糸口
「あれは呪いの紋様」
昨日の、彼のはだ....コホン、背中を見て気づいた。あれは呪いの紋様だ。」
王宮書庫で見たことがある。
狼族の長につけられたものだろうか。
彼等も私たち同様絶滅危惧種で隠れて暮らしているから見つけることも容易ではない。
「....でも糸口は見つかったわ」
実は狼族の夢を見たことがあった。
彼等の森が燃やされていて、泣き叫んでいた。
まだそれらしい事件を見ていない。
どこの森かまだ分からない。でもそこが分かり、火事を彼が未然に防ぎ、狼族を助けたら呪いを解いてくれるかもしれない...。
彼も狼族かと思ってたけど呪われた方だったのね。
危うくボロを出すとこだったわ...。
危ない危ない、と思っていると、部屋の扉をノックされた。
「すみません、バルド様がお呼びです」
呼ばれて向かった先には食事が並べられていた。
「これは...」
「お前と話をする必要があって呼んだが、俺も暇じゃない。食事をしながら話そう」
そう言われ頷いて席に着く。
従者たちは誰もいなかった。2人だけの空間だった。
「昨日のことは...あまり覚えていない」
そう言われ、私は頷いた。
あんな状態だったのだ、覚えていなくてもおかしくはない。
私は初めてだったが別に気にしていない、と頷いたが、一瞬何処か胸がすっぽり穴が空いたような感覚がした。
疑問に思う前に、彼は昨日の覚えている限りの話をしだした。
「昨日は女を、抱いたはずで、目が覚めたらお前だった」
あぁ、子供の私を覚えてないだけで、本来の私の姿は覚えているのね。
と思ったら今度はなんだか一瞬くすぐったく感じた。
「...あれは幻術というものです」
咄嗟に嘘を告げると、彼は眉を寄せながら更に聞いてきた。
「あの女はなんだ」
「...別に、約束を守っただけですわ」
ただそれだけ...。
「助けてもらう約束をしたが俺は幻術で女を抱く気はないし、そもそも女を抱く気はさらさら無い。」
「え、バルド様は男色家でしたか?次からは男の方が良いですか?」
思ってもなかったことだったから驚いた顔をして聞いた。
「ちがう!っとにかく俺はああいうのは求めていない!あれで助けているつもりなら契約はなしだ」
そう言われて先程気づいたことと本当に助けられるかもしれないのである提案をした。
「分かりました。あれはもうしないわ。応急処置のつもりでしたので」
「バルド様の呪いは狼族による呪いの刻印ですわよね」
バルド様は否定しない。
夢で見た彼の狼になる姿と、呪いの刻印で予想したことを告げてみたが、特に否定がないため当たりだと1人胸の中でガッツポーズした。
「彼らの住まう森は知ってるかしら?」
「....しってる」
暫く沈黙の後、彼はそう告げた。
その瞬間私の脳内は勝利宣言を告げていた。
「でしたらその森へ行きましょうか」
そう告げると彼は嫌そうな顔をして首を振った。
「行けない。俺はあそこに入る訳にはいかない。」
そう言われ、あぁ、そりゃそうだ。狼族から呪われたのだ。狼族の怒りを買ったわけで、入れるわけがないのか。
「...では森のギリギリの位置で様子を見ましょう」
夢の中では丁度雪の降る季節で、燃え尽くしたぼろぼろの日に雪が降っていた。
そして燃えていた時間は夕刻時。
それまでに何も起きなければ帰ればいい。
起きる時間と季節だけは分かっているのだ。きっと何とかなるだろう。
いつの日かおこる未来なのだから。




