていく。


「兄様、イシュタルグ家を変えるんだって。僕、子供が出来たら遊びに行ってみたい。変わってたらの話だけど……」


 胸に期待を抱いたハイネは楽しそうに話す。

 良かったな、ハイネ。

 家族の話をこんな風に楽しそうに話す姿、一生見ることはないだろうと思っていた。

 嫁が嬉しそうで俺は嬉しい。

 もっと幸せを知って欲しい。


「……その時は、一緒に来てくれる?」


「もちろんだ、一緒に行こう」


 お互いの間に沈黙が流れる。ハイネはそっと俺の耳たぶを甘噛みする。

 何、急に。ハイネがこんなことしてくるなんてドキドキするじゃないか。

 さっきの興奮が少し落ち着いて来たのに、また。


「僕さっき嫉妬した」


 囁かれた内容に?が頭に浮かぶ。


「……誰に」


「兄様の婚約者と踊ってただろ」


 尊い。可愛すぎる。嫉妬かぁ。嬉しいなぁ。

 なんならもっとして欲しい。

 膨れっ面のハイネの唇にキスをする。


「可愛い」


「もう誰にも触られたくないし、見られたくもない僕だけのギルバートだ……だけど、僕と一緒にいて幸せそうに笑うギルバートは見てもらいたいかもとか……思っちゃう」


 どんどん小さくなっていく声と共にハイネも俯いて俺の胸に頭を預ける。

 こんな可愛いことを言えるようになったなんて。

 感動すぎる。


「そうか」


「……こんな僕、嫌いになる?」


 あー、まだ不安はあるのかー。

 まあ、そこはゆっくりでいこうか。


「なるわけないだろ」


 俺はハイネの服を整えていく。馬車の景色が屋敷に近くなって来たからだ。


「嫌いじゃないって、ハイネに沢山分からせてやる……部屋でな」


 めちゃくちゃ可愛がってやる。今日はきっと、離してやれない。離す気もない。

 馬車がゆっくりと止まっていく。


「ギルバート」


「……ん?」


「キスしてよ」


 んんん!?

 少し下を向いていたハイネの目線が俺を見る。

 せっかく部屋でするって決めたのに襲わせようとしてんのかな。


「はやく」


 俺はハイネの唇に軽いキスを落とす。ハイネはそうじゃない、とキスを返してくると深く口付けをし始める。

 どろり、とした甘い香りが馬車に溢れ始めた。息を吸えば脳を刺激するあの香りだ。なんで、今なんだ。


「ヒート……きちゃった」


 恍惚と蕩けた顔で俺に寄りかかってくる。

 俺はなんとか理性を持ち堪えて馬車の扉を、勢いよく開ける、御者は驚いていたがそんなこと気にしていられない。

 やばい、やばい。

 このままだと、この中がぐちゃぐちゃになる。


「ハイネ、こいっ」


 俺はハイネを抱き上げ、御者に礼を伝えて急いで屋敷に向かう。


「ギルバート、大好き」


 俺の首に腕を回して、首筋に顔を埋めてくる。そこに触れる吐息は熱をもっていた。


「わかった、わかったから、今はやめてくれ」


 俺は可愛すぎるハイネの甘い匂いと壊れそうな理性を何とか繋ぎ止め、無事に部屋になだれ込むことができたのだった。





 

 カーテンの隙間から僅かに光が溢れる。

 俺は、宣言通り日が昇るまで離してやれなかった。

 疲れきって眠ってしまったハイネは、俺の腕の中にいる。

 一生、大事にするから。


「愛してるよ、ハイネ」


 俺はその柔らかな頬にキスを落とした。


 


 

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