家族
「.....なに....あれ....」
ドッドッと胸が激しい音を立てている。
その夢は何故か頭から離れなくて、忘れることができなかった。
それでも沢山の夢を見ていたある日。
悍ましい夢を見た。
私が泣き叫び、犯される夢。
私は飛び起きて震える自分の体を抱きしめた。
これは夢。....ただの夢...?それとも....。
私は部屋を飛び出す。無我夢中で、どこに向かっているのかわからない。
気づけば裸足のまま外に飛び出し、母のお墓の前にいた。
どれくらいそうしていたのかわからない。
ずっと母の墓石の前でしゃがみ込んでいた。
「あなた」
その言葉が聞こえて私は振り返った。
皇后が私を見つめて立っていた。
母のこともあり、いつも睨まれ続けていた私は皇后と関わらないようにしていた。
それなのに皇后から私に話しかけてきたのは初めてだった。
「皇后陛下、ご機嫌麗しゅう。見苦しいお姿で申し訳ございません。」
そう伝えると、私の姿に眉を寄せた。
「何をしているの?そんな姿でこんな時間に」
そう問われて私は言葉に詰まった。
悍ましい夢を見てしまい城から飛び出してしまいました?そんなことは言えるわけがない。夢の内容も、心情も。
「...なんでもありません。....ただ、母に...会いたくて」
そう言うと皇后陛下は眉を寄せたまま私に告げた。
「貴方、これを持ってもうこの城から出ておゆきなさい。貴方の家族はもうここにはいないのだから。」
そう言われて私の肩が跳ねた。
皇后陛下が地面に落としたのは金貨がたくさん入った袋だった。
家族はいない...。.....貴方がそれを言うの?....貴方が私の母を殺したから....。私の唯一の家族を...。
あの日、皇后が母に送った茶葉から毒が検出された。
貴方が母に毒を盛ったから私の母は....っ。
グッと唇を噛み締める。証拠もなく、皇后の権力は凄まじく、母はただの病死とされた。
私には何もできることはなかった。してあげられなかった。
「手遅れになる前に....いえ。なんでもないわ。それを持って早く出ておゆきなさい」
そう告げると皇后陛下はその場を去った。
その姿を見つめ、金貨の入った袋を握り締めて私は夢の光景を思い出していた。
......あれは、私と....
そしてその翌日に国王陛下であり、義父から言伝だと従者が訪れた。
3年ぶりの面会だった。
私は緊張した顔で開いた扉の先を見る。
そこには3年ぶりに見る、国王陛下と第一王太子、そして昨日ぶりの皇后陛下の姿だった。
私は歩き続け、挨拶をする。
「国王陛下、皇后陛下、そして王太子殿下、ご機嫌麗しゅう」
そういうと、陛下は笑って告げた。
「...やはりお前は美しく育ったな」
...陛下の言葉に目を伏せた。震えそうになる体を抑えて私はゆっくり息を吐いた。
陛下の言葉に「ありがとうございます」と返事をすると、陛下は悍ましい言葉を告げた。
「お前の嫁ぎ先が決まった。お前をアドウィンに嫁がせる」
そう陛下は口にした。
アドウィンとは、そこにいる第一王太子の名前だ。
「そうしたら、これからもずっと一緒にいられるぞ」
何を言っているのだろう、この人は。
そう思い見上げると、私はゾッとした。
冗談じゃない。血のつながりはなくとも私はこの国の王女として知られているはずだ。誰が義理とは言え兄に嫁ぐ妹がいるのだ。
それでも彼らが見つめる視線はとてもじゃないけれど娘や妹に向ける視線じゃなかった。
私は何も言葉が出なかった。
ただ、昨日見た夢の....義父と義兄に犯される夢を思い出していた。
私は急いで部屋に戻る。
呼吸が乱れながらも、足が震えながらも、懸命に自分の部屋に向かって走り続ける。
やっと自分の部屋に入り、人の視線から逃れてやっと息ができた気がした。
ここは悪魔が住む城だ。
恐ろしい悪魔たちの住まう巣窟。




