愛憎
「じゃあどうしてリーリアを殺した」
お前の手中にあると思い込んでいたのになぜ殺したんだ。
「そんなの決まっているだろう?......あいつが俺を見ないからだ」
そう言った殿下は寂しそうに見えた。
「本当は俺を見ない瞳なんて抉り取ってやりたかった。でも美しいままでいて欲しい。望んでいるものが全て手に入らなかった気持ちがわかるか?お前にはわかるわけないよな。あいつの初めてもあいつが見てたのはお前ばかりだ。」
殿下は2人であの部屋に過ごした日々を思い返していた。
愛を囁く自分に返事はない。遠くを見ているリーリア。その視線は自分とは交わることはなかった。
リーリアに触れる自分の体は熱を持つのに、リーリアの体は冷たいままだ。
自分の醜い感情が体の中を蝕んでいった。
いつの日か愛情は憎悪へ。
このまま俺を見ないのなら最後は俺を見て終わればいいと思ってしまった。
リーリアの首を絞めている時に苦しそうに俺に縋り付いてきたリーリア。初めて俺に差し出した手だった。
そして涙でうるわせたまま俺を見つめるリーリア。やがてその瞳からは光が消えた。たしかに彼女が最後に見たのは自分だったという高揚感を抱いた。
そしてもう話せなくなったリーリアに対して一方的に話すことはやめなかった。まるでリーリアが生きているかのように話しかけ、添い寝を続けた。
永遠と冷たいけれど、もう彼女が誰かを見ることはないというだけで満足だった。
だって自分とはこれからもずっと一緒だと信じていたから。
けれどその生活は早々終止符を打った。
「リーリア...」
誰の手にも渡すつもりなんてなかったのに。
そう思いながら殿下はバルドを睨む。




