化
「リーリア...俺はあの日お前に化かされたんだ。...もうお前がいないと生きていけなさそうなんだ...目を...目を開けてくれ...頼むよ...」
綺麗に目を閉じているリーリアの姿。
「寝ているのか...?起きてくれ....頼む。....ここから抜け出そう....」
綺麗に目を閉じているリーリアの瞳が開くことはなく、バルドは震える手で彼女に触れた。
ヒンヤリとした体温だった。
「.........あ........ぁ............リー.......リア..........」
「リーリアとの再会はどうだ?」
後ろから声がかかった。
リーリアに夢中で物音に気づけなかった。
バルドは殿下を睨む。
「少し遅かったな」
リーリアは3日前に殺した。と言った。
殿下の瞳は冷めていた。
「....なぜ殺した」
「なぜ.....?........お前のせいじゃないか...うん。お前のせいだ」
殿下は俺を睨む。
「なんだと?」
俺とリーリアが過ごした日々が許せなかったのか?
「お前が....俺からリーリアを奪ったんだ」
殿下はうつろな瞳で話し続ける。
「俺がリーリアと愛し合うはずだったのに....!お前が....!俺たちの愛の邪魔をした...!!!」
殿下は俺にナイフを振りかざした。当たらないことを気にしない姿を見てただ怒り任せに投げただけのようで、まだ話は終わらなかった。
「お前.......リーリアと寝たんだろ...?」
「...........は?」
一瞬何を言われたのか分からなかった。
けれどだんだん思い出されるのはあの日、うなされた夜のことだった。
苦しくて暑かった身体に視界がぼやけて虚ろだった中で、急に女が現れた。それはもう本能で欲した。いつもなら止められた。抱いたことなんてなかったのに...........一目惚れをしてしまった。そんな女が俺の手を握って、誘ってくるんだ。理性は崩壊した。あの夜、たしかに俺はリーリアを抱いた。
「.....だからどうした....」
そう告げると殿下はバルドを睨みつけた。
「俺が!初めての相手になるはずだったんだ!お前なんかが....!お前なんかが奪っていいものじゃなかったんだよ......!!!」
そう言って握ったままのナイフを俺に向けて再度振りかざした。




