真実
コンコン。と扉をノックされた。
「誰」と聞くと、義兄だった。
話があるから通して欲しいと言われた。
私は体調が悪いと告げるも、休みながらでも構わない。とまで言われて逃げられなかったため、仕方なく部屋に通した。
義兄が連れてきた従者が扉を開けるも義兄と一緒に部屋の中には入ってこない。
そのまま出て行こうとするので咄嗟に、紅茶を用意した方がいいかしらとメイドを呼ぼうとしたが断られ、部屋には2人きりになってしまった。
扉が閉まった途端、義兄は私の座るソファまで移動して、隣に座り私の髪に触れた。
固まる私の頬を撫で、唇に触れる。
私はそこで義兄の手を振り払った。
振り払われた手を見て義兄は笑った。
「ずっと欲しかった」
お前が。と何事もなかったように私に触れようとする。
「貴方は私の義兄でしょう?」
「...義兄?そんな目で見たことはない。血も繋がりもないじゃないか」
「でも!」
「それなら陛下はどうなんだ」
言葉を止めた。
「陛下もお前が欲しかったらしく、でも外聞が悪いから俺と結婚させると言われた」
「何言って.....貴方はそれでいいの?」
そう聞くと笑って頷いた。
「俺だって陛下が認めてくれない限り結ばれることはなかったから願ってもないことだ」
そう笑って私の頬を持ち上げた。
「お前が手に入ることに変わりはないんだから」
そのまま近づいてくる義兄を振り解く。
そして、義兄は私の髪を掴み持ち上げると笑いながら私の知らない事を話し始めた。
「陛下はお前の母親に結婚を強いたが美しいお前に日に日に惹かれ、お前の母親が邪魔になって殺したんだ」
「お前がいなければ、母親は今も幸せに暮らしていただろうな」
「お前は男を狂わせる」
「お前は逃げることなど出来ない」
笑いながら私に陛下の狂気を教える義兄は私が流した涙を美味しそうに舐めた。
何も知らなかった事実に吐き気がする。
皇后陛下じゃなかった...母に毒を盛ったのは皇帝陛下だった。
逃げ出さねば。
そう決心して、皇后陛下から受け取った金貨を持って、城を抜け出した。
誰も私が逃げ出すなんて思っていない。
この城に来てから10年。
あんな夢を見ていなければ私はどうしていたのだろう。
外で生きていく術を知らない私。
夢を見なかった私は皇后陛下が私に施した金貨を持って、城から出ていただろうか。
そんなことを考えたけれど、答えは分からなかった。




