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第42話:【絶対防壁】帝都を覆う古代結界と、高笑いする元同僚たち

 帝都ルミナリアを取り囲む、全高五十メートルの白亜の外壁。

 その最上階には、帝国アカデミー総長のアルベルトをはじめ、数十名の老教授や宮廷魔導師たちが立ち並んでいた。


 彼らの頭上には、建国以来千年にわたって帝都を護り続けてきた古代遺産――神聖多重結界『アイギス・グランベルス』が展開されていた。

 七重の巨大な黄金の魔法陣が空を覆い、竜のブレスや戦略魔導の直撃すら弾き返す、人類の英知の結晶である。


「はっはっは! 見よ、オークどもめ!」


 アルベルト総長は、城壁の上からメガホン魔導具を使い、眼下に布陣したオーク軍を見下ろして高笑いした。


「我が帝都の神聖多重結界は、神話の神々が遺した絶対不可侵の防壁! いかなる蛮族の突撃も、邪神の魔術も、この結界に指一本触れることすら叶わんわ!」


 城壁の上に並ぶ教授たちも、口々に嘲笑の声を上げる。

「そうだ! 野蛮なオークどもに魔導の奥義が理解できるものか!」

「せいぜい城門の前で野垂れ死ぬがいい!」


 その時、オーク軍の中央から、一台のオープンカー型装甲車がゆっくりと前に進み出てきた。

 車輪が止まり、助手席から降り立ったのは――。

 ボサボサの黒髪に丸メガネ、風に白衣を翻した痩身の青年だった。


「…………なっ!?」

 城壁の上のアルベルトの目が、飛び出さんばかりに見開かれた。


「ゼ、ゼノ……!? ゼノ・フォルスターか!?」


「やあ、アルベルト総長。同僚の教授諸君。ご機嫌いかがかな」

 俺は片手を軽く挙げ、マイクを手にして挨拶した。


「き、貴様……生きていたのか!? いや、なぜ貴様がオーク軍の最前列にいるのだ!?」


「言ったはずですよ。私の理論の実証実験を行うとね。このオーク第1師団の皆さんは、私の研究の素晴らしさを瞬時に理解し、無制限の予算と最高の研究設備を提供してくれた素晴らしいパトロンだ」


「た、戯言を! 貴様、同胞を裏切ってオークの手先となり、帝都へ攻め寄せてくるとは……どこまで堕ちれば気が済むのだ! この破廉恥漢め!」


「手先ではありませんよ。私は『最高魔導顧問』です。君たちのように、伝統と前例に縛られて科学の発展を阻む老害たちに、最新の感情力学の神髄を教えてあげようと思ってね」


 俺が指をパチンと鳴らすと、装甲車の後部デッキから、特設ステージがせり上がった。

 そこに現れたのは――。


 マイクスタンドの前に並ばされた、帝国の至宝たる四人の美姫たち。

 聖女姫騎士シルフィア。

 天才魔導士レオノーラ。

 男装の騎士アレクシア。

 そして――神託の勇者ヴァルキリア!


「「「「な……ななな……何じゃとぉぉぉぉぉっ!!??」」」」


 城壁の上の教授たち、そして元老院の議員たちが一斉に卒倒しかけた。

 帝国最強の女傑たちが、全員無傷で、ピカピカの肌で、オーク軍の特設ステージの上に並んでいるのだ!


「シ、シルフィア様!? ヴァルキリア様まで!? な、なぜあのような場所に……!?」


「フフフ……諸君が自慢するその七重の古代結界だがね」

 俺は白衣を翻し、タクト(指揮棒)を右手に握りしめた。


「彼女たちの高潔なプライドの叫び――すなわち極限の『くっ殺』のハーモニーの前には、ただの薄紙に等しいということを、今から実証して見せよう」


 学術の真理をめぐる最後の審判が、今まさに始まろうとしていた。


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