第41話:【帝都進撃】オーク全軍大行進! なぜか人間側の民衆に歓迎される
国境平原の決戦から三日後。
オーク第1師団の三万の大軍勢は、グランベルス帝国の帝都ルミナリアへ向かう街道を、堂々と進軍していた。
だが、その光景は、人間側が恐れていた「略奪と虐殺の魔獣行進」とは、月とスッポンほどにかけ離れていた。
「整列、歩調を合わせよ! 道端の畑を踏み荒らすな! 民間人には笑顔で敬礼だ!」
最前列で先頭を行くバールック大佐が、号令をかける。
彼らオーク兵が身につけているのは、ピカピカに磨き上げられた純白と銀のハイテク軽装甲。
手入れの行き届いた身体からは柑橘系の石鹸の香りが漂い、足並みは狂いなく揃い、まるで王室のパレードのように整然としている。
街道沿いの農村から、おそるおそる顔を出した人間の村人たちが、目を丸くして囁き合った。
「お、おい……あれ、本当にオークか……?」
「なんだか……うちの領主様の私兵団より、ずっと身なりが綺麗だぞ……」
「見て! 畑を踏まないように、わざわざ一列になって歩いてくれてる!」
そこへ、後方の補給部隊からオーク兵が笑顔で村人たちへ手を振った。
「おーい、畑のじっちゃん! ゼノ先生特製の『PCE式・超急速発酵肥料』を分けてやるよ! これ撒くとトマトが三倍デカくなるぞ!」
「えっ、肥料!? くれるのかい!?」
「おう! ついでに村の井戸に温水浄水器もつけといたからな! 今日からお湯が出るぜ!」
「「「オ、オーク様万歳ぃぃぃっ!!」」」
農民たちが道端に膝をつき、拍手喝采でオーク軍を見送り始めた。
略奪どころか、インフラ整備と特産品の配布をしながら進撃してくるのだ。どちらが正義の味方か、もはや一目瞭然だった。
隊列の中央、豪華なオープンカー型の魔導装甲車の上で、シルフィアとヴァルキリア、レオノーラ、アレクシアの四人が並んで座っていた。
「………………」
シルフィアは頬杖をつき、遠い目をしていた。
「シルフィア様……これで良いのでしょうか……」
隣のアレクシアが、困惑したように尋ねる。
「我が祖国の民が、敵のオーク軍に手を振って熱狂的に歓声を送っていますが……」
「アレクシア……もう深く考えるのはやめましょう……」
シルフィアはため息をついた。
「彼らの温水浄水器は、本当に素晴らしいのよ。お肌もツルツルになるし……」
「ちょっとシルフィア様まで毒されてどうするのよ!」
ツインテールのレオノーラがツッコむ。
「私たちは捕虜なのよ! これから帝都が攻め落とされるのよ!? 騎士としてのプライドはどうしたのよ!」
「でもレオノーラ」
膝の上に巨大なクマのぬいぐるみを抱きかかえ、モフモフを撫でていたヴァルキリアが、ぽつりと言った。
「オークのくれた焼きそば、紅生姜が多くて美味しかった……」
「アンタまで完全に餌付けされてんじゃないわよぉぉぉっ!!」
装甲車の助手席で、白衣姿の俺は双眼鏡を覗き込んだ。
街道の先、地平線の彼方に、白亜の巨塔と七重の城壁がそびえ立っていた。
人類最強の要塞都市――帝都ルミナリア。
「諸君、見えてきたね。我が母校であり、私を追放してくれた愛すべき帝国魔導アカデミーの姿が」
俺の眼鏡の奥で、知的な狂気の光がギラリと瞬いた。
「さあ、積年の学術的議論に、完全な決着をつけに行こうか」
帝都の城門前に、世界最強のハイテクオーク軍団が布陣を完了したのだった。
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