契約
目的地は到着後も彼は1人先に降りて、さっさと城の中へ入って行ってしまった。
「ま....っまって....!」
そう言って急いで後を追いかけるも、一歩一歩の歩幅に差が生じてどんどん姿が遠ざかっていく。
最後には姿が見えなくなってしまった。
けれど私は最終手段として目を閉じて深く呼吸をした。
スゥーっと赤い煙のような線のような跡を追いかける。狐は鼻が効くのだ。
しばらく向かっていると大きな扉が現れた。
私はその扉を覗きゆっくりと開けていく。
そこには大きな書斎の部屋で、真ん中にデスクがあり、彼はそこに優雅に座っていた。
「....よくここが分かったな」
「....まあね。それで、話を聞いてくれる?」
そう聞くと、座れと言われたので、近くにあるソファに腰をおろした。
「面倒なことは一切なしだ。全部言え」
全部....。......全部ね....。
ここまで来て言うことじゃないけれど、私何も知らない。ただ、貴方を夢で見ただけです。
....なんて言えるわけがない。
ここは誤魔化すしかない。それっぽく言って、ここで居候させてもらいたい。
「わ、私、貴方の正体を知っているわ。それで苦しんでいるよね?...私なら貴方を助けられるわ。」
夢で見たあの光景。貴方が本当にその人なら、とても苦しそうだった。....とても辛そうだった。それを利用するのは本当に心苦しいけれど、いまは逃げ延びることを最優先に考えないといけない。...もし奇跡が起きて助けられたら助けるつもりだから許して。と心の中で呟いた。
「誰から聞いた」
「それは内緒よ。あ、先に言うと私を殺したら助けられなくなるからね」
今にも殺されそうで刃物が飛んでくる前に告げる。
「...気持ち悪いな」
急な暴言に胸に刺さる。
え。何急に。めっちゃ傷つく言葉だったんですけど...。
「お前....本当の姿を見せろ」
一瞬何を言われたのか分からなかった。頭が真っ白になった。
「な、なにを...」
「お前そんなガキじゃねぇだろ。言動と容姿が合ってねえんだよ」
そう睨まれて、私はどうしたらいいか分からなくなった。
「べ、べつに姿形はどうだっていいでしょう?契約は私に安全な衣食住の提供、代わりに私は貴方を助ける」
でどう?と告げる。
厳密には私はある程度の逃走準備が出来次第逃げるつもりだ。どうせ私は変化すれば私を追いかけることなどできはしまい。謂わば詐欺、というやつである。
「....期限は」
「....そうね、1年でどう?」
「わかった」
そういうとすぐに契約書にサインを書いた。
すると従者が来て私を客室に案内してくれた。




